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【稽古場レポート】劇場からあなたに手渡したい演劇の話とその制作現場の事 / あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』

吉祥寺シアターの新企画が始動。あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』が2024年2月18日に上演されます。今回は稽古場レポート!少数精鋭で、大切な一瞬のために走る彼らの姿をお届けします。

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稽古場に入ると、皆さんが揃って迎えてくれた。演出の小西さんより「同僚の…」と紹介され、いつも稽古場にお邪魔するのとはまた少し違う、顔見知りであるからか、不思議な緊張感を感じつつ、稽古の様子を拝見した。

稽古場を見渡すと、目の前には四角く囲われた空間があった。ここもどうやら舞台の上らしい。舞台の上にある舞台。その周りには沢山のメトロノームが置かれている。劇中では実際にメトロノームが動きながら物語が進行するようだ。稽古ではメトロノームを使用していなかったため、その様子は上演を観るまでのお楽しみとなった。演出の小西さんは過去にはポエトリーリーディングの形式を用いて上演を行う等、創作の根底に音楽がある方で、今回メトロノームを使ってどのような空間作りをされるのか大変興味深い。

宝保里実さん(コンプソンズ)

既にアップは済んでいたようで、早速シーン稽古が始まった。稽古は一つ一つ丁寧に、精密に、俳優と演出家の二人三脚で進めていく。とあるシーンでは宝保さんが思わぬ様子で登場し、稽古場全体でまさか、という笑いが起きた。しかし、小西さんはその一瞬も逃さない。宝保さんの動作と言葉、それぞれを分析し、新たな提案を持ちかける。俳優からふと出た表現も見落とさず、作品に組み込んでいく。動作と言葉のそれぞれがパーツになり、編まれていくようなイメージを受けた。終始和やかに進む稽古の中には、無数の発見の瞬間が隠れていたのだ。

升味加耀さん(果てとチーク)

田久保さんと升味さんがお話しているシーンには言葉によって変化する身体が顕著に見えた。そこに音楽はない。メトロノームもまだ動いていない。しかしそこには既に、感情があり、想いがあり、生まれた言葉があった。そしてその言葉は俳優によって発される。発される言葉によって俳優の身体が動かされていく。そこに演出が入り、言葉の色や強弱が変わるとそれに合わせてまた違った動きになっていく。それは身体がリズムにノっている様にも見えて、ここにも小西さんの音楽が流れているように感じた。

田久保柚香さん

「これが悲劇ですか」

『ハムレット・ハウス』台本より
村山新さん

村山さんの声に意識が集中する。舞台の上に乗せられた悲劇は空想か、それとも現実か。創作なのだから空想でしょう。そういった意見もあるかと思う。だが舞台の上には、生きる中で見聞きしてきた悲しい事実が存在していた。話を聞いただけで体の節々が痛みを感じ、動けなくなる。そんな悲しみ。私たちが見ている今が、舞台の上に並べて収められていく。この悲しい現実を語り、残す事ができるのが残念ながら当事者ではなく、周りで見つめる事しかできない私たちであるという事はしばしばある。私たちが語っても良いのだろうかと心苦しくも感じる。それでもこの作品を通して場所や時間の離れた所へ祈る事が出来たなら。この作品が演劇儀式と銘打っている理由がよく分かった。

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稽古場の皆さんの柔らかさと鋭い集中力に、一気に目を奪われた時間となりました。悲劇ですが、この物語は観客や現実を突き放したりはしません。劇場という場所から届ける、私たちが隣の誰かを想うための物語となることでしょう。

あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1005924.html

架空の劇場跡地を舞台に描く、60分間の演劇儀式!
一般料金1000円・友の会は500円!

[日程] 2024年2月18日(日)11:00/15:00
[料金] <全席指定>

一般 1,000円/アルテ友の会 500円(前売のみ)/18歳以下 500円(当日要証明書)

【あたらしい劇場プロジェクトとは】
吉祥寺シアターが劇場としての新たな価値を創出する演劇企画。
劇場職員が自ら創作を行い作品を発信することで、公共劇場のあたらしい在り方を提示する。


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