心臓と会話ができたなら。
いつだったかこんな疑問を持ったので、
妻に聞いてみたことがあった。
「ねぇ、心臓ってなんで動くの?」
調べてみると、心臓にはとある筋肉があるらしい。その筋肉は、脳からの指令を受けずに独立して収縮運動を繰り返している。だから心臓は動く。
わかるようでわからない。
妻に聞く。
「え、だって、家電とかは電気で動くわけじゃん」
「うん」
「そこに置いてあるクマの人形は動かないよね」
「動かない」
「でも、動く仕組みを機械で作って、電池さえ入れれば、動くよね」
「たぶん動く」
「てことは、電池が原動力じゃん」
「うん」
「え、でも、俺たちの身体には電池入ってないじゃん」
「入ってない」
「じゃ、なんで、俺たちって動くの?」
「血じゃない?」
「血かぁ」
飛行機は、飛んでいるから落ちてこない、みたいな、卵が先か、ニワトリが先か理論みたいな感じ。分からない。
「え、だって、ここに置いてあるこのボールペンは、勝手に動かないよね」
「動かない」
「じゃあ、この腕時計は?」
「動いてる」
「動いてるよね、てことは、この腕時計を作った人ってのが、たしかに存在することになるね」
「そうね」
「じゃあ、俺たちは?」
「?」
「別に俺たちは誰にも作られてない(たぶん)のに、自分で考えて、動いて、なんかいまも喋ってる」
「しゃべってる」
「しかも、心臓は? 俺たちの胸の中で、俺たちの意思とは関係なく動き続けてる」
「そうね」
「てことは、これは…」
「どうやら、神がいるわね」
「そうデザインした超越者がいるな、これ」
「ずっと、なに言ってんの?」
……
…
と、なると、心臓に感謝したくなる。
だって、私たちが寝ている間も動いてる。全身に血を巡らせるために24時間休まずに。当たり前に動く存在、それが心臓。なんだかそこに魂の存在を感じるような、科学のような。電気信号のような。
で、
もしも、胸にパカッと開く扉がついてたとして。
心臓が、かわいらしいキャラだとして。
話しかけると答えてくれたとしたら。
それも元気に。
(パカッ)
「え、どうしてだい?」
「おぉ!そうか、そうか!
いつもすまんね! なんか欲しいものある?」
「さすが、心臓は無欲だなぁ!」
(パカっ)
心臓はよくしゃべるなぁ。
すごいなぁ。無欲だなぁ。
この、当たり前のことを当たり前にやる感じ。
無欲で、特に誰からも褒められもせず、
でも、黙々と動くこの感じ。
何か大きな存在に突き動かされてるこの感じ。
いいですねぇ〜。
なるほど。
もしも将来、娘ができたとして。
その娘が結婚相手を連れてきたとして。
心臓みたいな人だったらいいなぁ。
「心臓系男子」って、流行らないかなぁ。
流行らないなぁ。
◾️マジで人体って不思議すぎて神を感じる
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