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JW279 大王、苦悶する

【疫病混乱編】エピソード31 大王、苦悶する


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

紀元前88年、皇紀573年(崇神天皇10)、崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)は、川内(かわち)からの帰路にあった。

地図(川内からの帰路)

大伯母の倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)(以下、モモ)による、衝撃の告白が続いていたのである。

傍らには、彦五十狭芹彦(ひこいさせりひこ)(以下、芹彦(せりひこ))。

稚武彦(わかたけひこ)(以下、タケ)。

そして、タケの子、武彦(たけひこ)(以下、たっちゃん)もいる。

皇室系図(旅の仲間)

芹彦「まさか・・・甥っ子と、やり合うことになろうとは・・・。」

タケ「もったいぶらずに、読者に分かるよう話せっ!」

ミマキ「ど・・・読者のみなさん・・・。武埴安彦(たけはにやすひこ)こと、安彦叔父上が、謀反(むほん)を企てていると、モモ伯母上が申すのでござる。わしは・・・わしは信じたくないっ!」

皇室系図(安彦)

タケ「作者め・・・。事前通達してくるとは・・・。」

たっちゃん「ん? 父上? 作者が何か?」

タケ「実は、『記紀(きき)』では、謀反が起きるまで、知らなかったことになっておるのじゃ。」

芹彦「なんじゃと!?」

モモ「そうなのよ。私だけが、あらかじめ知っていた・・・みたいな流れなのよね。」

ミマキ「は?」

モモ「それに、安彦の背後で、出雲(いずも)や丹波(たにわ)が暗躍してるっていうのも、作者のオリジナル設定なのよねぇ。」

地図(出雲と丹波)

ミマキ「おいじなう?」

たっちゃん「どちらにせよ、安彦の謀反が分かった今、なにかしらの手を打たねばならぬのでは?」

ミマキ「さ・・・されど、なにゆえ、叔父上が謀反など・・・。」

芹彦「此度(こたび)の疫(やく)による、民(おおみたから)の苦しみを見て、これを救わんと義憤(ぎふん)に駆られたのやもしれぬな・・・。」

モモ「あの子・・・真面目だからね・・・。」

タケ「たしかに・・・。九代目を諫(いさ)めたこともあったしな・・・。」

ミマキ「ち・・・父上を?」

モモ「嗚呼・・・兄上が生きておられたら・・・。」

芹彦・タケ「兄上か・・・。」×2

モモ「そう・・・。兄上が生きておられたら、こんなことには・・・。」

ミマキ「しばし、お待ちくだされ。兄上とは?」

芹彦「鶯王(うぐいすおう)の兄上じゃ!」

皇室系図(鶯王)

ミマキ「伯伎(ほうき)の鬼退治の折、エピソード194にて亡くなられた御方にござりまするな?」

芹彦「うむ。その通りじゃ! 兄弟をまとめてくださった御方じゃ。」

タケ「作者のオリジナル設定ではあるが、私たち兄弟が争わずに済んだのは、兄上のような存在が有ったからだと思う。」

モモ「でも、九代目こと『ピッピ』には、そんな存在がいなかった・・・。」

タケ「よくよく考えると、鶯王の兄上には、母の実家という『しがらみ』が無かった。それゆえ、私たちをまとめることが出来たのかもしれぬな。」

ミマキ「母の実家?」

モモ「安彦の母御前(ははごぜ)の実家は、川内(かわち)でしょ?」

ミマキ「あっ! 此度の川内の大蛇・・・大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の荒御魂(あらみたま)・・・。川内の豪族たちの不満と、安彦叔父上がつながっていると?」

芹彦「この伝承そのものが、安彦の謀反を指しているのかもしれぬぞ!」

たっちゃん「安彦の謀反の後に、川内に赴いたとも考えられまするな?」

モモ「その線も有り得るわね。」

芹彦「して、此度の謀反、如何(いかが)する? ミマキ?」

ミマキ「し・・・しばし、考えさせてくだされ・・・。」

こうして、ミマキ一行は、三輪山(みわやま)の麓、磯城瑞籬宮(しきのみずかき・のみや)に帰還したのであった。

地図(磯城瑞籬宮)

それからしばらくして、ミマキは、義母の包媛(かねひめ)(以下、カネ)の元を訪れていた。

皇室系図(カネ)

カネ「大王(おおきみ)? 如何(いかが)なされました?」

ミマキ「義母上・・・。ちと、昔の話など聞きたくなりもうして・・・。」

カネ「昔の話? 何かあったのですか?」

ミマキ「い・・・いえ、先代は『おじうえ』たちとは、仲睦(なか・むつ)まじかったのですか?」

カネ「ミマキ殿? 何があったのです?」

ミマキ「い・・・いや、ちと、気になりもうして・・・。」

カネ「ミマキ殿・・・。母に隠し事ですか?」

ミマキ「し・・・しからば申し上げまする。安彦叔父上が、出雲や丹波と加担し、謀反を企んでおると・・・。」

カネ「えっ?」

ミマキ「わしは、どうすべきか・・・。悩んでおるのでござる。」

カネ「ミマキ殿・・・。此度の疫で、人も国も苦しみました。今こそ、国を立て直す時。汝(いまし)に、その心構えが無いというのであれば、安彦殿に、命を捧(ささ)げなさいませ。」

ミマキ「そ・・・そのようなこと出来ませぬ。出来るわけが・・・。」

カネ「では、答えは出ているではありませんか。成すべきことが有るなら、逃げてはなりません。」

ミマキ「は・・・義母上・・・。」

カネ「それに・・・・・・安彦殿は賭(か)けに出ているのかもしれません。」

ミマキ「賭け?」

カネ「勝てば、安彦殿が大王となり、出雲や丹波との連合政権が生まれるでしょう。負けたとしても、ミマキ殿が、出雲や丹波に、手を伸ばすキッカケを与えることになります。どちらに転(ころ)んでも、国がまとまる・・・。」

ミマキ「叔父上は、わしに・・・。丹波の全てを手中に収め、出雲にトドメを刺せと?」

カネ「そこまでは分かりません。私の憶測(おくそく)ですから・・・。」

ミマキは、どのように対抗するのであろうか? 

次回につづく

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