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JW265 異国からの舟

【疫病混乱編】エピソード17 異国からの舟


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

疫病流行も終息の気配を見せようとしていた頃、吉備(きび)の国では・・・。

地図(吉備)

吉備の住人、ジョンとヨーコが、海辺で作業をしていた。

ジョン「エピソード197以来だぜ。」

ヨーコ「七代目が崩御(ほうぎょ)した時からだから、けっこう、時間が経ってると思うんだけど・・・。」

ジョン「その辺は、気にしちゃダメだろ。」

そこに、ジョンとヨーコの息子、ジュリアンとショーンがやって来た。

ジュリアン「親父! おふくろ! なんか、変な舟が来とる!」

ショーン「父ちゃん! 母ちゃん! 舟から、変な人が降りて来たんじゃ!」

ジョン「変な人? 俺以外に変なヤツがいるのか?」

ヨーコ「どういうこと?」

ショーン「両目は爛々(らんらん)として虎狼(ころう)の如(ごと)く。」

ジュリアン「茫々(ぼうぼう)と髭(ひげ)は赤く、燃えるが如く。」

ジョン「それで? 体も異常に大きかったってのか?」

ジュリアン「親父! まだ、言うてないじゃろ!」

そこに、当該の人物がやって来た。

当該の人物「その通り! ウリが、温羅(うら)ニダ! ウリがウラ!」

ジョン「それで? 何しに来たんだ?」

ウラ「ウリは、百済(くだら)の王子様ニダ!」

ヨーコ「く・・・百済って、半島の国よね? 異国(とつくに)じゃない!?」

地図(百済)

ウラ「その通りハセヨ。どうして、この国に来たのか・・・。」

ジョン「そうか・・・。バカンスか・・・。」

ウラ「ちょっと違うニダ! きっと、亡命とか、亡命とか、亡命ハセヨ!」

ジョン「亡命しか、言ってないぞ!?」

ウラ「そういうことで、この地で暮らすニダ。」

ジュリアン「お・・・親父・・・。こんなヤツ、受け入れて大丈夫なんか?」

ジョン「さあな。俺には、俺の暮らしがある。そして、アイツにはアイツの暮らしがある。それだけだ。」

ショーン「そ・・・そんなことで、ええんか?」

ジョン「仕方ないだろ。」

こうして、ウラは、吉備に永住することとなった。

一方、ヤマトでは・・・。

崇神天皇こと、御間城入彦五十瓊殖尊(みまきいりひこいにえ・のみこと)(以下、ミマキ)が、宮中で、まどろんでいた。

同伴するのは、大后(おおきさき)の御間城姫(みまきひめ)(以下、みぃ)である。

皇室系図(御間城姫)

ミマキ「疫(やく)が収まってきたとはいえ、まだまだ、元には戻らぬな・・・。」

みぃ「かれこれ、三年近くも疫が流行りましたから、すぐにというのは・・・。」

ミマキ「そうじゃのう。疫で、多くの人を失うた。どこも人手が足りず、米の出来高も減っておる。そればかりか、他の作物も・・・。」

みぃ「聞いた話ですが、米などの食べ物を奪い合い、邑々(むらむら)で争いが起きているそうですね?」

ミマキ「そうなのじゃ。隣の邑から米を奪い、それをまた、別の邑が奪うという有り様・・・。土地を捨て、賊(ぞく)となって暮らしを立てておる者も出てきておる。」

みぃ「ぞ・・・賊?」

ミマキ「人手が戻るまでは、時が掛かる。それゆえ、天社(あまつやしろ)と国社(くにつやしろ)を建てようと思うておるのじゃ。」

みぃ「前回、お話された、天津神(あまつかみ)と国津神(くにつかみ)を祀(まつ)る神社のことですね? されど、神社を建てるにも、人手が要(い)るのでは?」

ミマキ「二千年後のように、大きな建物を建てるわけではない。小さな祠(ほこら)でも良いのじゃ。まずは、荒(すさ)ぶる、民(おおみたから)の心を安(やす)んじめることが肝要(かんよう)。神々に守られていると思えば、争いも収まろう。」

みぃ「そうなると良いのですが・・・。」

ミマキ「案ずるな・・・。大物主神(おおものぬしのかみ)、それに、日本大国魂神(やまとのおおくにたま・のかみ)の怒りは鎮(しず)まったのじゃ。もう少しの辛抱ぞ。」

その日の夜。

ミマキは夢を見た。

ミマキの前に、男女二柱(ふたはしら)の神が現れたのである。

ミマキ「ど・・・どなたにござりまするか?」

男神「我(われ)は、天御柱命(あめのみはしら・のみこと)なり。志那都彦(しなつひこ)とも呼ばれておる。これより、我のことを『しなお』と呼べ。」

女神「私は、国御柱命(くにのみはしら・のみこと)よ。志那都比売(しなつひめ)とも呼ばれてるわ。これからは『しーちゃん』と呼んでね。ちなみに、『しなお』の姉とも、妻ともされてるのよ。」

ミマキ「し・・・しなつ? たしか・・・風の神では、ありませなんだか?」

しなお「その通りだ。さあ、我(われ)らを祀りなさい。」

ミマキ「な・・・なにゆえ、風の神を祀れと?」

しーちゃん「雲は、風によって生み出されるのよ。雲が無事に起こり、雨が降るように・・・。強いては、多くの作物が育つように、私たちも尽力しようと思って・・・。」

ミマキ「あ・・・ありがたきかな! ただちに、社(やしろ)を建てまするっ。」

しなお「竜田山(たつたやま)に建てよ。これが竜田大社(たつたたいしゃ)の創建となるのだ。」

竜田大社(鳥居)
竜田大社(拝殿)

ミマキ「ゆ・・・夢の中で解説にござりまするか?」

しーちゃん「二千年後の地名でいうと、奈良県三郷町立野南(さんごうちょう・たつのみなみ)よ。覚えておいてね。」

地図(竜田大社)

ミマキ「かしこまりもうした。しっかりと覚えておき、社を建てまするっ!」

しなお・しーちゃん「頼んだ(ぞ)(わよ)!」×2

こうして、竜田大社が創建されたのであった。

つづく

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