マガジンのカバー画像

Smashing! 佐久間イヌネコ病院

600
佐久間鬼丸獣医師(受)と喜多村千弦動物看護士(攻)とその友人達のお話。 どうぞお楽しみ下さい!
運営しているクリエイター

2022年11月の記事一覧

smashing! それがぼくのこうきしん

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。経理担当である税理士・雲母春己と、そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗は付き合っている。そして二人と一緒に住み始めたのは伊達の後輩で恋人、設楽泰司。 大体週一か二くらいで、僕は一人で過ごすことがあります。伊達さんと設楽くんは獣医さんで、同じ病院で働いているので、けっこうシフトが被ってしまうことがあって。そして今日はまさに被っちゃった日。 確かに一人だと色々寂しいですし、そんな時は白

smashing! しょくりょうじじょうとおれら

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 先日から忙しい波が来ている。ワクチンからちょっとした鼻炎、軽いものだが長くかかりそうな患畜が立て続けに来院。午後休診の水曜、土曜も少しだけ開けて、患畜優先で頑張る日々。 ただそうなると困るのが食事だ。いつもは作り置きをして事に当たるのだが、時間が取れない分インスタントに偏りそうになるところを、佐久間は閃いた。そうだ、鍋だ。大きな鍋で拵えた鍋料理を三度食う。とりあえず今日の試作はチゲ鍋。 味噌と浅漬けキムチ

佐久間イヌネコ病院 luv.78 なれあいたい

縁は異なもの味なもの 二人の米国紳士(!)とお知り合いに そんな体験をつい最近味わいまして 素敵なお客様としておもてなし 数日一緒にいただけでも離れがたい そんな経験は 大人になると少なくなるんよ って 伊達さんが呟いていましたっけ でも僕はとても幸せに思えて もうお会いできないかもしれないけど こうしてちいさなテディベアを拵えて 抱きしめさせてもらって 馴れ合えなかった部分を 補完してるのかもしれません、ね /雲母春己 ーーーーーーーーーーーーーー 佐久間イヌネコ病

smashing! ねつとつめたさのはざま

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人だ。 「伊達さんと二人で旅行来たの初めてですね」 「そういやそうね。出張みたいな時はあったけどね」 あいつは結構クジ運持ってますから、設楽が弟の泰良からもらったチケットは、地元だが温泉旅館での一泊二日。雲母が仕事で来られない分、帰りは美味いものを山ほどお土産に買ってきますということで話がついている。設楽は昔から山ほど(?)来ている馴染みの温泉施設、それこそ併設のボウ

佐久間イヌネコ病院 luv.77 髪の隙間から

何年かぶりに短めに髪切った。襟足は死守した。ピアスが引っかかってアレだったのと、前髪下ろすと視界が逆に開ける、ってことに気づいたから。 隙間からね、死角なしで見えるんだよね。 いつものヘアサロン(サロンて言い方どうよって思わない?)の担当の子がものすごく張り切ってシヌかと思うくらいにカットに時間かけてた。3時間。丁寧なのは嬉しいけどね。 そしたら早速院長が店に来てくれた。喜多村くんもなんかいたけど気にしない。髪型も褒めてもらえたし、新しくブレンドしたコーヒーも気に入って

smashing! かれらとすすむそのさきに

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人。伊達は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己とも恋人同士だ。 年末は忙しい。どんな職業もそうだろうけど、オレの動物のお医者さん業のほかにも実家からけっこうな数の呼び出しくらう。それが年末。 月初めにけっこうな連勤だったせいか、早めの冬休みみたいに休みが取れた。クリスマスやなんかに向けて作り置きとか支度しようと思ってたら、恒例の実家からの指名が入っちゃったわけ

smashing! これもあれもいっこかし

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 午前の部最後の患畜ネコちゃんは軽い鼻炎、わかるよ俺もシーズンはひどいんだ、佐久間がまるでヒトに対するようにそのネコちゃんと会話しているのを見て、飼い主さんらが笑っている。 待合室を軽く掃除、消毒、出入り口を施錠し、喜多村と佐久間は必要なデータ入力等を終え、そのまま二階の住居へ。昼食の準備をしようと冷蔵庫を開けた喜多村は小さな声を上げた。酒と調味料以外はほぼ空。どした千弦、佐久間は後ろから覗き込み、力なく答え

