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季語哀楽

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季語をテーマにした投稿まとめ。 365日が目標。
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#創作

花筵

研究室の仲間と花見に来ていた。新歓も兼ねた、お酒も飲めるやつ。
桜は既にもう散り始めていて。ピンクの地面に敷いたシート。僕の隣には二つ下のあの子が座っていた。
初めて配属されてきた時から、可愛いなと思っていたあの子。

どうやら彼女はあまりお酒が強くないらしい。ほろよいの缶酎ハイも空け切らないまま、頬は赤みを帯び、心なしかいつもよりにこにこと笑っていた。僕の方も、久しぶりの楽しいお酒の席に、かなり

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花冷え

花冷え

今夜、蛍烏賊とりに行こうと思うけど来る?

突然のLINEに、まだ職場にいた私は浮き足立つ。前に行きたいと言ったの覚えててくれたんだと言う喜びと、明日も仕事の最中、ちょっと流石に急すぎやしないかと社会人の理性が働く。されど、いまだ見たことのない景色への好奇心に負けた私は、結局二つ返事でOKしてしまった。

満開の夜桜を余所に、私たちは深夜の海へと向かった。
いわゆる、花より何とやらである。

暖か

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花曇 #月刊撚り糸

花曇 #月刊撚り糸

曇天に満開の桜を見るにつけ、ある友人の言葉を思い出す。

「桜は正直嫌いやな。咲いてる期間は短いし、青空が背景じゃないと色が映えん」

彼女は、大手制作会社で映画やドラマ撮影に関わる仕事をしていた。私たちの地元がある北陸は、日本一曇りが多いと言われる地域である。そんな中で育ったものだから、私に言わせれば雨の降っていない天気は全て晴れだし、桜に関しても、空の色まで気に留めてはいなかった。さすが異なる

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流氷原

流氷原

”流れる”ように、”表現”が、”浮かぶ”。

小説家パッケージプラン。
俗世間から開放され、
静かな環境は執筆に最適です。

大手旅行会社が、北海道の流氷原にて新鋭のポッドを宿にした新プランを打ち出した。電気は太陽光で賄い、物資はドローンを使ってのやり取りが可能。一面の氷の世界を散歩すれば、アザラシなどの野生動物に出会えたり、室内からでもフィッシングを楽しんだり。
滞在が短いと割高だが、長く居れば

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