Judai

こんにちは! 詩・小説・日記などを載せています。

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    シリアスすぎない詩です。

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    文章を継続して書く訓練をしています。

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    好きな歌に和訳が見つからなかったとき、ざっくりと訳しています。

記事一覧

「個室に入ってこないでください!!」(エッセイ)

いつものように、店のトイレに駆け込んだ。 そこは中規模の商業施設で、フロアごとにトイレが入っていた。腹を押さえた僕は、目の端っこで、見慣れぬものを捉えた。 それは…

Judai
2週間前
2

【詩】命よび

うつくしの木の下で 埋められたぼくの先祖が はつかの夜に 霊になり ぼくは中古車の座席を倒し 遠く夜空の 星に見違う 枯れた花弁の奥深く 生まれた種の 事情を…

Judai
3週間前
2

「wave」を歌っているのは、誰?(日記)

ボサノバの曲「wave」をYoutubeで検索すると、この動画が最初に出てきます。僕はこの演奏がとても好きだったのですが、収録されているアルバムを見つけられずにいました。…

Judai
1か月前
3

「皿を洗ってて、授業に遅れました」(エッセイ)

僕が20歳まで住んでいた寮に、インドネシアからの留学生がいた。 よく共用のキッチンで会うので、しばらくしてから話すようになった。 彼と話すようになると、ひとつ面白…

Judai
1か月前
8

いいから早く寝てくれ 【ドラマ劇】

*** 第一幕 東京。どこかのアパートの一室。ひとりの男が、茶色い革張りのソファーに座って、窓の外を眺めている。 子ども(男性)がトイレのために、居間を横切る。 …

Judai
1か月前
3

【小説】水のない海岸

九州の片田舎の無人駅は、街と街を繋ぐ幹線道路沿いにあった。 道路にはたくさんの車が団子のように列をなしていて、どれもが異なる地名のナンバー・プレートを提げていた…

Judai
2か月前
1

【詩】城壁

灰色の城は 終わらない反復の窓を 西に向けていて、 そこに人影はひとつもない ただいくつかの反復の向こう バルコニーから一株のベコニアが顔を出す 色を失った空の光 …

Judai
2か月前
1

【詩】現実たち

*** 物忘れをしよう。 いつでも遠い風が吹いてきて 今日の雑事を終わらせたら ただひとり、そっちに降りていこう。 僕らは結節点にいる。 一つの現実の終わりに立って…

Judai
2か月前
2

【詩】Aviation または時間の塔

その塔には、いくつもの弦が巻き付いていた。素材はざらざらとしたレンガが白く塗り固められていて、外付けの階段が上まで、渦を巻いていた。 弦はそれぞれに固有の色を持…

Judai
2か月前
2

【日記】 Artificial Oasis / Tokyo

新橋駅からゆりかもめに乗り、日の出という駅で降りた。 列車から降りたのは、僕を含めてほんの数人だった。前を歩く子どもたちとお母さんがマンションへ消えていくと、首…

Judai
2か月前
4

【詩】Glitter of clouds

Capture the moment that never happens again After all sentiments you will see yourself there Better expressions are all around you gotta ignore Keep the directi…

Judai
3か月前
4

【短編】マヨナカ・ランドリー

熱い夜だ。こんな日は、誰も格好つける余裕などない。どのクラブにいる女も男も、シャツの背中に卵型の汗ジミを作ることに精進している。 私も「PLAY!」のハートが胸に入…

Judai
3か月前
2

長い手紙 その4 -他者とつくる時間-

1954年8月28日 拝啓  ご無沙汰しています。いかがお過ごしですか? こちらは昨日から、長い雨が降っています。どこか夏の終わりを思わせるような、腕に当たる飛沫が冷た…

Judai
3か月前
1

長い手紙 その3 -自分でいること-

1954年8月18日 拝啓  連日のお手紙になります。 今日は頭痛がひどいので(私は頭痛持ちなのです)、ほとんど一日中、部屋で過ごしています。明後日にここを発つ予定ですか…

Judai
3か月前
2

【短歌】Keepメモ

1.インターネット かなしみを 自分の言葉で 語ること できるあなたは しあわせ者さ 2.連歌 息が切れ 最後に残った 灯火は 短歌くらいに 小さくて 文字すらも …

Judai
4か月前
3

長い手紙 その2 -信じることこそ-

1954年8月17日 拝啓  お返事をありがとうございました。 あなたも私と同じように、自分なりの「考え」を作るのに前向きになったと聞き、少し嬉しくなりました。私は最近…

Judai
4か月前
4

「個室に入ってこないでください!!」(エッセイ)

