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JW326 再会の地

【東方見聞編】エピソード9 再会の地


第十代天皇、崇神天皇(すじんてんのう)の御世。

高志国(こし・のくに:北陸地方)を旅する、大彦(おおひこ)たち。

従う者たちは、下記の通り。

葛城宮戸彦(かずらき・の・みやとひこ)(以下、みやさん)。

それから、和珥彦国葺(わに・の・ひこくにふく)(以下、くにお)。

そして、赤ん坊の得彦(えひこ)である。

系図(大彦)
系図(葛城氏と和珥氏)

秋田県の古四王神社(こしおうじんじゃ)を紹介した一行は、更に進んで、あるところに来ていた。

くにお「して、あるところとは、何処(いずこ)にござりまするか?」

大彦「何を隠そう、相津(あいづ)に来たんだな。」

くにお「相津?」

みやさん「この地にて、皇子(みこ)の御子息、武渟川別(たけぬなかわわけ)こと『カーケ』様と合流したのでござるよ。」

地図(カーケ)

大彦「そういうことで、相津(あいづ)と呼ばれるようになったんだな。」

くにお「なるほど・・・。この地で、再会したゆえ、相津に・・・。」

大彦「そういうことなんだな。すごく楽しみなんだな。」

くにお「して、二千年後の何処になりまする?」

みやさん「福島県の会津若松市(あいづわかまつし)周辺にござるよ。会津地方と呼ばれているのでござるよ。」

地図(相津→会津)

くにお「は?! 会津!? 会津藩(あいづ・はん)で有名な、あの会津か!?」

大彦「どうして、そっちの方は知っているのかな? 甚(はなは)だ疑問なんだな。」

くにお「申し訳ござりませぬ。作者からの受け売りにござりまする。」

みやさん「とにかく、親子が再会したので『相津』となり、その後『会津』になったのでござるよ。」

くにお「まさか、あの有名な会津藩に、皇子が絡(から)んでおられたとは・・・。」

大彦「別に、会津藩自体には、絡んでないんだな。」

くにお「いや、そういうことではなく・・・。」

そんなことを語らっていると、遥か向こうから、一団が近付いて来た。

改めて言っておこう。

「カーケ」の一団である。

そこには、作者のオリジナル設定で付き従うことになった、大伴豊日(おおとも・のとよひ)と、久米彦久米宇志(くめ・の・ひこくめうし)(以下、うし)の姿もある。

系図(大伴氏と久米氏)

大彦「おお! 息子よ! 久しぶりなんだな!」

カーケ「父上! 会いたかったんだぜ!」

大彦「ん? これは、どういうことかな?」

カーケ「どうしたのかね?」

大彦「それがしの孫、武川別(たけかわわけ)こと『ジュニア』の姿が、見当たらないんだな。」

系図(ジュニア)

みやさん「そう言われると、どこにもいないのでござるよ。」

くにお「何かあったのでござりまするか?」

カーケ「ああ・・・。それについては、追々話すとして、こっちも聞きたいことがあるんだぜ。」

大彦「何かな?」

豊日「まず、大入杵(おおいりき)こと『リキ』様の姿が見当たらないじ。どういうことっちゃ?」

みやさん「ああ・・・。『リキ』様は、能登国造(のと・のくにのみやつこ)として、現地に留まったのでござるよ。エピソード322を見てほしいのでござるよ。」

カーケ「そんなことがあったとは・・・。」

うし「それから、一番、気になるのが、その赤ん坊っすね! 誰の子なんすか?」

大彦「誰の子でもないんだな。拾ったんだな。名は、得彦なんだな。」

得彦「あう。あう。」

うし「捨て子を拾ったってことっすか?」

カーケ「どこかの邑(むら)に預(あず)けることも出来たのではないかね?」

みやさん「それは出来なかったのでござるよ。」

豊日「どういうことやじ?」

大彦「得彦は、のちに、宿禰(すくね)となり、難波氏(なにわ・し)の祖となるんだな。」

カーケ「将来が分かっている以上、連れて行くしかなかったということかね?」

くにお「左様にござりまする。」

うし「でも、赤ん坊を連れての旅となると、いろいろ大変だったんじゃないっすか?」

すると、大彦軍の兵士たちが、躍り出て来た。

兵士(い)「さすがは『うし』様! 我らの苦労、聞いてくだされ!」

兵士(ろ)「夜の見張り番は、得彦殿の夜泣きにも、当たらねばなりませぬ。泣き止むまで、四苦八苦の毎日にござった・・・。」

兵士(は)「それだけではありませぬぞ。昼は、昼で、得彦殿の乳を探さねばなりませぬ。行く先々で、乳の出るオナゴ(女)がいないか尋ね回り・・・。」

兵士(に)「それから『おむつ』を換えたり・・・。」

兵士(ほ)「それに、得彦殿の『おもちゃ』も作ったのう。」

兵士(へ)「おお! そうじゃ。音が鳴る『おもちゃ』が、大のお気に入りで・・・。」

兵士(と)「そうそう・・・。こやつが、振れば音が鳴る『おもちゃ』を作ったのでござる。」

兵士(い)「いやぁぁ。あんなに気に入るとは思いもよらず、作った甲斐があったというモノよ。」

兵士(ろ)「あれで、すぐ泣き止むようになったのう・・・。」

兵士(は)「あとは、大彦様のヒゲじゃ。大彦様のヒゲを引っ張るのが大好きで・・・。」

兵士(に)「あの小さく丸い手で引っ張るのが、また、なんとも愛らしいのよ。」

兵士(ほ)「げにも、げにも・・・。ほれ! 夜泣きの時も、ヒゲを引っ張らせて・・・。」

兵士(へ)「そうじゃ、そうじゃ。眠気眼(ねむけまなこ)の大彦様が、面白かったのう。」

兵士(と)「い・・・痛いんだな・・・。」

兵士一同「似ておる! 似ておる!」×多数

うし「よ・・・要するに、楽しかったんすね・・・。」

カーケ「父上・・・。これで良いのかね?」

大彦「た・・・溜まったモノは、吐き出すのが一番なんだな・・・。」

なにはともあれ、二人は無事に再会出来たのであった。 

つづく

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