Kichi_Theatre

武蔵野市の公共劇場、吉祥寺シアターについて。劇場スタッフがお届けします。

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マガジン

  • 吉祥寺ダンスLAB.vol.5『千年とハッ』

    吉祥寺ダンスLAB.vol.5『千年とハッ』(2022年12月8日・11日)の上演にまつわる情報をお届けします。公演情報は↓ https://note.com/kichi_theatre/n/n25434dd94165

  • ベンチのためのPLAYlist

    ベンチのためのPLAYlist 作品情報、アーカイブなどを纏めて掲載します。

最近の記事

利口な女狐と森の声−『モリンネ』リハーサルレポート−中本登子(乗越たかお【舞踊評論家[養成→派遣]プログラム】第二期受講生)

 10月11日(金)~10月14日(月・祝)に吉祥寺シアターで上演する吉祥寺ダンスLAB. vol.7 関かおりPUNCTUMUN 新作公演『モリンネ』。本作のリハーサルレポートを、乗越たかお氏の舞踊評論家[養成→派遣]プログラム二期生の中本登子さんに執筆いただきました。ぜひご覧ください。  ――――――――――――――――――――――――――――――――――    振付家、関かおりは「歌(声)ってすごく動物的だなと思う」、「歌うことは呼吸と繋がっていて、ダンスの身体とは次

    • 【稽古場レポート】創立70周年の劇団青年座が送る、別役実の傑作不条理劇!

       2024年9月28日(土)より、吉祥寺シアターにて劇団青年座『諸国を遍歴する二人の騎士の物語』が開幕を迎える。本公演は青年座創立70周年記念公演第3弾で、劇団を代表する名優である山路和弘、山本龍二がダブル主演を務める。節目となる年に満を持して挑む『諸国』。一体どのような作品になるのか。私は先日、本作の稽古場にお邪魔してきた。緊張しつつ訪れたが、フラットな雰囲気で着実に作品を作り上げる場だった。その様子をお届けする。  稽古場を訪れると異様な格好の人物がいた。騎士の従者1(

      • なぜ今『リア王』か~【稽古場レポート|オペラシアターこんにゃく座】

         2024年、私の観測している範囲では4つもの『リア王』が各地で上演される。そんな中、吉祥寺シアターでもオペラシアターこんにゃく座が同作を上演する。シェイクスピア悲劇の最高峰とも言われる作品ではあるが、なぜ今こんなにもブームになっているのか。先日私はこんにゃく座の稽古場にお邪魔した。その中で『リア王』が求められる理由の一端を掴んだような気がする。  この日は楽士が揃った初めての稽古だった。オペラというとオーケストラがいる様子を想像するかもしれないが、こんにゃく座のオペラはコ

        • 【稽古場レポート】アマヤドリ版「十二人の怒れる男」!これぞ真骨頂といえる超高密度会話劇『牢獄の森』

          8月17日(土)より吉祥寺シアターにて行われる、アマヤドリ新旧二本立て公演『牢獄の森』『うれしい悲鳴』。 2001年の旗揚げ以来、20年以上の間小劇場演劇を牽引し続けてきた劇団・アマヤドリが、”ベスト盤と新譜を同時発売するかのよう”と称する今公演。   本レポートでは小劇場ファンの吉祥寺シアター新人職員が、『牢獄の森』本番1週間前の稽古の様子をお届けします!   ◇◇◇ 『牢獄の森』あらすじ ──この時代において、森は牢獄の役割を果たしていた。かつての島流しのように森という

        利口な女狐と森の声−『モリンネ』リハーサルレポート−中本登子(乗越たかお【舞踊評論家[養成→派遣]プログラム】第二期受講生)

        • 【稽古場レポート】創立70周年の劇団青年座が送る、別役実の傑作不条理劇!