いつものように、店のトイレに駆け込んだ。 そこは中規模の商業施設で、フロアごとにトイレが入っていた。腹を押さえた僕は、目の端っこで、見慣れぬものを捉えた。 それは、トイレの入り口に設けられた、「各階の個室の空き状況」のモニターだ。ぴかぴかの画面には、それぞれのトイレの個室の占有状況が表示されている。例えば、僕がまさに入ろうとしている目の前のトイレは「1/2」と書かれている。つまり個室がまだひとつ、空いているのだ。 些細なことでお腹を壊す僕のような人間にとって、都会のトイレが

【詩】命よび

うつくしの木の下で 埋められたぼくの先祖が はつかの夜に 霊になり ぼくは中古車の座席を倒し 遠く夜空の 星に見違う 枯れた花弁の奥深く 生まれた種の 事情を知らず ぼくはそのまま 口に入れ あら、と皿に 吐き出した ただ命の素などと ひとつも頭に上らずに もうこれ食事の邪魔なだけ 種はそのまま 燃やされた

「wave」を歌っているのは、誰?(日記)

ボサノバの曲「wave」をYoutubeで検索すると、この動画が最初に出てきます。僕はこの演奏がとても好きだったのですが、収録されているアルバムを見つけられずにいました。しかし昨日、そのアルバムをほとんど特定できたので、共有します!(1/5) アルバムの名前は「Páginas da Vida - Nacional」。これは「人生のページ」というブラジルの昼ドラのサウンドトラックで、「wave」は一曲目に収録されているようです。 また、この曲のボーカルはトム・ジョビンではなく

「皿を洗ってて、授業に遅れました」(エッセイ)

僕が20歳まで住んでいた寮に、インドネシアからの留学生がいた。 よく共用のキッチンで会うので、しばらくしてから話すようになった。 彼と話すようになると、ひとつ面白いことに気が付いた。それは、彼がかなりの時間を食事にかけているということだ。ある日、僕は料理をしている彼の隣でカレーを温め、自室で食べ、オンラインの授業を受け、そのあと、コーヒーを入れるためにキッチンに戻った。すると、彼はまだご飯を食べていた。つまりは2時間くらいを、一度の食事に費やしていたということになる。僕はそ

いいから早く寝てくれ 【ドラマ劇】

*** 第一幕 東京。どこかのアパートの一室。ひとりの男が、茶色い革張りのソファーに座って、窓の外を眺めている。 子ども(男性)がトイレのために、居間を横切る。 子ども:まだ起きているの? 男:眠れないんだ。珍しく、Lサイズのアイスコーヒーを飲んじまったから。 子ども:寝れないって、僕にはよくわからない。僕の眠さを分けてあげたいくらいだよ。 男:確かに俺も、子どものころは、いつもすぐ寝てたな。 子ども:(あくびをして)でもさ、寝れない夜があるほうが、大

【小説】水のない海岸

九州の片田舎の無人駅は、街と街を繋ぐ幹線道路沿いにあった。 道路にはたくさんの車が団子のように列をなしていて、どれもが異なる地名のナンバー・プレートを提げていた。運転手は誰もが退屈そうな顔をしている。 私は「ボーイスカウト・ろっかく化石発掘隊」と書かれたプラスチックの札を首にかけた小学生の間を縫って、車両の先頭にいる車掌に切符を見せた。無人駅ではこうやって降りるのが通例であるようだ。 当駅での乗降者は、私のほかに一人の女性だけだった。彼女は車両後部のドアから降りて、どこで

【詩】城壁

灰色の城は 終わらない反復の窓を 西に向けていて、 そこに人影はひとつもない ただいくつかの反復の向こう バルコニーから一株のベコニアが顔を出す 色を失った空の光 それをばらして みずからに必要なものだけを取り出す それはまるで命だ 城壁の石は山から切り出され 黙って王に従った 王ははるか昔に死に 城壁の中は ブナの林に還った ただそこに城壁は黙り 人間の過ちを無言で責め立てている いや むしろ  責めてすらいないのかもしれない ただ ベコニアだけが 口を利けそうな

【詩】現実たち

*** 物忘れをしよう。 いつでも遠い風が吹いてきて 今日の雑事を終わらせたら ただひとり、そっちに降りていこう。 僕らは結節点にいる。 一つの現実の終わりに立っている。 この先には別の現実が居座っている。 まるで海の手前にいるような気分だね。 僕らは僕らしか頼るものがなく ただ進んだ先、進んだ後でしか、どうなるかはわからない。 道理も道徳もない。 僕は自分の倫理という灯をもって、この結節点を過ぎるしかない。 帰りたいなら帰っていいよ。 疲れたならば寝に戻るんだ。 君

