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ぼくがビートルズで恍惚とする瞬間を秒単位で解説できるおすすめ9曲

4歳の頃からビートルズを聴いている。

そういうと、なんだか音楽一家に生まれ、僕も音楽好きでバンドなんかやってるんじゃないかと思うかもしれないが、ギターなんて1コードも弾けない。

ただただ、聴き続けている。高校受験も、大学受験も、通勤中も、執筆中も。ずっと僕の耳にはビートルズが鳴っている。

そんな僕がビートルズにハマり続けていられるのは何故なのか?と考えてみると、ある一つの答えにたどり着いた。


ビートルズを聴いていると「アッー!」という瞬間がある。


この瞬間の恍惚は4歳の頃から変わらない。いや、むしろ年々増している。

今回はこの記事を読んでくださる方にビートルズが持つ「アッー!」を共有したいと思う。

幸い、ビートルズは数多くの楽曲をYouTubeで公式から無料公開しているので、この記事では音源を楽しみながら読める。僕は秒単位で瞬間を指定し、あなたに聴かせられるのだ。

この記事は僕とあなたとのコミュニケーションだ。僕とのプレイを楽しんでほしい。

①Please Please Meの1分33秒「笑うジョン」

まずはビートルズのデビューアルバムのリード曲「Please Please Me」。軽快で疾走感のあるポップチューン。小さいころ、一番のお気に入りはこの曲でよく「カモンカモン」と歌っていた。

だからせきをちゅまいがー あのゆめぼーりんぐたーあいがー

……と4歳の頃に歌っていた記憶がある。

もともとはジョンがロイ・オービソン風の曲を書きたいということでつくった曲だったので、かなりスローな曲調だった。1962年9月にレコーディングするもこれはお蔵入り。

その後、プロデューサーのジョージ・マーティンの提案により「Please Please Me」はテンポを速くして同年11月に再レコーディング。ジョージ・マーティンはこのレコーディングを終えた段階で「君たちの最初のナンバーワンレコードだ」とビートルズに伝えたというのだから、驚きだ。

そんな「Please Please Me」の魅了される瞬間は1分33秒だ。

カッフォモン(笑)

笑ってる? そう、ジョン・レノンさん、笑ってる。なぜ笑っているのか、というとその前のパートから聞く必要がある。

(ポール)I know you never even try girl

(ジョン)Why... know... I never even try girl

けっこう派手に間違っているので、ジョンもこのミスに気づき、笑っているというわけ。このレコーディングは完全な一発録りで、演奏しながらレコーディングしている。つまり、ほとんどスタジオで行われたライブ録音みたいなものだ。

これは珍品のアウトテイクでも何でもなく、普通に今でもCDショップに売っているし、iTunesやSpotifyで聞ける公式音源がこれ。

もともとは公式で流通している音源がモノラル音源(テイク違いで笑ってない、これもジョンが歌詞間違ってるけど)だったので、なかなか聞けなかった。2009年のリマスタでこちらの笑ってるステレオ音源が逆に主流になったのだ。

そもそも「レコーディングスタジオでデビューしたての新人が笑うか?」という話で。当時のジョンは22歳。フツー、ミスったら「すみません、やりなおします、はい、すみません」って感じかと。

でもそこで笑っちゃうような自然体メンタルのジョンが好き。「Please Please Me」聴くたびに、この「カフォモン」を待っちゃう。

そしてこのミスした音源を「リリースしちゃおう」と決めてしまう制作陣。イカれてる。プロが集まってやる仕事ではない。

なんでこのテイクをオーケーにしたのかはナゾで、元のテープが破損したとか何かあったんじゃないかと思われるが、僕は案外「これはこれで元気で明るくていいんじゃね?」って感じだったんじゃないか?という気もする。

なぜなら僕もこのテイクを聞いて「元気で明るくていいねえ」って思うから。元気ならいいんよ。攻めてたらいいんよ。そしたら、その間違いさえも楽しんでくれる人が出てくるんですよ。今の僕みたいに。

僕は22歳のジョンの「カフォモン(笑)」を聴くと、しゅんとしてるのがアホらしくなることがよくある。これからもしゅんとしたら「カフォモン(笑)」を聴きに帰ってこよう。

