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福岡に唯一「勝った」と思えたこと。

福岡に出張で訪れたのは、
もうずいぶん前のことに感じる。


北海道うまれ北海道育ち、32歳になった現在も、北海道に暮らす生粋べらんめぇの北海道サイボーグの私である。


福岡には3日間滞在したのだが、初日に福岡空港に降り立った私は、博多駅前のホテルに移動した。


福岡空港は福岡市内の中心部にあり、
空港から博多駅まではわずか5分程度。


札幌駅から新千歳空港までは40分以上かかるわけだから、体感時間として5分はとにかく不思議な感覚。

さっき空港に着いたばかりなのに、10分以内に中心ターミナルの博多駅に辿り着いているではないか。

「は? もう着いたの?」

思わず口をついて出る。



ホテルに荷物を置き、はじめての福岡をちょっと散策してみよう、と思った。

福岡に対する新たな事前知識は一切仕入れず訪れたので、私としては福岡という街がどんな構造でできているのか、市街地、繁華街はどうなっているのか知りたかったわけである。


そこで感じた札幌と福岡の違いは、以前書いた通りだ。


思ったのは、博多駅の大きさ。でかい。
それから中洲からの天神地区。

繁華街はどこまでも広がっているように見え、福岡が札幌と同じくらいの規模感だと思っていた私からすると、ハリセンで頭をパコンと叩かれたような衝撃だった。


おまけに福岡市長は優秀だと聞く。


アナウンサー出身の戦略的な市長が音頭をとり、天神ビッグバン、博多コネクティッドなどの標語を用いて、街の再開発に熱心なようだ。

ビッベーーーン!


企業誘致、スタートアップ企業への出資にも熱を上げていると聞く。


我が街、札幌市長の顔がちらつく。眼鏡の札幌市長だ。なるほど、やはりその自治体のトップが改革を断行しなければ、街というのは大きくは変わらない、ということか。

勉強になるぜ。



ひとしきり福岡の街を散策した私は、満足してホテルの部屋に戻った。夕方すぎだ。


この胸に去来したのは、どうしようもない敗北感。札幌と福岡はこの国の中では兄弟みたいなもんでしょ、同じ穴のムジナさんでしょう、と思っていたのに、そう思っていたのは私だけで、実際は大きな差がある。



まいったなぁ。



と、思ってホテルの部屋でテレビをつけた。次に調査すべきは福岡のローカルテレビ局の動向。どんな番組が放送されているのかをチェックしたい。

土地それぞれのCMなどを見たり、どんなニュースが夕方の情報番組で取り上げられているのかを確認したい。

なぜなら、この福岡出張は仕事で来ているからだ。

学ぶ必要があるし、理解する必要がある。




夕方の情報番組を見ていると、
地元九州のブランド牡蠣が特集されていた。

その牡蠣の名前をメモすることはすっかり失念したのだが、夕方のワイドショーでは、ブランド牡蠣がどれだけおいしいかを発信している。


仮にブランド名を、筑豊無機牡蠣ちくほうムッキーガキ(仮名)としよう。


漁港で中継するレポーターが言う。


「ご覧ください、これが筑豊無機ちくほうむっきー牡蠣です!」


スタジオのアナウンサーたちがワイプで驚いた顔をしている。


「この牡蠣はブランド牡蠣でして! もうプリプリで大きくて! ほら!」


ワイプには満面の笑みを浮かべるアナウンサー。


「それでは食べてみます! あむっ!」

「……う〜ん! おいちい〜!」


スタジオにカメラが戻ると、アナウンサーたちは「すごいですねぇ、筑豊無機ちくほうむっきー牡蠣!」と喜んでいた。



この様子をビジネスホテルの一室で1人さみしく、福岡というメガシティへの敗北感に打ちひしがれていた私はどう見たか。


……

..

.

勝った。



おいおい、この大きさの牡蠣に驚いているのかい?

クククク。

甘い、甘いよ。牡蠣も甘いが、全てが甘い。

こっちは北海道だよ。


厚岸あっけしの牡蠣も、サロマ湖の牡蠣も、松前桜祭りで出てくる牡蠣も、この筑豊無機ちくほうむっきー牡蠣の大きさの3倍はあるってもんだよ。


「大きさで勝負してないんです。味です」って?


甘い、甘いよ。牡蠣も甘いが、全てが甘い。

味もすごいんだよ。ここは譲れない。

博多駅の大きさも、空港の近さも、再開発の勢いも、市長の力量もいいよ。そこは譲る。負けでいい。全然いい。喜んで負ける。


だが、牡蠣だけは譲れない。

(牡蠣って漢字で書けなくね?)



牡蠣だけは譲れないんだ。

ついでに言うと広島にも負けない。広島は牡蠣の生産量で日本一だと聞く。それはいい。そこは譲る。全然譲る。


「広島が通るから道を開けろ」

とイマドキの若者に言われなくても譲る。



裏を返せば、ここしか福岡に勝ってない。


というか、


こういうのは勝ち負けではないと思う。


<あとがき>
牡蠣を食べるとき、特に生牡蠣を食べるときの人間の表情って、幸せそのものみたいな顔して食べますよね。「ズルっ、あむ、むしゃむしゃ……うんまぁ」って必ず言ってます。何度も言いますが、福岡は本当に素晴らしい。バランスをとるために書きますが、筑豊無機無機ちくほうむきむき牡蠣、いつか私も食べたいです! 今日も最後までありがとうございました。

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