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JW306 与佐の大山の戦い

【丹波平定編】エピソード13 与佐の大山の戦い


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

敗走した、丹波(たにわ)の豪族、陸耳御笠(くがみみのみかさ)(以下、みかさ)の軍勢。

これを捜索すべく、与佐(よさ)の大山(おおやま)こと、大江山(おおえやま)に向かう、彦坐王(ひこいます・のきみ)(以下、イマス)の軍勢。

一行を乗せた舟は、再び、蟻道(ありじ)に戻ったのであった。

地図(蟻道に戻る)

ここで、副将の尾張倭得玉彦(おわり・の・やまとえたまひこ)(以下、玉彦)が、ある提案をしてきた。

玉彦「皇子(みこ)! 我(われ)の提案っちゅうのは、作者の陰謀だけどよぉ、ちょっと聞いてほしいがや。」

イマス「如何(いかが)致した?」

玉彦「ここからは、徒歩(かち)になるがや。すなわち、舟から降りることになるでよ。」

ここで、同行する、加佐(かさ)の住人、サムとジェフが口を挟んできた。

サム「当たり前やないかっ。舟で山、登る奴、見たことないでぇ。」

ジェフ「舟は、置いていかんと、あかんわなぁ。」

玉彦「そこでだがや。『みかさ』が見つかることを祈願(きがん)して、お世話になった舟を祀(まつ)るっちゅうのは、どうね?」

イマス「舟を祀るか・・・。船戸神(ふなどがみ)ということじゃな?」

玉彦「そういうことだがや。」

イマス「よしっ。では、舟を祀ろうぞっ。」

玉彦「こうして、前回紹介した、楯原(たてはら)に舟を祀ったんだがや。」

サム「二千年後の京都府福知山市大江町(ふくちやまし・おおえちょう)の蓼原(たでわら)やね? ほな、今も、大江町蓼原に、祀られてるんか?」

地図(楯原→蓼原)

玉彦「その通りだがや! 蓼原に鎮座(ちんざ)する、舟戸神社(ふなどじんじゃ)が、それだと言われとるでよっ。」

ジェフ「ちなみに、丹後国風土記逸文(たんご・のくに・ふどき・いつぶん)に書かれてるんやでぇ。」

地図(舟戸神社)
舟戸神社(鳥居)
舟戸神社(拝殿)

イマス「長(なが)の解説、大儀である。では、与佐の大山に向かおうぞっ。」

こうして、イマスたちは、山中へと踏み込んだ。

地図(与佐の大山こと、大江山へ)

そして、捜索の末・・・。

サム「あっ! 『みかさ』はんっ。見つけたでぇ!」

みかさ「ちっ! 見つかってもうたか! 逃げるでぇ!」

イマス「逃がすなっ。追えぇぇ!!」

玉彦「ここで会ったが百年目っ。『みかさ』、覚悟っ!」

ザシュッ!

みかさ「ま・・・待てぇ。まだや・・・まだ・・・こないなとこで、死ぬわけには・・・グフッ。」

玉彦「敵将『みかさ』、討ち取ったりぃぃ!!」

イマス「ついにやったか!」

サム・ジェフ「良かったぁ! これで、丹波に平穏が戻るでぇぇ。」

みかさ「喜ぶのは、まだ早いっ!」

イマス「なっ?! どういうことじゃ?! なにゆえ、生きておる?」

玉彦「我(われ)が『みかさ』を討ち取ったと、丹後国風土記逸文に書かれとるんだで? 生き返ったら、おかしなことになるがや。」

みかさ「それが、おかしなことには、ならへんのや。」

サム「えっ? そんなん出来るんですか?」

みかさ「それが出来んねん。『国司文書(こくしもんじょ) 但馬故事記(たじまこじき)』では、討ち取られずに、逃げることに成功してんねん。」

ジェフ「ちょっと待ってや。どこに逃げるっちゅうねん。もう、丹波には『みかさ』はんに、助太刀するモンは、おらんでぇ?」

みかさ「それでも、わては逃げるんや! ほな、さいなら!」

みかさ勢「さいならぁぁ。」×多数

こうして「みかさ」勢は、海に向かって逃走したのであった。

イマス「また・・・逃げられてしもうた・・・。」

玉彦「皇子、迂闊(うかつ)だったがや。『国司文書 但馬故事記』では、白糸浜(しらいとはま)に逃げたことになっとるんだわ。」

イマス「白糸浜?」

サム「天橋立(あまのはしだて)から、宮津市(みやづし)の江尻(えじり)、日置(ひおき)の辺りにかけた、浜辺のことやでぇ。」

地図(白糸浜→天橋立、江尻、日置)

ジェフ「ちなみに、わてらの時代、天橋立は、つながってないんやでぇ。」

イマス「つ・・・つながっておらぬのか?」

サム「足利義満(あしかが・よしみつ)の頃も、つながってなかったみたいやでぇ。戦国時代に、つながったんとちゃうか?」

地図(つながっていない天橋立、想像図)

玉彦「そんなことは、どうでもええがや! はよ追いかけんとかんてっ(ダメだよ)!」

イマス「されど、浜辺美波のいない、浜辺に行ったところで・・・。」

玉彦「何を言うとるがやっ。」

こうして、再度、捜索がおこなわれたのであった。

一方、逃げた「みかさ」はと言うと・・・。

みかさ「ふぅぅ。間一髪やったでぇ。よしっ。これより、黄沼前(きぬさき)に向かうっ。」

地図(黄沼前)

兵士(い)「黄沼前? そこは、ヤマトに与(くみ)する、黄沼前県主(きぬさき・の・あがたぬし)が、治めてる地やで?」

兵士(ろ)「せやっ。敵地に乗り込むんでっか?」

みかさ「ちゃうわ! 黄沼前の奴らに見つからんよう、夜中になるんを待って、川を遡(さかのぼ)るんや。」

兵士(は)「川を遡ったところで、多遅摩(たじま)の連中に見つかってまうで?」

みかさ「あほう! 川を遡った先に、狂(くるい)が有るやろ? そこに向かうんや!」

地図(狂)

兵士(に)「狂? そこって土蜘蛛(つちぐも)が、いてはるところやね?」

みかさ「せやっ。狂の土蜘蛛こと『くるっち』と合流すんねん。」

兵士(ほ)「なるほどぉぉ。お頭(かしら)! ええ考えですねぇ。」

逃げる「みかさ」。

追う「イマス」。

戦いはどうなるのであろうか? 

次回につづく

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