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smashing! しょくりょうじじょうとおれら

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。


先日から忙しい波が来ている。ワクチンからちょっとした鼻炎、軽いものだが長くかかりそうな患畜が立て続けに来院。午後休診の水曜、土曜も少しだけ開けて、患畜優先で頑張る日々。

ただそうなると困るのが食事だ。いつもは作り置きをして事に当たるのだが、時間が取れない分インスタントに偏りそうになるところを、佐久間は閃いた。そうだ、鍋だ。大きな鍋で拵えた鍋料理を三度食う。とりあえず今日の試作はチゲ鍋。

味噌と浅漬けキムチで匂いを緩和し、朝から鍋。プラス白米。佐久間も喜多村も大好きなので何の問題もない。朝診後の昼食も鶏肉や豚肉を追加し、鍋。そしてだいぶ煮詰まった頃合いの終業後、ここに投入されるのはウィンナーやさつまあげ、そして麺。最終進化系は軍隊風プデチゲである。

「これが一番旨い」
「旨いダシ全部出てるもんな」

土鍋をさっと洗えば片付けも楽。明日も鍋だから干しとけばいいし。明日とんこつはどうですか院長、いいねえ喜多村くん。冷蔵庫は冷気が効きすぎるくらいにスカスカ。でもなんとその中から冷凍ヤンニョムチキン(大容量)発見。今夜の肴がゴージャスになった。先日伊達が手土産に持ってきたお気に入りの美意延年。もったいないけど燗つけちゃおうか、こうしてプチ贅沢な晩酌が始まる。

一体どこにいたのか、犬のリイコがひょっこりと現れ、自分のおやつボーンを差し出してきた。これ食えってことかな、いいやつだなリイコ。喜多村は感極まりかけたが、リイコに心配掛けるってのはよくないよな、リイコの頭を撫でながら、そう佐久間に呟く。

明日は午後から必ず買い出しに行こう、車出して広くて大きな例のショッピングセンターで冷凍寿司とかティラミスも仕入れよう。ご飯がちゃんとしてないと俺ら毎晩キスだけになっちゃうからな、喜多村の力説に、佐久間がちょっといたたまれない感じで目を逸らす。

明日買い物行ったら直帰だからな、Lのつくとこは行かないからな。そんな佐久間に無言の圧を掛け続ける喜多村。圧が暑苦しい、圧だけに。目力ってこんな時使うもんじゃないと思う。なのになんでこいつは無駄にオトコマエなんだろうか。解せん。そしていつものように折れる佐久間。

わかった、でも家でゆっくりのほうがよくないか?

謎が謎を呼ぶ謎の食糧事情。佐久間と喜多村の食欲はやはり、ピーー欲とも直結しているらしい。そりゃ皆そうだけどね。



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