【詩】Aviation または時間の塔

その塔には、いくつもの弦が巻き付いていた。素材はざらざらとしたレンガが白く塗り固められていて、外付けの階段が上まで、渦を巻いていた。 弦はそれぞれに固有の色を持っていた。あるものは色を忘れた灰のような表情であり、別のものは緑らしい緑色をしていた。じっと見ていれば、そのうち弦が成長していくさまを見られそうでもあった。実際、弦を正確な形でスケッチすることはできなかっただろう。どれかの弦は今まさに失われていき、新しい弦が弦どうしの間から生じ、塔に巻き付いていく。それが繰り返されて

【日記】 Artificial Oasis / Tokyo

新橋駅からゆりかもめに乗り、日の出という駅で降りた。 列車から降りたのは、僕を含めてほんの数人だった。前を歩く子どもたちとお母さんがマンションへ消えていくと、首都高を走る車の遠い音だけが残った。 ふ頭に並んだ倉庫に沿って、レインボーブリッジのほうへ歩いていく。 四月の終わりの夜は、暑くも寒くもない。空には薄い雲が残っていて、高層ビルの灯りが、頭上を灰色に照らしている。 レインボーブリッジに近づくと、「遊歩道入口」と書かれた看板があり、驚いた。 僕はこの橋を歩いて渡れる

【詩】Glitter of clouds

Capture the moment that never happens again After all sentiments you will see yourself there Better expressions are all around you gotta ignore Keep the directions you will seek yourself there No need to look back you're not the mirror of

【短編】マヨナカ・ランドリー

熱い夜だ。こんな日は、誰も格好つける余裕などない。どのクラブにいる女も男も、シャツの背中に卵型の汗ジミを作ることに精進している。 私も「PLAY!」のハートが胸に入ったポロシャツに汗を吸わせながら、乾燥機が終わるのを待っていた。環七沿いの古いコインランドリーには、イケアの青いバッグがあちこちに引っ掛かっている。都市生活者の汗と汚れが、この場所に集約しているのだ。 スマートフォンの画面右上、時刻は0:29を指している。時おり店の外を通り過ぎるバイクやいかした外車を見るたび、巻

長い手紙 その4 -他者とつくる時間-

1954年8月28日 拝啓  ご無沙汰しています。いかがお過ごしですか? こちらは昨日から、長い雨が降っています。どこか夏の終わりを思わせるような、腕に当たる飛沫が冷たい雨です。私はさきほど郵便局で原稿を送り、林のなかをぶらりと散歩してきたところです。 今は部屋に戻っていて、窓際では、乾かしている服がすこし揺れています。 山林というものは、特に雨の日に美しい姿を見せてくれることが分かりました。私は「うつくしい」ものへの感覚が疎いのですが、そんな私にも感じとることができる

長い手紙 その3 -自分でいること-

1954年8月18日 拝啓  連日のお手紙になります。 今日は頭痛がひどいので(私は頭痛持ちなのです)、ほとんど一日中、部屋で過ごしています。明後日にここを発つ予定ですから、なんとか治ってほしいものです。 昨日の手紙では、私の「信じること」への見解を書きました。繰り返しになりますが、信じることは、あくまで私が中心に引き受けていくことが重要でしょう。そして、その困難さゆえに、「私」とか「自分」は、時として非常に厄介に映ります。今日はその困難さついて考えてみます。 ***

【短歌】Keepメモ

1.インターネット かなしみを 自分の言葉で 語ること できるあなたは しあわせ者さ 2.連歌 息が切れ 最後に残った 灯火は 短歌くらいに 小さくて 文字すらも 切って捨ててる 毎日じゃ 誰の言葉も 理解できない 小説も 読めなくなった この夜に ぽかんとひらく 心の出窓 出し抜けに 入り込んでた 若いきみ 僕の布団で つめたい寝息 夜の床 テーブルに落ちる 月の波 ぬるいコーヒー 胃はまるで石 時刻む 音だけ届く もう深夜 手持ち無沙汰で 一日消える

長い手紙 その2 -信じることこそ-

1954年8月17日 拝啓  お返事をありがとうございました。 あなたも私と同じように、自分なりの「考え」を作るのに前向きになったと聞き、少し嬉しくなりました。私は最近、それが人間にとって必要なことだと感じています。肝心なのは、それをいつでも推敲し、改訂する準備をしておくことです。その態度さえ忘れなければ、あなたはよき指針を手に入れられるでしょう。 今日はもっぱら仕事をしていました。朝から14時まで、東京から送られてきた新しいゲラを読みながら、赤入れをしました。窓際に座