②A Hard Day's Nightの0分00秒「世界一ワクワクする音」

この音は誰もが知ってるはず。


「ジャーン!」


これがビートルズだ。問答無用の「アッー!」。

この「ジャーン!」だけでこの曲が魔法にかけられる。ついでに僕も魔法にかけられる。恍惚。

もはやビートルズのサウンドロゴということで、登録商標にしていいんじゃないか。世界で一番ワクワクする一音。

「ジャーン!」の後、意外と歌い出しに間があることに気づく。余韻をしっかり聞かせている。この「間」が、より「ジャーン!」をさらに印象深くしている。

僕は子どもの頃、家にあるギターで適当に「ジャーン!」と鳴らして、

えびなはーでいずない

と歌っていた。同じくビートルズ好きの母がそんな僕を見て「ジャーン!」はどう弾くのか、ああでもない、こうでもないとやっていたことも思い出す。

この「ジャーン!」って、実は結構ナゾらしく、数々のビートルズマニアが仮説を出している。「a hard day's night intro chord」をYouTubeで検索するとこの有様だ。

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検証動画が出るわ出るわ。みんなあーでもない、こーでもないってやっている。これだけ、みんなこの「ジャーン!」がずーっと気になっているというわけだ。

僕は「ジャーン!」を聴くと、一気にビートルズに一番夢中だった5歳の頃の気持ちがよみがえる。

5歳の頃とまったく同じ「ジャーン!」。なんなら、1964年とまったく同じ「ジャーン!」。これからもずっと同じ「ジャーン!」。僕が死ぬまで同じ「ジャーン!」。死んでからも同じ「ジャーン!」。その事実は僕を安心させてくれる。

「音を残す」という技術を開発してくれたエジソンにすら感謝したくなる。

それが僕にとっての「A Hard Day's Night」、すなわち「ジャーン!」なのだ。

▲冒頭の「ジャーン!」をサウンドロゴ的に活かしたCM

③Ticket To Rideの2分30秒「甘えるジョン」

1965年にリリースされた楽曲で、アルバムだと「Help!」に入っている曲。ドラムがなんとなく変わっているが、これはポールのアイディアとのこと。こういう細かな工夫が曲を面白くさせる。

ビートルズ関連の書籍でジョンがこの曲について「ヘヴィな楽曲」「ヘヴィメタルの先駆け的な作品」とコメントしている旨をよく見るが、この曲がそこまでヘヴィなのかは正直、よくわからない。

そんなことはどうでもいい。この曲の魅了される瞬間はジョンのサビ前、2回目の「アァ~ン」だ。

アァ~ン

はい、止めて!話は続くから。

実はこの曲には「アァ~ン」が2回ある。まずは1回目の「アァ~ン」を聴いてみてほしい。1分40秒地点、ここだ。

アァ~ン

「アァ~ン」を聴いたらすぐ止めて。いかがだろう。2回目の「アァ~ン」とかなり違う。けだるそうだが力強い「アァ~ン」。「ンァア~!」という感じだ。ロックな「アァ~ン」。2回目をもう一度聞いてほしい。

アァ~ン

止めなくていい。そのまま流しておこう。もうすぐ曲は終わる。

あんなにけだるそうだったジョンが、甘えている。それはさながら、猫のようなツンデレ具合だ。「アァ~ン!もうすぐ曲が終わっちゃうゥ~!」と聴こえてきそうだ。

ジョンの体の奥底から漏れ出てくる「アァ~ン」。これがないと、Ticket To Rideは盛り上がらない。数あるコピーバンドでも、この「1回目アァ~ン」と「2回目アァ~ン」を使い分けるバンドはそうそういないはずだ。

曲がラストに向かうにつれ、ジョンが曲との別れを惜しむような声を上げて盛り上げるパターンはいくつかある。パッと思いつくのは「All I've Got To Do」。

この曲も1分31秒に「アーアア!」、1分42秒に「オーオオ!」と結構無理やり入っている。でもこれがわずか2分2秒の楽曲に盛り上がりを与えている。

ポールにも同様……と言っていいかわからないが、曲を印象付けさせる工夫とも思える歌い方をしている曲がある。超有名曲「Yesterday」だ。

聴くべきは2度「イエスターデーーーーーイ」と長く伸ばす「ロングイエスタデイ」。

54秒にある1回目のロングイエスタデイは「イエスターデェーーーーーイ」とまっすぐ伸ばすが、1分32秒にある2回目のロングイエスタデイは「イエスターデーエェエェエェエェ↓」と下がっていく。