smashing! こころをみたすびみを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。彼は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己と、伊達の後輩・設楽泰司の恋人。 何でもかんでも用意周到に、が俺の信条だったけど、俺の浅はかな謀なんてのは全く通用しない時が来る。心が通じ合った相手、彼らは言葉よりも先に俺の本質を理解する。 今日は定時あがりだったんで、平屋の方に戻ったらなんと雲母ハルちゃんが出迎えてくれた。ここんとこ忙しそうだっ

smashing! ウーでバーなかいきんびに

去年うっかり忘れていたこの日、そう。ボジョレーヌーボー解禁日。スケジュールにもちゃんと組み込んで、ちゃんとお店でも通販予約。限定のハモン・イベリコも用意。完璧です。 それなのに何故僕は絶賛データ入力が終わらないんでしょう絶賛。 そう、ちょっと油断して後回しにしていた件が急ぎのアレにトランスフォームして卍解しちゃったんですよアレレ何言ってんのかわかんなくなってますね、今日は流石にコワーキングスペースじゃ収まらないので(インナーボイスが)防音設備の整ったホテルでお仕事。ついス

smashing! きみとおれのベクトル

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。彼らの友人、小越優羽と結城卓。彼らは同性で恋人同士。小越は売れっ子の若い庭師。元不動産会社エリート営業だった結城は、小越と一緒に暮らしている。 日が落ちるのが早くなった。マンションの一階専用庭。結城は猫6匹に繋いだリードを手に空を眺めていた。今日は小越が早目に帰宅できる、そうメッセージが入っていた。年末に向かって忙しくなり始めた庭師の小越優羽は、それでも疲れの色も全く見せず毎日を元気に過ごしている。 小散歩を

smashing! それぞれがあいのスタイル

夜勤明けでペントハウスの方に帰ったら、ウチの兄さんら二人が半裸で重なり合って爆睡してた。酒入れすぎて事に及ぶ前の未遂かと。上掛けもなしで何してんですか綺麗な兄さんと可愛ゆ兄さんは。風邪引くでしょいくら空調効いてても。そのへんにあったブランケットを掛けようとしたら伊達さんが目を覚ました。 あ帰ってたんかおかえりい、うわ半目ちょいぶすっ…可愛いな伊達さん。だいぶ呑みましたね、そしたら、そんなことないよう微発泡だもん。意味のわからない返しに、ようやく雲母さんもお目覚め。二人で風呂

smashing! このよのごくらくはきみ

季節のフルーツは雲母の好物のひとつだ。この時期は特に柑橘系が美味しくて、水晶文旦やハニーライムなどの珍しいフルーツが冷蔵庫に常備される。伊達の弟が実家で営んでいる果樹園からはもちろん、家の近隣のフルーツ農家からもかなりの量を仕入れたりと、伊達は雲母のために日々フルーツを欠かさないようにしているのだ。 冬の近いこの時期はどうしても、雲母の仕事が忙しくなりやすく、朝早かったり夜遅かったり。それでも出会った頃よりはましになった。雲母が二人と一緒の時間を作りたいと、大まかなスケジュ

smashing! ゆだねられるしふくの

何がきっかけかはわからないが、オレは大歓迎なんですが、伊達さんがやけに積極的になる時がある。残業が長くなったり、運転中に急に思い出すことがあったりとかなんだろうか。少し口数が増えて、機嫌が良くなる。良く見える。不機嫌を表に出さない人なので初めは気づけなかった。 飯食って風呂入って、一杯やったりしてオレの部屋に雪崩れ込んでベッドの上で大の字になる。伊達さんが寝転がるからいつも前もってベッド周りは整えてあるのを知ってか、欲しいとこにちゃんと水とか置いてあるねえ、そんな細かいとこ

佐久間イヌネコ病院 luv.76 ながれにのっかる

何でもそうなんだが、気づいたらここに俺はいた、そう言う時は大抵いい流れに乗っかってるんだ、和尚やってる達丸兄さんがよくお話会、説法?の中でも言ってるやつだ。 心地よい環境、以前の俺にとっては想像もしていなかった。病院を開業できるなんて思ってなかったし、何より千弦と一緒に暮らせるだなんて、昔の俺が聞いたら呪われるかもしれない。呪わないけどさ。きっとどうやって?って聞かれるだろう。自分の性癖も好きな世界も、全部覆い隠してしまおうとさえ思ってたあの頃の自分に。 でも俺はまだいろ