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smashing! こころをみたすびみを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。彼は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己と、伊達の後輩・設楽泰司の恋人。


何でもかんでも用意周到に、が俺の信条だったけど、俺の浅はかな謀なんてのは全く通用しない時が来る。心が通じ合った相手、彼らは言葉よりも先に俺の本質を理解する。

今日は定時あがりだったんで、平屋の方に戻ったらなんと雲母ハルちゃんが出迎えてくれた。ここんとこ忙しそうだったのに。急な予定変更でまとまったお休みがとれたんです、あら今日は割烹着じゃなくてカフェエプロン。ハルちゃんだったらバスタオル巻いただけでも格好いいんよね。えっと、タオルだっけ?なんの話だっけ?

今日は僕がご馳走を作りますから、お二人は座ってらしてください。お二人?そしたら今の今まで俺しかいなかった筈の居間、しかも隣に御意、って設楽がいんじゃん。うわもお前すっげビックリすんじゃん心臓に悪い気配消さないでえ、オレなーんもわかりませんみたいな顔どこで覚えてきた。伊達さんの後自動追尾してきました、あのでっかいハマーで。そんなバカな。

ささ着替えてこ着替え。設楽をせっついてそれぞれの部屋へ。台所から聞こえるハルちゃんの歌声。俺あれ絶対○○だと思うんだけど、いえあれは□□□□かと。憶測は憶測でしかないから、後でハルちゃんに聞いてみるとして。シャワー浴びようってなって二人でざっと汗を流す。ハルちゃんディナーの前なもんでそういう流れはなしで、なんか合宿みたいに雑にシャワー済ませる。

汗流しただけで人間こざっぱりするもんだね、心なしか俺らキリッとしてない?そうですね早く行きましょう、設楽にスルーされながら二人で居間に。いい匂いと思ったらすごいね牛ヒレステーキが、周りをカリカリにしてキャベツとか具材も挟んでサンドウィッチ。きっちり綺麗な四角、ちゃんと層を成してるとこにハルちゃんのこだわりを感じるよねえ。ハルちゃんもようやく席に着いて、いただきます。

あとローストビーフ、うまくできたね柔らかいわあ。マッシュポテトも。肉が肉呼ぶ肉祭りなのかな?肉好きの設楽の目が据わってる。これ韓牛ですか?あそういやそんな感じ。ハルちゃんがびっくりして、お二人にはわかるんですね!と嬉しそう。お得意様のお肉屋さんセレクトらしい。そんで重めの赤、ヴェガ・シシリアを出してくれたハルちゃん。ソムリエよねウチの。めったに食えない韓牛出してもらえて、しかも設楽並みに調理がうまくいってる。

すごいね忙しい中でも、好奇心の赴くままに出来ることをどんどん広げてる。こういう子だから余計に手放せない。時としてそれがハルちゃんや設楽を縛ってはいないか、ふと考え込むこともあって。そんな時は何故だか二人にはお見通しで、俺の考えを見越すどころかあさっての方向に話をぶん投げながら、揺るぎない眼差しで受け止めようとしてくれている。言ったでしょオレも雲母さんも、伊達さんの好きなように、って。

それで俺はこんな美味いものを味わいながら、もっと希少で崇高な美味で心の中を満たすんだよ。


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