この2回目の下がっていくイエスタデイの印象が強い人が多いと思うが、それはポールの策略にまんまとはまっている。ポールは2回目のロングイエスタデイで曲を盛り上げ、印象付けている。

カラオケに行くと、両方とも2回目バージョンのロングイエスタデイで歌う人が結構いる。カバーでもたまーに見かける。ビートルズファンとしては基本中の基本なので、イエスタデイ警察にすぐ捕まる。

ちなみにTicket To RideのMVには、僕が個人的に好きな「アッー!」な瞬間がひとつある。1分39秒くらいか。

お分かりいただけただろうか。

MVの中で「Yeah」の口パクを比較的そつなくこなしていたジョンだったが、ここでは口を真一文字に閉じて「Yeah」をスルーしてしまう。その後、あえて間を若干空けて「Yeah」とニッコリ歌ってから、真顔で「シーガダ」と戻る。

これはジョンと私たちとのコミュニケーションだ。

ジョンはカメラの向こうにいる私たちをイメージしているからこそ、あのような態度をとったのだ。「Ticket To RideのMVを真剣に見ている人」に向けたジョークなのだ。かわいい。

僕は1965年のジョンとこのビデオを通じて、今でもコミュニケーションが取れるのだ。このジョンが好きなんだ。好きなんだよ。これでオッケーな空気感も好きなんだよ。

④Nowhere Manの0分00秒「コーラスマジック」

「Nowhere Man」のコーラスは、ロック界のハイライトだと思う。

ビートルズ中期の作品だが、アイドルからアーティストへと生まれ変わるファンファーレのような役割を果たしている曲とも言えるだろう。

ビートルズは本当にコーラスがきれいだ。他にもコーラスがきれいな曲はたくさんある。パッと思いつくのは「If I Needed Someone」と「Because」だ。

ジョージの曲でジョージのソロ以外はジョージ、ジョン、ポールのハーモニーが堪能できる。

あとはジョンの名曲「Because」。

ジョン、ポール、ジョージの声をそれぞれ3回ずつ重ねていることで、より重厚感が増している。ジョージが「真剣に練習した」と語っている通り、ビートルズのマジのコーラスが堪能できる名曲だ。

ポールが「僕たちはコーラスグループ」と語っている通り、ビートルズはコーラスの上手いグループだという自負があったと思う。

ビートルズをコピーするときには「コーラスでアッー!と言わせられるか」が重要だ。僕の生まれ故郷である福岡県田川市が生んだ筑豊のビートルズ「The Flying Elephants」はおそらく日本一だろう。最後に紹介させてもらう。

⑤A Day In The Lifeの4分20秒「長すぎるガーン……!」

おそらく「A Day In The Life」はビートルズファンからの人気と、一般の知名度がもっともかけ離れた楽曲ではないかと思う。

曲中のオーケストラがだんだん音を上げていくパートが不気味で、印象に残らせられる。力技だ。

40人がかりのオーケストラの録音風景はもともとテレビ番組で放映予定だったらしく、MVに出ているオーケストラはみんなパーティグッズのようなものを身につけている。非常にシュールな雰囲気だ。なぜこんなことにこだわったんだろう。

「なぜこんなことにこだわったんだろう」の究極が、ラストの長すぎる余韻だ。

なんと「ガーン……!」の1音が40秒ほど続いている。さすがに長すぎやしないか。

「A Hard Day's Night」の「ジャーン!」のワクワク感とは程遠い。何だか重く、不気味な「ガーン……!」

そもそも、この曲が入っている「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」というのは、なんだか奇妙なアルバムだ。

どの曲もいろんな音が入っていて「これ何の音?」って感じだし、ジャケットも正直キモい。

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なんでも「ビートルズの葬式」をイメージしたものらしい。うん、やっぱキモい。

そんなキモいアルバムの最後を飾るのが、この「ガーン……!」というわけだ。……正直、ピッタリだ。

こんな音どうやって鳴らしているんだということなんですが、なんと5人がかりで3台のピアノと1台のハーモニウムを「せーの」で鳴らしたそう。

40秒以上の余韻は意図したもので、音量が下がれば下がるほど録音音量を上げていった。そのせいか、4分49秒くらいに椅子がきしむ音と「あっやべ」(なのかは知らないが)みたいな人の呼吸の音が入っている。