        • なぜ今『リア王』か~【稽古場レポート|オペラシアターこんにゃく座】

        • 【稽古場レポート】アマヤドリ版「十二人の怒れる男」!これぞ真骨頂といえる超高密度会話劇『牢獄の森』

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        • ベンチのためのPLAYlist
          5本
        • 吉祥寺ダンスLAB.vol.5『千年とハッ』
          15本

        記事

          【開幕レポート】「うた」が導く愛の物語『彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-』

           8月2日(金)、舞台作品『彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-』が吉祥寺シアターにて開幕を迎えた。本作は、ローレンス・オリヴィエ賞やトニー賞を受賞した劇作家サイモン・スティーヴンスと、シンガーソングライターのマーク・アイツェルが脚本を手がけた作品だ。演出は、来年2月に世田谷パブリックシアターでサイモン・スティーヴンス作品のダブルビル公演を控えている桐山知也。翻訳は、過去にもサイモン・スティーヴンス作品の翻訳を手掛け、信頼関係を築いてきた髙田曜子が務める。

          【開幕レポート】「うた」が導く愛の物語『彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-』

          【稽古場レポート】19人の俳優が生み出すエネルギー!演劇の醍醐味が詰まったアマヤドリ『うれしい悲鳴』

           8月17日(土)~26日(月)に吉祥寺シアターにて、劇団・アマヤドリによる演劇公演『牢獄の森』『うれしい悲鳴』が上演される。アマヤドリは2001年の旗揚げ以来、20年以上の間小劇場演劇を牽引し続けてきた。『牢獄の森』はAIによって管理される監視社会を描く最新作、『うれしい悲鳴』は劇団史上最高傑作との呼び声高く、アマヤドリ版のロミ・ジュリと言える作品だ。吉祥寺シアター職員による稽古場レポートシリーズ。今回は『うれしい悲鳴』の稽古序盤の様子をお届けする。 18:00  稽古場

          【稽古場レポート】19人の俳優が生み出すエネルギー!演劇の醍醐味が詰まったアマヤドリ『うれしい悲鳴』

          夏、野外劇がアツい!

          突然だが、野外劇をご覧になったことはあるだろうか。 先日、新宿区にある都立戸山公園 野外演奏場跡では、注目を集める若手カンパニー・ルサンチカが太田省吾の戯曲『更地』を上演した。同園では「戸山公園演劇祭」を今年の1月から開催しており、『更地』もその一つだ。 新型コロナウイルスの流行期を過ぎ、人々の気持ちは外に向いている。 もしかしたら今、野外劇がアツいのかもしれない。 私は野外劇が好きだ。自分の日常に俳優が「侵入」し、風景がぐにゃりと歪んで世界の境界が曖昧になる。誤解を恐れず

          夏、野外劇がアツい!

          『彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-』演出・桐山知也インタビュー

           世界が注目する劇作家 サイモン・スティーヴンス氏と、カルト的人気を誇るシンガーソングライター マーク・アイツェル氏による戯曲『彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-』。日本初上演となる本作に、気鋭の演出家・桐山知也氏が挑む。吉祥寺シアターでは、その作品の魅力を発掘するべく、桐山氏にお話を伺った。 ──────────────────────────────────────────────── ──『彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-

          『彼方からのうた -SONG FROM FAR AWAY-』演出・桐山知也インタビュー

          【稽古場レポート】誰もがときめく、圧倒的な「声」の舞台|みきくらのかい『三人姉妹』

          6月8日(土)に武蔵野市民文化会館 大ホールにて行われる、吉祥寺シアター×みきくらのかいによる特別公演。 大人気声優の三木眞一郎さん、江口拓也さん、畠中 祐さんが演じ、オーストラ・マコンドーの倉本朋幸さんの演出でお届けする男性三人の『三人姉妹』。 本記事では“演劇ファン”である劇場職員の目線から、稽古場の様子とともに今作の見どころをお伝えします。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 声が、劇場を圧倒する。 声が伝える、生身の人間の熱量に、客席が飲み込まれる。 昨年

          【稽古場レポート】誰もがときめく、圧倒的な「声」の舞台|みきくらのかい『三人姉妹』

          【開幕レポート】寄せては返す不在と孤独。生と死のあいだの永遠と一日|ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

          慣れ親しんだ吉祥寺シアターの姿はそこにはなかった。常設の客席は撤去され、吉祥寺シアターはだだっ広い空洞となった。空洞には、失ったものを思う寂しさが漂っていた。 それは、本来の姿に還ったという、ただそれだけのことなのかもしれない。私たちが身勝手に意味を与えてきたその空間は、本来はただの空洞だったのかもしれない。だからそれは、不在とは、別れとは、本来は悲しいことではないのかもしれない。だけどどうしても、私たちはかつてそこにあったものに思いを馳せないわけにはいかないのだ。 ミク

          【開幕レポート】寄せては返す不在と孤独。生と死のあいだの永遠と一日|ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

