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smashing! ねつとつめたさのはざま

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人だ。

「伊達さんと二人で旅行来たの初めてですね」
「そういやそうね。出張みたいな時はあったけどね」

あいつは結構クジ運持ってますから、設楽が弟の泰良からもらったチケットは、地元だが温泉旅館での一泊二日。雲母が仕事で来られない分、帰りは美味いものを山ほどお土産に買ってきますということで話がついている。設楽は昔から山ほど(?)来ている馴染みの温泉施設、それこそ併設のボウリングも流れる温泉プールも小さい頃にラーニング済である。

昼過ぎに着いて速攻露天入って飯食って内風呂入ってサウナと露天入っ…いいかげん湯当たりする、温泉あるあるルーティンを延々と繰り返す。夜にはすっかりいい感じに疲れて、豪華ななんとか御膳も堪能して、部屋でお高い日本酒をゆっくりと頂くのだ。そしたら案の定、酒に弱い伊達がお猪口2杯で寝落ち寸前。

「んあ~回るわあ今日…しだらねむいいい」
「あんた何回風呂とサウナ往復したんですか」
「でも酒おかわり」

ダメです寝ちゃうから。設楽が言うが早いか伊達は側に敷かれた布団に転がった。呑まないんなら寝るう、ぐんにゃりと手足を投げ出して何やらぶつぶつ言っている。設楽はテーブルの上を簡単に片すと、伊達の脇に収まるように横になった。風呂疲れのせいか、すこし熱く感じる。はだけた浴衣の裾、足を絡めて覆い被さるように。

手、足、露になった素肌に自分のそれで触れ、滑らかな感触を味わう。体は熱いのに指先は少し冷えている。流石にこの時期は布団掛けないとな、掛け布団を探ろうと起き上がる。眠ったと思っていた伊達の腕が、設楽の肩先に触れる。くっついて寝るのいいねえ、好き。とろんとした目に映る自分の顔が、ちょっとだけ照れが入ってるように見えたのは、部屋の薄暗さだろうか、それとも。

布団ごと伊達の上に被さって、それでも体重を掛けすぎないよう慎重に、体を触れ合わせて眠りに入る。

うるさく響く、それは自分の心臓の、音だけ。




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