見出し画像

【営業ノウハウ】好きです、付き合ってくださいが言えない営業マン。

前職時代は人材業界でコンサル営業をやっていた。前々職時代は新聞広告の代理店で営業をやっていた。現在は生命保険外交員としてこれまた営業職をやってしまっている。営業は相手に決断を求めなければならない仕事である。

営業あるところに決断ありだ。

前職の人材業界時代は、少なくない部下がいた。週に1回、部下と面談をしては「いまどんなことに困ってますか?」と一人一人に質問していた。

よくある相談は

「なかなか契約が結べなくて…」

であった。

そういう相談をされた時、私の口から答えを言うのは簡単だけれど、自分で気づいてもらった方がその人の身になると思って、具体的にどうしたらいいかは教えないようにしていた。そうあることが正しいと考えてるんだと思われる。

こう書くとまるで私が熟練の営業マンかのように映るけれど、そうではない。たまたま人よりちょっとコミュニケーションについて考えるクセがついているだけ。上には上がごまんといる。いや、ひゃくまんといる。


「なかなか契約が結べなくて…」


と相談してくれる部下たちに対して、私がどんなアドバイスをしていたか。今日はそれを書いて、全国の悩める営業マンやコミュニケーションに悩む方々の助けになればと願ってこの記事を書く。



「なかなか契約が結べなくて…」

「それは悩みますわね」

「えぇ」

「どんな問題があるんでしょうね」

「うーん…」

「ところで、〇〇さんは誰かを好きになってお付き合いをしたいと思った時、どんな風に告白をしてきましたか?」

「え、それはまぁ…」

「続けてくれたまえよ」

『好きです、付き合ってください』じゃないですかね」

「おぉ、ですよね。私もです」

「は、はぁ…」

「結構勇気が必要っすよね」

「そりゃまぁ」

「ドキドキするでしょ」

「えぇ、ドキドキしますね」

「それと同じこと、商談の時に相手に言えてる?」



アドバイスはこれだけだ。

契約が取れない営業マン、上司を納得させられずに悩む部下諸君に問いたい。「好きです、付き合ってください」と言えているだろうか?つまりは、やってほしい行動を断言して伝えているか否か、である。

「あ、あの、多分好きなので、つ、付き合ってくれませんか?」ではダメだ。相手に委ねてはダメだ。

「私と付き合うとこんなメリットがあって、こんなことをします。だから私と付き合ってみませんか?」もダメだ。メリットを言いすぎると引かれる。

シンプルに「好きです、付き合ってください」と言い切る必要がある。

営業の世界ではこれを「クロージング」と言う。

これだけで世界が変わる。

やってほしいことを口に出して相手に伝える。

言い切る。

そして、言い切った後は
何も言ってはならない。

黙って相手を見つめる。

「好きです、付き合ってください」

「…」

(…やばい、断られる!あわあわ!)

「わ、私と付き合うと、い、今なら車に乗り放題で、毎月ディズニーランドに行けるし、プ、プリンスホテルでディナーもできるし(あたふたあたふた)」

これでは断られる。

言い切った後は黙る必要がある。
なぜなら相手は考えているから。
黙って思考を整理整頓しているのだ。

思考の邪魔をしてはならない。



営業界隈で有名な本がある。

フランク・ベドガー氏が50年以上も前に書いた営業に関する名著中の名著「私はどうして販売外交に成功したか」である。むかし営業に困っていた私はこの本を読んだ。するとこの記事で書いてあるようなことが書いてあった。


●クロージングは言い切る。

●沈黙を貫け。



即実践した。

以降、商談相手は面白いように決断してくれるようになった。

この本に出てくるあるエピソードと全く同じ話を私も体験したことがある。言い切ることと沈黙を守ることの大切さが骨身にしみてわかった経験である。



前職時代、札幌市内のある途方もない大企業と商談していた。商談相手は女性役員で何度も何度も商談を繰り返したが、なかなか契約がまとまらなかった。

納得はしてるんだけど、何かが煮え切らないらしい。決断できない方だった。

「うーん、どうしたもんか」と悩んだ私は、上記の本を読んでその中に書いてあることを実践した。


その日、私は契約書を持ってその会社に訪問した。それまでは契約書を持って行っていなかった。なんか嫌で。来る日も来る日も「商談」をしていたのだ。でもその日は持って行った。


「前回、前々回とお話をしてきましたが、懸念点はありますか?」

「いえ、様々なお話を聞きましたから…」

「ということは懸念事項はないということですね」

「そうですね」

「では今日は契約書をもってまいりました。御社の情報がここに全部入力してあります。あとは印鑑を押していただくだけです。ここに印鑑を押してください。今、ここでです」

「…」 

「…」

「…」

「…」


女性役員は何も言わず、すっと席を立った。

「社長はいるかしら」

そう言って部屋を出て行った。数分後、戻ってきた役員の手には社判が握られていた。



晴れて契約を結んだ帰り道「こんな簡単なことだったんだ」と妙に拍子抜けしたことを覚えている。こんな簡単なことが出来ていなかったんだ。




せっかくだから、
営業ノウハウをもう一つ。


相手が決断をする前は、営業マンは弱者で、相手が強者だ。相手に優位性がある。営業マンは立場が下であることが多い。

ところが相手が決断をした後というのは不思議なことに、この立場が逆転する。相手は弱者になり、営業マンが強者になるのだ。

すると、相手はどう思うか。


不安なのである。


「本当にこれでよかったのかしら」


恋愛もそうだ。

告白をする前の男性は弱者で、された側は強者である。告白された側の相手が優位な立場にある。

付き合った直後、相手はどうなるか。

不安なのである。

「本当にこの人をパートナーにしても大丈夫なのかしら」


だから、告白した側、あるいは営業マンはそのフォローをしなければならない。相手が素晴らしい決断をしたことを讃えなければならない。


「難しいご決断をありがとうございました。なかなか出来る決断ではありません。今後きっと課題が解決されるよう、誠心誠意取り組みますので、懸念があればなんなりと」


恋人であっても同じだ。


言葉と態度で誠意を示す必要がある。



テクニック論に走ってはいけないが、思うに「本当に素晴らしいサービス、素晴らしい人格があり、相手を思いやれるならば、これらは自然にできる当然のこと」である。



好きです、付き合ってください。

黙る。

そして決断を賞賛する。


やってみよう。






〈あとがき〉
偉そうなことを書いていますが、やっぱりいまだに「好きです、付き合ってください」の瞬間は緊張します。逆に言えば緊張感がなくなってしまったらおしまいです。営業の世界ではこの言葉を言うこともなくスムーズに受注してくる猛者がいますが、そのノウハウについてはまた今度書いてみようと思います。最後までありがとうございました。






この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?