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#cakesコンテスト
『カレンダーストーリーズ』ウラ10月 「はじめてのハロウィン」 【刺しゅう絵本】作:annas/丘本さちを
しっていて しらないところ
みえていて みえないところ
まちのはずれの はかばのはずれ
おばけのおやしき たっていた
くものすいっぱい かびどっさり
ろうそくのほのおが ゆらゆらゆれる
そこにすんでいるのは……
「やあ、こんばんは! ぼくはジャック!
かぼちゃおばけのジャックだよ!」
★★★★
かぼちゃおばけのいっかは
ハロウィンのじゅんびにおおいそがし
でもおやお
『カレンダーストーリーズ』オモテ10月「とん津」【掌編小説】作:丘本さちを
最近、学食には滅多に行かなくなった。大学裏の商店街にあるトンカツ屋に通っているからだ。「とん津」と書いてトンシンと読む店で、少なく見積もっても七十は超えようかという深い皺の主人が一人で切り盛りしている。
友達は誰も知らなかったが、ゼミの先生に「とん津」の名前を出すと「ああ、あそこ。へえ、まだやっとんのか」といつもの関西訛りで感心したように言った。随分昔からある店らしかった。
店内は狭い。
『カレンダーストーリーズ』オモテ9月「パラレル・シスターズ 秋桜編」【掌編小説】作:丘本さちを
ある朝ベッドから起き上がると、私の部屋には三人の女の子がいた。彼女達はまったく同じ顔、まったく同じ体、まったく同じ声。彼女達はそれぞれ違う女の子でありながら、同時に同じ女の子。彼女達は平行世界からやってきた、平行な三姉妹、パラレル・シスターズだったのだ。
どうしてパラレル・シスターズが私の部屋へやってきたのか。それは誰にも(シスターズ本人たちにすら)分からない。平行世界を行き来するあらゆる可
『カレンダーストーリーズ』オモテ8月「マウンドの陽炎」【掌編小説】作:丘本さちを
※この作品はただいま公開休止中です。
オモテ8月「マウンドの陽炎」/文・丘本さちを
cover design・仲井希代子(ケシュ ハモニウム × ケシュ#203)
*『カレンダーストーリーズ』とは…"丘本さちを"と"毎月のゲスト"が文章やイラスト、音楽などで月々のストーリーを綴っていく連載企画です。第一月曜日は「オモテ○月」として丘本の短編小説が、第三月曜日は「ウラ○月」としてゲストの物語が
『カレンダーストーリーズ』オモテ7月「雷を見にいく」【掌編小説】作:丘本さちを
その日は地球の上に何回目かの夕闇が訪れた日だったと思う。
偽物じゃ無い、本物の夏の夕闇のことだよ。大げさにいうとね。そうだなあ、まだ7月の内。学校がまだ夏休みに入るか入らないかってころだったと思うよ。温度計が少し背伸びをし始めた頃さ。
雨が降りそうで、でも降らない。湿気がやけに纏わり付く。じんわりと灯った水銀灯の光が、まだ熱のこもったままのアスファルトをひんやりと照らしていく。硬質でよく
『カレンダーストーリーズ』オモテ6月「アジサイは自分がいつからアジサイと呼ばれるようになったのか、思い出そうとしていた。」【掌編小説】作:丘本さちを
アジサイは自分がいつから「アジサイ」と呼ばれるようになったのか、思い出そうとしていた。糸を引くような六月の雨は今日も街を濡らしている。もっとも、アジサイにとっては雨降り以外の天候など存在しないのだが。
Chronic rainy syndrome。慢性雨降り症候群と呼ばれる、生きているかぎり雨に降られ続ける病。主治医が真っ白なカルテにその病名を書き込んだ日から、少女の名前は「アジサイ」になっ