          【インタビュー】「自分達がどういったものをなくしてしまったのか」|ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

          吉祥寺シアターでは3月23日(土)より、ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』が上演されます。吉祥寺シアターこけら落とし公演より沢山の作品を当館で発表し続けている振付家、劇作家、演出家の矢内原美邦さんが、現代の船着き場を舞台に描く現代版『ゴドーを待ちながら』。今回は矢内原さんご本人に作品について伺ってまいりました! ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ―――――では初めに、自己紹介をお願いいたします。 矢内原:振付、劇作、演出をしている矢内原美邦といいます。元々はダンスカンパニーNi

          【インタビュー】「自分達がどういったものをなくしてしまったのか」|ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

          【稽古場レポート】熱量の海を前にして|ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

          吉祥寺シアターでは3月23日(土)より、ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』が上演されます。吉祥寺シアターこけら落とし公演より沢山の作品を当館で発表し続けている振付家、劇作家、演出家の矢内原美邦さんが、現代の船着き場を舞台に描く現代版『ゴドーを待ちながら』。今回は稽古場の様子をお届けいたします! ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 稽古場では今まさにシーンを組み立てていく最中であった。既に大阪公演を終えているが東京公演は出演者が一新されており、改めて戯曲と向き合っていた。戯曲を前に

          【稽古場レポート】熱量の海を前にして|ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

          【開幕レポート】美しい日本語で出会う日本~オペラシアターこんにゃく座 オペラ『神々の国の首都』~

           3月8日(金)、吉祥寺シアターでオペラシアターこんにゃく座 オペラ『神々の国の首都』が開幕した。ラフカディオ・ハーン(のちの小泉八雲)が松江で過ごした日々を描く作品だ。坂手洋二氏が主宰する「燐光群」が1993年に初演した同作を、オペラ化して上演する。オペラシアターこんにゃく座は、[新しい日本のオペラの創造と普及]を目的に創立された。今作の見どころは何といっても、美しい歌唱で紡がれる日本の美しさにあると思う。      ハーン(作中ではヘルン先生と呼ばれる)は地球半周を超える

          【開幕レポート】美しい日本語で出会う日本~オペラシアターこんにゃく座 オペラ『神々の国の首都』~

          五感で味わう初オペラ~オペラシアターこんにゃく座 オペラ『神々の国の首都』~

           オペラというものを、生涯一度も見たことがない。「イエイエ私のような若輩者にはまだ早いのでございます」と、誰に対してか分からないような言い訳をして遠ざけてきた。その理由の一つとして、「恐れ」がある。もし自分が、その作品を理解することが出来なかったらどうしよう、という恐れだ。    私は東京都武蔵野市の公共劇場「吉祥寺シアター」に勤めている。当館では3月8日(金)から、オペラシアターこんにゃく座 オペラ『神々の国の首都』が上演される。本作はラフカディオ・ハーン(のちの小泉八雲)

          五感で味わう初オペラ~オペラシアターこんにゃく座 オペラ『神々の国の首都』~

          【稽古場レポート】劇場からあなたに手渡したい演劇の話とその制作現場の事 / あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』

          吉祥寺シアターの新企画が始動。あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』が2024年2月18日に上演されます。今回は稽古場レポート!少数精鋭で、大切な一瞬のために走る彼らの姿をお届けします。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 稽古場に入ると、皆さんが揃って迎えてくれた。演出の小西さんより「同僚の…」と紹介され、いつも稽古場にお邪魔するのとはまた少し違う、顔見知りであるからか、不思議な緊張感を感じつつ、稽古の様子を拝見した。 稽古場を見渡すと、目の前には四角く囲われた空間があっ

          【稽古場レポート】劇場からあなたに手渡したい演劇の話とその制作現場の事 / あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』

          【インタビュー】劇場とお客様が改めて出会うために / あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』

          吉祥寺シアターの新企画が始動。あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』が2024年2月18日に上演されます。この公演に懸ける思いを今公演の作・演出を務める小西力矢さんに伺いました。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ―――はじめに自己紹介をお願いします。 吉祥寺シアター職員の小西力矢と申します。今回、あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』という公演の作・演出を務めさせていただく事になりました。普段は職員として吉祥寺シアターに務めています。昨年の4月から働いているんで

          【インタビュー】劇場とお客様が改めて出会うために / あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』