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JW600 十個の品部

【垂仁経綸編】エピソード22 十個の品部


第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのう御世みよ

西暦10年、皇紀こうき670年(垂仁天皇39)10月。

ここは、纏向珠城宮まきむくのたまき・のみや

地図(纏向珠城宮)

垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと(以下、イク)は、大連おおむらじ大夫たいふたちと共に、かたらいっていた。

そして、皇子みこ五十瓊敷入彦いにしきいりひこ(以下、ニッシー)に、品部しなのとものをあたえると伝えるのであった。 

人物一覧表(大連、大夫たち)
系図(ニッシー)

イク「・・・ということで、『ニッシー』に与える品部しなのとものをは、十個じゅっこだよ。」 

ニッシー「十個? 十種類ってこと?」 

ちね「そういうことやね。」 

イク「まずは、楯部たてぬいべだよ。」 

ニッシー「楯部たてぬいべ?」 

武日たけひ楯縫部たてぬいべとも書かれるっちゃ。たてを作る職人しょくにんやじ。」 

ニッシー「なるほど・・・。いくさには、たてようだもんね。」 

イク「次に、倭文部しとりべだよ。」 

オーカ「きぬる職人にあらしゃいますなぁ。」 

ニッシー「それって、いくさかかわらないと思うんだけど・・・。」 

カーケ「そんなことは無いんだぜ。つわものたちに、同じころもあたえなきゃいけないんだぜ。そして、ころもは、織物おりものなんだぜ。」 

ニッシー「な・・・なるほど・・・。まあ、きぬじゃないんだろうけど・・・。」 

イク「そして、神弓削部かむゆげべだよ。」 

くにお「ゆみを作る職人にござるな。『神』の字が入っておるので、神にささげる弓やもしれませぬな。」 

ニッシー「なんで、神に捧げるの?」 

イク「ニッシー? これが、ロマンだよ。」 

ニッシー「こ・・・これが、ロマン・・・。」 

イク「そして、次は、神矢作部かむやはぎべだよ。」 

ニック「を作る職人やね。こっちも、神に捧げる矢を作ってたんかな?」 

イク「そして、次は、大穴磯部おおあなしべだよ。」 

ちね「これは、ようからんのやけど、あなるっちゅうことで、金属の採掘さいくつを専門としていた、職人やないかと思います。」 

ニッシー「つるぎやじりも、金属だもんね。」 

イク「次は、泊橿部はつかしべだよ。」 

オーカ「こっちも、ようかりませんが、はねのところを作る職人とも、土をあつかう職人とも言われてますぅ。」 

ニッシー「土をあつかう? いくさと、何も関わりが無いよね?」 

オーカ「そのようなこと、あらしゃいません。製鉄せいてつに使う、鍛造たんぞう設備せつびを作る職人かも、しれへんのです。」 

ニッシー「な・・・なるほど・・・。」 

イク「次は、玉作部たまつくりべだよ。」 

武日たけひ勾玉まがたまなどの装飾品そうしょくひんを作る職人やじ。」 

ニッシー「こっちも、いくさと関わりが無いように見えるけど・・・。」 

武日たけひそんげなコツ、なかそんなことは、ないつるぎやじりも、かたちづくらんといかん。それには、専門技術がるんやじ。」 

ニッシー「なるほど・・・。」 

イク「次は、神刑部かむおさかべだよ。」 

くにお「これが、もっとも、よくからぬ職人たちでして・・・。忍坂部おしさかべが、刑部おさかべになったと考えれば、神につかえる、忍坂邑おしさか・のむらの者たちをすのやもしれませぬな。」 

地図(忍坂邑→奈良県桜井市忍阪)

ニッシー「いきなり、いくさと関わりが無い話になっちゃったね。」 

くにお「左様さよう。それゆえ、そうではなく、字のごとく、いくさに関わる刑罰けいばつを扱っていた者たちではないか・・・という説も有りまするぞ。」 

ニッシー「ようするに、ロマンか・・・。」 

イク「そして、次は、日置部ひおきべだよ。」 

カーケ「くということで、み・・・すなわち、こよみを作った職人とも言われているんだぜ。」 

ニッシー「言われている?」 

カーケ「こっちも、諸説有りなんだぜ。それがしは、製鉄にてきした、火の管理をおこなっていた職人だと思うんだぜ。」 

ニッシー「火の管理って、どういうこと?」 

カーケ「火の温度調整のことだぜ。弱くてもダメで、強くてもダメなんだぜ。」 

ニッシー「そういう考え方も出来るんだね。」 

イク「そして、最後に、大刀佩部たちはきべだよ。」 

ニック「その名の通り、太刀たちくっちゅうことで、つわもののことやね。」 

イク「以上、十個じゅっこ品部しなのとものをでした!」 

楯部たてぬいべ(楯縫部)
倭文部しとりべ
神弓削部かむゆげべ
神矢作部かむやはぎべ
大穴磯部おおあなしべ
泊橿部はつかしべ
玉作部たまつくりべ
神刑部かむおさかべ
日置部ひおきべ
大刀佩部たちはきべ 

ニッシー「な・・・長かった・・・。」 

するとそこに、一柱ひとはしらの神があらわれた。 

神「解説、御苦労様ごくろうさまでした。ということで、一千口ちふりつるぎ石上いそのかみ神宮じんぐうおさめなさい。春日かすがおみ市河いちかわもうものに納めさせなさい。」 

イク「えっ?」 

ニッシー「ちょっと! どういうこと?」 

神「以上!」 

そう言うと、神は消え去ったのであった。 

つづく

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