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劇文学

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戯曲/脚本を纏めました。癖が強いモノから弱いモノまで。
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#短編小説

『文字』に囚われた男(戯曲)

『文字』に囚われた男(戯曲)

古い日本家屋。玄関から居間まで続くゴミ回廊を、男は何かを呟きながら右往左往している。
ああでもない、こうでもない。
あれも違う、これも違う。
まるで狂ってしまったかの様なその素振りは、以前女誑しで知られた『軟派者』の影を潜めるに至り、周囲の塵や埃はそんな彼を何処か未知の世界へと誘うのである。

暗転後、男は何かにビックリしたかの様な反応を客席へ見せる。落ち着いた後、舞台の右から左を練り歩きながら、

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阪神間の軌跡(戯曲)

阪神間の軌跡(戯曲)

梅田駅から三ノ宮駅までを走る阪急神戸線にあって、大阪と京都を繋ぐ十三駅はいわばジャンクションの役割を担っている。
平日の昼間だというのにも関わらず、駅の構内は人で溢れ返っており、昔に想い合っていた男女が同時刻、同じ車両に乗り合わせる事を考えれば、それは奇跡といっても過言ではない様に思える。
十三駅から三ノ宮駅までの道中、その軌跡に起きる奇跡というのは、果たして偶然という言葉で終わらせても良いものな

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