JW515 葛野に散る花
【垂仁天皇編】エピソード44 葛野に散る花
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前15年、皇紀646年(垂仁天皇15)8月1日。
ここは、纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)。
垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)の妃に選ばれなかった、竹野媛(たかのひめ)(以下、たかのん)は、丹波(たにわ)への帰路に就こうとしていた。
同行するのは「たかのん」の伯父、尾張倭得玉彦(おわり・の・やまとえたまひこ)(以下、玉彦)。
見送るのは「たかのん」の姉たち。
すなわち、日葉酢媛(ひばすひめ)(以下、ひばり)。
真砥野媛(まとのひめ)(以下、マー)。
渟葉田瓊入媛(ぬばたにいりひめ)(以下、バタ子)。
薊瓊入媛(あざみにいりひめ)(以下、あざみ)。
そして、大臣(おおおみ)で、玉彦の父、尾張建諸隅(おわり・の・たけもろすみ)(以下、ケモロー)である。
ひばり「寂しくなりますね・・・。」
マー「丹波の母上に、よろしく伝えておいてね。」
バタ子「離れ離れになるなんて、まだ信じられない・・・(´;ω;`)ウッ…。」
あざみ「『たかのん』・・・。風邪(かぜ)引かないようにね。」
たかのん「姉上・・・。お見送り、かたじけのうござりまする。私は、大丈夫ですから・・・。」
玉彦「ほんでもよぉ、まさか、大王(おおきみ)が面食(めん・く)いだったとは思わなかったがや。まあ、狭穂姫(さほひめ)こと『さっちん』様も、大河女優に負けんくらいの容姿(ようし)だったし、そうかなぁとは思うとったけどよぉ・・・。」
たかのん「えっ? 伯父上? それは、どういうことです?」
ケモロー「い・・・いや、気にすることないでよ。さ・・・さあ、早う出立(しゅったつ)せんとかんて(ダメだよ)!」
たかのん「おじいさま? 容姿とは、如何(いか)なることにござりまするか?」
玉彦「さ・・・さっきのは聞かなかったことにしてちょう(ください)。『記紀(きき)』には、我(われ)が何か言ったとか、全く書かれとりゃぁせんでよ。『おりじなる』設定だで。気にすることないがや。」
たかのん「そ・・・そうですか・・・。」
ひばり「たかのん・・・。とにかく、身体に気を付けてね。私たちは、国中(くんなか:現在の奈良盆地)で、汝(なれ)の幸せを祈ってるから・・・。」
たかのん「姉上・・・(´;ω;`)ウッ…。かたじけのうござりまする・・・。」
こうして「たかのん」は丹波に帰ったのであったが・・・。
その途次の葛野(かずの)にて・・・。
たかのん「嗚呼・・・。容姿が決め手だったなんて・・・。私って、そんなに醜(みにく)いの? このまま丹波に帰っても、皆の笑い者になるんでしょうね・・・。ハハハッ((´∀`*))。私って、馬鹿みたい。国中に行って、妃になって・・・。そうなるモノだと思ってた・・・。でも、夢を見てたのね・・・。おかしくて、冷たい夢・・・。」
玉彦「ん? 『たかのん』? なんか言ったか?」
たかのん「いえ、伯父上・・・。なんでもありませぬ。伯父上には、感謝しておりますのよ。『おりじなる』設定で、付き添いをしてくださったこと・・・。決して忘れませぬ。」
玉彦「決して? 大袈裟(おおげさ)だがや。」
たかのん「伯父上? 母上に、伝えてくださる?」
玉彦「ん? 何をだ?」
たかのん「『たかのん』は、母上と父上の子に産まれて、幸せでしたと・・・。」
玉彦「ん?」
玉彦が訝(いぶか)しく感じた刹那(せつな)、「たかのん」の絶叫が響いた。
たかのん「父上! 今から、そちらに参りまする!」
そう叫ぶと同時に、輿(こし)から飛び降りる「たかのん」。
そして、頭を地面に打ち付けて、命を絶ったのであった。
玉彦「嗚呼! 『たかのん』! 何ということを!」
ぐったりとする「たかのん」を抱きかかえ、途方に暮れる玉彦なのであった。
つづく
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