JW269 陶邑の大田の森
【疫病混乱編】エピソード21 陶邑の大田の森
第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。ここは三輪山(みわやま)の麓、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)。
紀元前91年、皇紀570年(崇神天皇7)11月13日、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)は、天津神(あまつかみ)を祀る天社(あまつやしろ)、そして、国津神(くにつかみ)を祀る国社(くにつやしろ)の創建を宣言した。
大臣(おおおみ)の物部伊香色雄(もののべ・の・いかがしこお)(以下、ガーシー)と、大田田根子(おおたたねこ)(以下、田根子)を迎え、神社の解説をおこなっていたところ、田根子が唐突に来賓(らいひん)を呼んだのであった。
田根子「では、次に、来賓を紹介したいと思います。」
ミマキ「来賓?」
田根子「私と同郷の荒田(あれた)殿。そして、私の母、太田田弥古(おおたたやこ)にございます。」
荒田「まいど! わしが、荒田やで。」
太田田弥古「お初にお目にかかります。太田田弥古と申します。『ターヤ』とお呼びください。」
ガーシー「どういうことやねん?!」
田根子「実は、私の出身地に神社が建てられましたので、そちらの解説を致そうかと・・・。」
ミマキ「田根子の出身地?」
荒田「そうなんですわ。その名も、陶荒田神社(すえあらたじんじゃ)と言いますぅ。」
ミマキ「待て、待て。田根子の出身地と申せば、茅渟県(ちぬ・のあがた)の陶邑(すえ・のむら)のことではないか?」
田根子「その通りです。」
ミマキ「されど、エピソード262にて、陶邑の所在は分からぬと申しておったではないか?!」
ガーシー「そんなこと言うてましたなぁ。」
田根子「あの時は、そうでしたが、陶荒田神社の伝承により、所在が分かったという次第です。」
ミマキ「して、二千年後の地名で言うと、どこになるのじゃ?」
ターヤ「大阪府堺市中区(さかいし・なかく)の上之(うえの)にございます。」
ミマキ「そこが、陶邑であったということか?」
荒田「せやで。田根子は、陶邑の大田(おおた)の森に住んでたんや。」
田根子「その森が、現社地となっております。」
荒田「ところが、田根子が、三輪山の祭祀(さいし)を預かることになってもうた。そういうことで、田根子の祖神を祀(まつ)ろうと思い立ち、神社を建てることにしたんや。」
ターヤ「ちなみに、神社の名前は、同じ陶邑の大田の森に住む、荒田殿の名にあやかって名付けられたのですよ。」
ミマキ「ん? 田根子の祖神を祀るための神社に、なにゆえ、荒田の名が入っておるのじゃ?」
荒田「わしの祖神も祀ろうと考えたんかもしれへんなぁ。」
ガーシー「荒田の祖神って、誰やねん?」
荒田「わしの祖神は、高魂命(たかみむすひ・のみこと)やで。わしは、高魂命の直系の子孫と言われてるんや。」
ミマキ・ガーシー「高魂命?」×2
ターヤ「そういうことで、祭神は、高魂命と事代主命(ことしろぬし・のみこと)が祀られております。それから、剣根命(つるぎね・のみこと)も祀(まつ)られております。」
ミマキ「なに!? 剣根じゃと!? そ・・・それは、葛城氏(かずらき・し)の初代ではないか!? 一体、どうなっておるのじゃ?」
するとそこに、葛城宮戸彦(かずらき・の・みやとひこ)(以下、みやさん)がやって来た。
みやさん「ついに情報が解禁されたのでござるよ。」
ミマキ「解禁? どういうことじゃ?」
みやさん「我(われ)と荒田殿は、同じ剣根殿の子孫なのでござるよ。」
荒田「遠い親戚みたいなモンやな?」
みやさん「そうだと思うのでござるよ。」
ガーシー「ま・・・まあ『みやさん』は、剣根殿の七世孫・・・昆孫(こんそん)やから、遠い親戚がいても、おかしないわなぁ。」
ミマキ「今日は、驚かされてばかりじゃな・・・。」
荒田「ちなみに、後の時代になると、菅原道真(すがわら・の・みちざね)も祀られるんやで!」
ミマキ「そ・・・そうか・・・。」
荒田「そっちは驚かんのかぁぁい!」
ターヤ「それだけじゃありませんよ。なんだかんだで、田根子ちゃんも祀られておりますのよ。」
田根子「母上・・・。『ちゃん』は、やめてください。」
ミマキ「田根子まで祀られたのか?」
ターヤ「はい。摂社(せっしゃ)の山田神社(やまだじんじゃ)に、活玉依姫命(いくたまよりひめ・のみこと)として、祀られているのです。」
ガーシー「え? 姫?」
田根子「私の名前に『子』が付くからなのか・・・。オミナ(女)と勘違いされたようでして・・・。」
ミマキ「今日一番の驚きかもしれぬぞ。」
荒田「それだけやないでぇ。田根子の母御前(ははごぜ)、ターヤ殿も、摂社に祀られてんねんで! その名も、太田神社(おおたじんじゃ)やで!」
ミマキ「結局、親子で祀られたということか?」
荒田「せやで!」
みやさん「これで、心置きなく、荒田殿と親戚付き合いが出来るのでござるよ。」
ミマキ「そのような気遣いは要(い)らぬ。今後は、仲睦(なかむつ)まじくせよ。」
荒田・みやさん「ははぁぁ。」×2
ガーシー「ほな、これで、創建された神社の紹介は、終わりですね?」
ミマキ「ん? ガーシー? 何を言っておるのじゃ。まだまだ有るぞ。」
ガーシー「ええぇぇぇ!!」
ミマキ「あと五つじゃ!」
残り五つの神社とは?
次回につづく
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