【稽古場レポート】誰もがときめく、圧倒的な「声」の舞台|みきくらのかい『三人姉妹』

6月8日(土)武蔵野市民文化会館 大ホールにて行われる、吉祥寺シアター×みきくらのかいによる特別公演。
大人気声優の三木眞一郎さん、江口拓也さん、畠中 祐さんが演じ、オーストラ・マコンドーの倉本朋幸さんの演出でお届けする男性三人の『三人姉妹』。
本記事では“演劇ファン”である劇場職員の目線から、稽古場の様子とともに今作の見どころをお伝えします。

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声が、劇場を圧倒する。
声が伝える、生身の人間の熱量に、客席が飲み込まれる。

昨年行われた三木眞一郎さんと小野大輔さんによる『マクベス』は、それまでの演劇体験を凌駕する、圧倒的な「声」の演劇だった。
1250席超のホールに響き渡るひとつひとつの言葉が、ひとりひとりの観客を包み込む。
やさしく、力強く。しなやかに、艶やかに。

声に溺れる全身が、至上の喜びを覚えていた。
国宝級の声を贅沢に浴び、あまりの多幸感に思わず卒倒しそうになった。
舞台を観ていてこんな感覚に陥ったのは、はじめてのことだった。

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めのまえで発せられる声の、そのすべてにときめいている。

『三人姉妹』の稽古場でこの文章を書いている。
いま、すごくドキドキしている。
三木さんの第一声を聞いたとき、「沼に落ちる」という感覚がはじめてわかった。
「声に恋する」という現象が起こることをはじめて知った。
これはもう、引き返せないかもしれない。

まるでアトラクションのようだ。
次から次へと、入れ替わり立ち替わり現れ出てくる登場人物たちが、三人の男性の声によって立体的に浮かび上がる。
同じ人が演じているはずなのに、つい先ほどまでそこにいたはずの年頃の娘は落ちぶれた老人へと変わっていた。
声を介してもたらされる、イリュージョンショーのごとき極上の世界。
その流れに身を任せるだけで、彼らはどこまでも私を遠くに連れて行ってくれる。

最高峰の技巧を存分に堪能しながら、それだけでは言い表すことのできない「艶」がこのときめきの理由であることに気がつく。
人間の声が放てる限りの魅力をふりまき、ト書きひとつでさえも惹かれてやまない。

「至福の声」というものが存在することを、私は今まで知らなかった。
みきくらのかいは、毎日のように劇場に通い詰める演劇ファンですらも知らない、舞台の新たな魅力を私たちに教えてくれる。
これほどまでに最上級のホスピタリティをもって「声」を堪能させてくれる演劇はおそらくほかにはないだろう。
これでもかというほど手厚いもてなしが、声による豊かな演劇体験のために用意されている。

(余談だが、このホスピタリティは三木さんのあたたかな人柄にも通じるものがあることが、ほんの少し稽古場に顔を出しただけの私にも分かった。しがないいち劇場スタッフにすぎない私に三木さんはあたたかく握手を求めてくださり、私は仕事中でありながら吐血しそうだった。三木さんから稽古場の皆さんに振る舞われたパンはとっても美味しかった)

贅沢の限りを尽くすことが許される、この世の楽園と言ってもいい空間がそこにある。
みきくらのかいの舞台は、演劇が好きであるとかないとか、誰かのファンであるとかないとか、年齢とか性別とか、そういったくくりで間口を狭めたりはしない。
(これまで声の世界をほとんど通ってこなかった30歳男性の筆者がこんな気持ちになるのだから間違いない)

きっと誰もが、その声にときめくことができる、魔法のような体験を彼らは与えてくれる。
どうかその世界にあなたも魅せられてほしい。

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吉祥寺シアター×みきくらのかい 特別公演
『三人姉妹』

2024年6月8日(土)14:00/18:00
武蔵野市民文化会館 大ホール

[原作]アントン・チェーホフ
[演出]倉本朋幸
[出演]江口拓也、畠中 祐、三木眞一郎

予約
・(公財)武蔵野文化生涯学習事業団チケット予約
Tel: 0422-54-2011 (9:00-22:00)
Web: https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/sameShowList?en=389

・ローソンチケット
https://l-tike.com/

公演詳細
https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1006096.html

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