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【インタビュー】劇場とお客様が改めて出会うために / あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』

吉祥寺シアターの新企画が始動。あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』が2024年2月18日に上演されます。この公演に懸ける思いを今公演の作・演出を務める小西力矢さんに伺いました。

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―――はじめに自己紹介をお願いします。
吉祥寺シアター職員の小西力矢と申します。今回、あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』という公演の作・演出を務めさせていただく事になりました。普段は職員として吉祥寺シアターに務めています。昨年の4月から働いているんですけれども、その前は しあわせ学級崩壊 という劇団の主宰をしていました。

小西力矢さん(撮影:Yoshikino)

―――この企画を行う事になった経緯を教えてください。
小西:劇場の空き日程を使って何かできる事はないかなと考えていて。せっかく自分が作劇できるという事で、劇場の職員が自分たちの劇場を使って何か作品を作れるような体制ができれば、それは面白い事なんじゃないかみたいな事を思いまして。
吉祥寺シアターが一個のカンパニーとしての機能を持つというか。職員として勤めているので、いつでもフットワーク軽く演劇を作る事が出来て、どこにでも持っていけるっていうのが凄く劇場として強みになるんじゃないかと思って。そういう新しい公共劇場の在り方というか、そういったものの第一歩みたいなものになったら面白いなと思い、今回作・演出に就かせていただく事になりました。

―――チラシを見て「架空の劇場跡地」というワードが印象に残りました。具体的にどんな所から着想を得ているのか教えていただけますか。
小西:せっかく劇場の中にいる人間が作るので、何か劇場の事を描きたいと思って。劇場にまつわる色んな事に思いを巡らせていたんですけれども、その中で思い至ったのが、ウクライナの事で。
ウクライナにマリウポリっていう都市があるんですけど、そこの劇場が破壊されるって事が2022年の3月にあって。そこは当時避難所になっていた劇場で、沢山の市民が逃げ込んでいて。そこが空襲によって破壊されてしまったんですけど。その9か月後の12月に、今度は劇場の解体が始まって。それでそこに新しい劇場が立つっていう事が行われていて、それは凄いグロい事だなと思って。劇場の事を考える内にそこに思い至って、どうしてもその事を考えずにはいられない、みたいな事があり、劇場跡地でそこに眠る魂について考える、という作品を作ろうかなと考えました。

―――今作は『ハムレット・ハウス』というタイトルですが、シェイクスピアの『ハムレット』はどのように関係しているのでしょうか。
小西:悲劇っていうものについて改めて考えようと思って。それはさっきの話の続きにもなるんですけど、戦争とか極限の出来事が起こっている中で、劇場っていうものはあまりにも無力で、現実の悲劇には太刀打ちできないというのは確実にあって。自分は劇場で働いているので、現実の凄まじい悲劇に対して、劇場で行われる物語としての悲劇には一体何ができるんだろうとか、そういう事をどうしても考えてしまって。悲劇というものに対して改めて考え直す、そういった事がやりたくてこのタイトルにしました。

―――観る前に知っておくと良い事や注目ポイントがあれば教えてください。
小西:自分がかつてやっていた劇団は音楽を多用していて、EDMとかをガンガンに流してマイクで喋るみたいな演劇をやっていたんですね。今回は音楽は使わないんですけど、音楽的なアプローチというものはずっと自分の根底にあって。色んな楽器を使って沢山音を鳴らしたいなと思っています。民族楽器とかメトロノームとか、音楽のフラグメントみたいなものを音楽にせずにフラグメントのまま扱って、解体された音を使って楽しい事をしたいなと思っています。
おすすめポイントとしては、チケットが安いです。とっても安くて、上演時間は60分なんですね。なので気軽に観に来ていただきたいですし、1000円っていうチケット料金は凄く…私たちと出会ってくださいみたいな気持ちがとっても強いです。
なんか吉祥寺シアターが新しい事始めたらしいけどどんなもんじゃみたいな、様子を見に来るみたいな、軽い気持ちで観に来てもらいたいなと思っています。
今回の公演は吉祥寺シアターの意思表明みたいなものだと思っていただきたいです。これがこれからの吉祥寺シアターの姿です、私たちはこれからこういう事をやっていこうと思っています、あなたはどう思いますか、という。そういうスタンスの提示だと捉えていただければと思います。是非軽い気持ちで、吉祥寺シアターの新しい形に出会いに来てもらえると嬉しいです。

―――本日はありがとうございました。

あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』
https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1005924.html

架空の劇場跡地を舞台に描く、60分間の演劇儀式!
一般料金1000円・友の会は500円!

[日程] 2024年2月18日(日)11:00/15:00
[料金] <全席指定>
一般 1,000円/アルテ友の会 500円(前売のみ)/18歳以下 500円(当日要証明書)

【あたらしい劇場プロジェクトとは】
吉祥寺シアターが劇場としての新たな価値を創出する演劇企画。
劇場職員が自ら創作を行い作品を発信することで、公共劇場のあたらしい在り方を提示する。

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