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【インタビュー】「自分達がどういったものをなくしてしまったのか」|ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

吉祥寺シアターでは3月23日(土)より、ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』が上演されます。吉祥寺シアターこけら落とし公演より沢山の作品を当館で発表し続けている振付家、劇作家、演出家の矢内原美邦さんが、現代の船着き場を舞台に描く現代版『ゴドーを待ちながら』。今回は矢内原さんご本人に作品について伺ってまいりました!

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―――――では初めに、自己紹介をお願いいたします。
矢内原:振付、劇作、演出をしている矢内原美邦といいます。元々はダンスカンパニーNibrollをやっていて、吉祥寺シアターがご縁で演劇を始めました。

―――――それまではずっとダンス作品を作っていて、吉祥寺シアターで公演を行う事になって演劇を始められたんですね。
矢内原:そうですね。

―――――早速質問なのですが、今作を書いたきっかけを教えてください。
矢内原:元々は『ゴドーを待ちながら』をやろうと思ったんですけど、著作の問題を確認した所、出演者が男性じゃないとできない、どうしてもそこは変えられない、と言われまして。自分で新しく書くんだったら良いよ、という事になったので、『ゴドーを待ちながら』をベースにしながら全く新しく自分で書くって事にしました。
サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』という作品は、自分達が戦争というもので何もかも失ってしまって、そこでそれでも何かに縋りながら待ち続けなければいけないっていう。時代によって変わってくる作品だと思うんですよね。だからこそどの時代にやるかっていう事が凄く重要になってくるんですけど。
今、戦争がまた再び、世界では始まっていて、それは日本とは全く無関係ではないので。それも考えてやってみたいと思ったんです。ただそれにはやっぱり女性に出演してもらいたいっていうのがあったので。自分で書くんだったら自分がなくした人、物に向けて、自分達がどういったものを実は持っていて、どういったものをなくしてしまったのかっていう事に気が付く様な作品にしたいなと思って書き始めました。

―――――現代版『ゴドーを待ちながら』というアイデアはどんな所から生まれたのですか。
矢内原:『ゴドーを待ちながら』という戯曲自体が好きで、サミュエル・ベケットの作品も好きで、ビデオを観たりとかしていて。実験的な、演劇的なものが多いんですけど。自分が学生の時読んだのと、何十年も経った後に読んだのとでは入ってくるものが違うんですよ。演劇作品が生きている事に直結していくような、サミュエル・ベケットの戯曲ってそうだと思うんですよね。娯楽っていうよりかは、まあ娯楽でもあるんですけど、その中に深い悲しみがあったりとか、自分達は今こういう社会の中で生きているんだなって事に気づかされたりとかするっていう所が凄く魅力的で。
演劇ってやっぱり観ていると、どういう社会情勢の中に自分達が今生きているのかっていうのを気が付く。平和的な、日常的な中にいると今世界でどういう事が起こっているのかって事に気づきにくいんですけど、実は今世界的には凄く大変な事が起こっていて、それに自分達が気づく事ができるっていう部分が演劇にはあると思っていて。そこに稽古している私たちも気づくっていう意味で、この作品と向かい合ってみたかったっていうのがあります。でも結局、出演者が男性じゃないとできないと言われたので。それも多分、変わってくると思うんですけどね。

―――――本作は既に大阪公演が終了しておりますが、東京公演は何か違いや反対に共通点はありますか。
矢内原:台本自体は一緒で、演じる役者が違うんですけど、大阪公演は年齢層が若いんですね。東京公演は年齢層が高いので、そこに言葉の深みみたいなものが加わっているなというのは凄く稽古をしていて思います。何かこの戯曲ってやる人によって全く変わってくるんだなというのは、稽古を通して今実感している所で。凄く良い感じになってます。それは自分が生きてきた記憶とか、年齢が高ければ高いほど、この戯曲の言葉の意味を理解して演じる事ができるし、それは面白いなと思いますし。もう一方で大阪公演は20代で若いので、その言葉の意味を分からないまま走ってしまう、突っ切ってしまうっていう所も真逆で面白いなっていう風に思います。

―――――最後にメッセージをお願いします。
矢内原:いつもと全く違う吉祥寺シアターが見られると思います。2年前かな。『はじまって、それから、いつかおわる』という作品を吉祥寺シアターでやらせてもらったんですけど、その時と同じ様に客席を全てフラットにして空間を大きくして、いつもの吉祥寺シアターじゃない感じを見られるので、是非観ていただきたいなと思いますし、それに映像と音楽と照明も入って凄く美しい空間になるんじゃないかなと思っておりますので、是非劇場に足を運んでいただけたらと思います。

―――――ありがとうございました。

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ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』

〇矢内原美邦が描く現代版「ゴドーを待ちながら」。船を待つ人々の異なる想いが交差し、時のなかで運命の出会いや別れが紡がれる。永遠の船着場で彼らの孤独は謎めいた方向へ向かっていく。

[日程] 3月23日(土)19:30
     3月24日(日)14:00/19:30
     3月25日(月)19:30
     3月26日(火)休演日
     3月27日(水)19:30
     3月28日(木)14:00〇/19:30
     3月29日(金)14:00〇/19:30
     3月30日(土)14:00〇/19:30
     3月31日(日)14:00
〇=大阪公演の出演キャスト
※受付開始は開演の45分前、開場は30分前
※演出の都合上、開演後の入場はお待ちいただく場合がございます

公演詳細ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』|吉祥寺シアター(musashino.or.jp)
ご予約(公財)武蔵野文化生涯学習事業団 ミクニヤナイハラプロジェクト『船を待つ』 - インターネット・チケットサービス (ka-ruku.com)

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