見出し画像

JW195 眠りの果てに

【孝霊天皇編】エピソード50 眠りの果てに


第七代天皇、孝霊天皇(こうれいてんのう)の御世。

鬼住山(きずみやま)を拠点とする、大牛蟹(おおうしがに)(以下、シガニー)鎮定に向かった一行。

笹福一行
地図(鬼住山)

しかし、戦いは激しく、鶯王(うぐいすおう)が命を落とす。

一行は、敗色濃厚と見て、一旦、笹苞山(さすとやま)に帰還。

鬼住山と笹苞山

そして、父である、孝霊天皇こと、大日本根子彦太瓊尊(おおやまとねこひこふとに・のみこと)(以下、笹福(ささふく))は、悲しみを押し殺して眠りについたのであった。

その夢の中で、あの神様が現れた。

先に紹介しておこう。

天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)である。

アマ「笹福・・・。ようやく寝ましたね。」

笹福「こ・・・これは、天照大神様! 一体、何用(なによう)にござりまするか?」

アマ「笹福は、父親と違って、礼儀正しいようじゃのう。」

笹福「ち・・・父上?」

アマ「詳しいことは、エピソード130を読んでたもれ。」

笹福「そ・・・そのようなことを言うために、夢に現れたのですか?」

アマ「いや、そうではない。汝(いまし)に秘策を授けようと思ってな・・・。」

笹福「秘策?」

アマ「その通りじゃ。よく聞け。『笹の葉を刈り取り、山のように積み上げよ。さすれば、風が吹き、鬼は自(おの)ずと降参するであろう』とのことじゃ。」

笹福「山のように積み上げれば、良いのでござるな?」

アマ「そうじゃ。疑ってはならぬぞ。」

笹福「疑いは致しませぬが・・・。とのこと・・・という申されようが気になりまする。」

アマ「実はのう・・・。伝承では、天津神(あまつかみ)とだけ記されていて、特定の神の名が書かれておらぬのじゃ。」

笹福「で・・・では、天照大神様とは、断言されておられぬのですな?」

アマ「その通りじゃ。じゃが、今回は、わらわが伝えようと思ってな・・・。」

笹福「な・・・なにゆえにござりまするか?」

アマ「エピソード187で『スー』の奴、わらわのことを引きこもりだの、責任放棄などと言いたい放題だったであろう? そこで、汚名返上のために出てきたというわけじゃ。喜べ!」

笹福「は・・・はあ・・・。」

アマ「あまり喜んでおらぬようじゃのう。仕方ない。今回だけ、特別ゲストも出してやろうぞ。」

笹福「ト・・・トクベツデスト?」

鶯王「父上! わ(私)にござりまする。鶯王にござりまする。」

笹福「おお! 鶯王! もう、そちらに行っておるのか?!」

鶯王「はい! ところで、父上! わ(私)の名についてですが、伯伎(ほうき:現在の鳥取県西部)で生まれた王(みこ)という意が有るかもしれぬと、作者は考えているようですぞ。」

笹福「なに!?」

鶯王「父上は、鶯(うぐいす)の別名を御存知ですか?」

笹福「たしか・・・法吉鳥(ほうきどり)であったな・・・。あっ! そうか! 『ホウキドリ』と『ホウキ』が、かかっておるのじゃな?」

鶯王「そうではないかと、作者は考えておるようです。ちなみに『法吉鳥』の情報は、九條正博氏から、いただいたモノにござる。」

笹福「そげか・・・。この場を借りて、謝(しゃ)し奉(たてまつ)りまする。」

鶯王「父上・・・。良き名を付けてくださり、わ(私)も感謝しておりまする。」

笹福「そのようなこと・・・恥ずかしゅうなるではないか・・・。ところで、鶯王。そちらは寂しくないか?」

鶯王「御案じ召されまするな。『ふぅ(福姫のこと)』も母上様(細媛のこと)もおられまするゆえ・・・。」

笹福「なに!? 細(ほそ)や『ふぅ』が!?」

細「大王! お久しぶりにございます!」

ふぅ「父上ぇぇ! お久しぶりだがん!」

笹福「おお! 細! ふぅ! 久しぶりじゃのう! 嗚呼、夢なら覚めんでくれ・・・・・・・・・・・・。」

歯黒「大王! 大王!」

笹福「ん・・・。こ・・・ここは?」

歯黒「何を仰っておられまする。笹苞山(さすとやま)にござりまする。」

笹福「ゆ・・・夢であったか・・・。」

歯黒「何を御覧になられたのです?」

笹福「うむ。」

こうして、笹福一行は、夢のお告げに従い、笹の葉をかき集めた。

山のように、うずたかく積み上げられた笹の葉。

これで、どうやって鬼を退治(たいじ)するのであろうか?


一日目の朝・・・。

笹福「何も起きぬぞ?」

牛鬼「そげですねぇ。」

シガニー「ヤマトの諸君! 新しい遊びを見つけたのかね? 子供じみて、面白そうだがね!」

芹彦「うぬぬ・・・。言わせておけばっ!」

歯黒「し・・・しばし、様子を見ましょうぞ!」

笹福「そうじゃのう。」


二日目の朝・・・。

笹福「今日も、何も無しか・・・。」

ぐっさん「どうなってんねん?」

シガニー「ヤマトの諸君! そげなことして、何が楽しいんかね?」

タケ「た・・・楽しんでおるわけではないぞ!」

ヘンリー「だいど(だけど)、これが、どうやって退治につながるんかね?」

みなお「せ・・せやな。シガニーの言ってることが、正しいような気がしてきたで・・・。」

ユミ「大王! 今日もダメだったってこと?」

笹福「も・・・もうしばらく、様子を見ようぞ。皆の衆! 疑ってはならぬぞ!」

一同「御意!」×多数


そして、三日目の朝・・・。

笹福「ん? 南風が吹いてきたぞ!」

朝妻「つ・・・強い風だがん!」

ぐっさん「あっ! 笹の葉が、空を舞い始めましたでっ!」

タケ「そのまま、鬼の屋敷に向かっていく!」

芹彦「父上! それがしたちも、笹の葉と共に、屋敷に突っ込みましょうぞ!」

笹福「良し! 皆の衆! 攻めかかれぇぇ!」

一同「おお!」×多数

シガニー「何だ!? いきなり攻めて来たがっ!」

鬼たち「お頭(かしら)! 笹の葉が、まとわりついて身動きが取れないがっ!」×多数

シガニー「えっ? そ・・・そう言われてみると、わ(私)も身動きが・・・。」

歯黒「進めぇ! 進めぇ!」

シガニー「ど・・・どげしたら、ええんだ!?」

戦いは、どうなるのか? 

次回につづく

この記事が参加している募集

日本史がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?