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JW608 南毗都麻の島

【垂仁経綸編】エピソード30 南毗都麻の島


第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのう御世みよ

日嗣皇子ひつぎのみこ大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)は、播磨稲日大郎姫はりまのいなひのおおいらつめ(以下、ハリン)を妻に迎えようと決意した。

そして、針間国はりま・のくに(現在の兵庫県南部)に向かう。

系図(シロ)
地図(針間へ)

付き従うのは、つげおびと(以下、スズム)と、伊志治いしじ(以下、イッシー)である。

「ハリン」の父、若日子建吉備津日子わかひこたけ・きびつひこ(以下、タケ)や、義兄ぎけい武彦たけひこ(以下、たっちゃん)、妹の伊那毘若郎女いなびのわかいらつめ(以下、イナビー)も加わり、姫が隠れた島に渡ろうとしたのであったが・・・。

系図(ハリン、タケ、たっちゃん、イナビー)

タケ「皇子みこよ。そうはやるでない。まずは、地名紹介じゃ。」 

シロ「えっ? そうなりまするか?」 

スズム「左様さよう。タケ様のおっしゃとおりにござりまする。『播磨国はりま・のくに風土記ふどき』が、此度こたびの台本となっておること、もう、お忘れか?」 

シロ「あ・・・相分あいわかった。」 

たっちゃん「まずは、御饗みあえたてまつりまするぞ。」 

イナビー「腹が減っては、いくさ出来できぬともうしますし・・・。」 

シロ「う・・・うむ。」 

イッシー「こうして、この地を、阿閇あへと呼ぶようになったのじゃ。兵庫県播磨町はりまちょうに有ったと言われておるぞ。」 

地図(兵庫県播磨町)

タケ「さあさあ、御坏物みつきものじゃ。」 

シロ「御坏物みつきもの?」 

タケ「つきという、底の浅いうつわに、食べ物をったモノじゃ。」 

イナビー「の魚を盛りましたのよ。」 

イッシー「こうして、入り江は、御坏江みつきえと呼ばれるようになったのじゃ。二千年後の加古川市かこがわし別府町べふちょうと言われておるぞ。」 

地図(御坏江→兵庫県加古川市別府町)

タケ「これにて、地名解説は終わりじゃ。」 

シロ「では、ただちに、姫のいる島に向かいまする。」 

スズム「そのまえに、舟に乗せるたなを作らねば・・・。」 

シロ「ん? たな?」 

たっちゃん「祭器さいきを置くたなのことじゃ。若木わかぎの細い枝で作るのじゃ。」

祭器を置く棚

イッシー「こうして、この地を、樹津たなつ名付なづけたのじゃが、二千年後は所在地不明となっておる。」 

そして、ようやく「シロ」は「ハリン」とうことが出来できたのであった。 

シロ「長かった・・・。」 

ハリン「皇子みこ!」 

シロ「おお! ハリン! この島にびしつまよ!」 

ハリン「この島に隠れた、可愛い妻よ・・・だなんて、そのような・・・(⋈◍>◡<◍)。✧♡。」 

イッシー「こうして、島の名も、南毗都麻なびつまの島と呼ばれるようになったのじゃ。高砂市たかさごし加古川かこがわ河口西岸せいがん付近と言われておる。」 

地図(南毗都麻の島)

シロ「『イッシー』よ。解説、ならびに仲立なかだち、大儀たいぎである。よって、いましには、大中伊志治おおなか・の・いしじの名をさずけようぞ。」 

イッシー「ありがたきしあわせ。」 

シロ「では『ハリン』よ。帰ろうぞ。」 

ハリン「はい。」 

シロ「して、さっそく、密事むつびいたそうぞ!」 

ハリン「えっ! (〃▽〃)ポッ」 

イッシー「こうして、この地を、六継むつぎさとと呼ぶようになったのじゃ。加古川市かこがわし加古川町かこがわちょう加古川かこがわ河口付近と言われておる。」 

地図(六継の里→加古川市加古川町付近)

さて、密事むつびは無事にんだのであったが・・・。 

シロ「うるさい! まったもって、けしからん!」 

ハリン「皇子みこ? 如何いかがなされましたか?」 

シロ「ここは、なみや、鳥の鳴き声がさわがしい。」 

スズム「こうして、河口付近よりも奥の地にうつられたのじゃ。」 

イッシー「これが、高宮たかみやにござる。のちに、やかたむらりもうしたが、二千年後については、つまびらかなことは、かりもうさず。」 

たっちゃん「酒殿さかどのも造ったぞ。のちに、酒屋さかやむらとなったが、その後、ロマンとなった。」 

タケ「贄殿にえどのも造ったようじゃな。こちらも、のちに、贄田にえたむらとなったが、所在不明となっておる。」 

スズム「・・・というわけで、ようやく、みあいおこなはこびとりもうした。」 

シロ「みあい?」 

タケ「披露宴ひろうえんもうすものじゃ。」 

シロ「そ・・・そうなりまするか?」 

こうして、みないつぶれた頃、一人の女人が、やって来た。

初登場の出雲いずもおみ比須良比売ひすらひめ(以下、ひすら)である。 

ひすら「皇子みこ姫様ひめさま。おやすどころ床掃とこばらいがみまして、ござりまする。」 

ハリン「えっ! (〃▽〃)ポッ」 

シロ「おお! そうか・・・。大儀たいぎであった。では『ひすら』よ。『イッシー』の妻となるが良い。」 

ひすら「えっ?」 

イッシー「こうして、『ひすら』は、われの妻となったのじゃ。」 

とにもかくにも「シロ」は、求婚に成功したのであった。 

つづく

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