この「ガーン……!」をもう一度聞いてみよう。

僕はこの「ガーン……!」をヘッドホンで聞くとき、必ず心を「無」にするようにしている。そして、余韻がなくなるのをジッと待つ。30秒ほどたったとき、あなたは無の境地にいるはずだ。これで僕は極限までリラックスできる。

無の境地に達すると、その後に入っている「犬にしか聞こえないという15キロサイクルの高周波の犬笛の音(公式ライナーノーツより)」が聴こえるようになるという噂も……。嘘です。犬にしか聞こえないって、何なんだ。

⑥Strawberry Fields Foreverの0分12秒「リンゴの安心感」

Strawberry Fields Foreverは冒頭のメロトロンが特徴的で、その他にもジョージが引いているスヴァラマンダラという楽器の音が印象的。

▲スヴァラマンダラ(正直、初めて見た)

そんな不思議な空気の曲だが「これはビートルズの曲だぞ!」と安心させてくれるのが、リンゴの力強いドラムスの音。

メロトロンの音からジョンの歌いだし。開始12秒でリンゴが意気揚々と入ってくる。

その後も何度か同じようなリンゴが入ってくる部分が存在するが、その時の入り方はバラバラ。

そのパターンの多さが、この曲を楽しくしてくれている。実際、Strawberry Fields Foreverに対して、僕はドラムスの印象が強い。とにかく、この曲でリンゴは思う存分、ダダスカダダスカ叩きまくっていて、気持ちいい。

僕は音楽をやらないので、詳しいことは正直分からない。でも、リンゴのドラムはなんだか、手数が少ないのにたくさん叩いているように聞こえるというか。一音一音が非常に強くて「ズシン!」と重く響く感じが好きだ。

他にもリンゴのドラムスが好きな曲と言えば、Rain。

このリンゴのドラムスも力強く、不思議で、かっこよい。先ほど紹介した「A Day In The Life」でも、リンゴのドラムは曲のスローなテンポとは裏腹に好き勝手にズンズド鳴っていて(とくに後半)、この曲の不思議な雰囲気を引き立てている。

どんな曲でもリンゴの力強くて工夫に富んだドラムスが入れば、ビートルズっぽくなるような気がする。

それは解散後、ビートルズの再結成として大きく騒がれた「Free As A Bird」を聴いても強く思う。

この曲は1995年にポール、ジョージ、リンゴの3人で発表したビートルズの新曲だ。既に亡くなっていたジョンが遺した「Free As A Bird」のテープに3人で演奏、不足していた部分の曲、歌を足してリリースしたのだ。

妙な制作過程であり、駄作が許されないこの曲。しかし、冒頭のリンゴの「ダン!ダン!」という力強いドラムスが入ることで不安を吹き飛ばしてくれる。ファンに「ビートルズの曲だ」という安心感を与えてくれる。

リンゴのドラムスはもちろん、ジョージのスライドギターやポールのベースやボーカルなど、素晴らしい出来栄えで「ビートルズマジックは生きている」と感じる。最後にジョンのセリフやウクレレが入る遊び心も、ビートルズっぽくていい。

「Free As A Bird」を紹介したので、同じように制作された「Real Love」も紹介する。この曲でもリンゴのドラムの安心感は健在だ。

余談だが、このMVの終盤、3分22秒あたりでポールがReal Loveを口ずさみながら聴いているシーンがすごく好きだ。

⑦Happiness Is A Warm Gunの2分26秒「ジョンのシャウト」

もしビートルズファンの方で、この記事を楽しんでいる人がいるとするなら、もうお気づきだろう。僕はジョン・レノンが好きだ。

「Happiness Is A Warm Gun」はジョン好きにはかなり人気が高い曲ではないだろうか。「Happiness Is A Warm Gun」は贅沢だ。さまざまな歌声のジョンが楽しめる。

ささやくような冒頭、そして淡々と歌い始める。「マザスペーリジャンザガ~ン」の低音ボイス。そして最後の「Happiness Is A Warm Gun」のシャウトへとつながっていく。

たった2分44秒の曲だが、元々制作中だった3曲を贅沢につなぎ合わせた曲となっているため、このような展開になっている。

さあ聞いてみよう。僕が「アッー!」と思う瞬間は2分26秒にやってくる。

あどちゅのーざはっぴねへす!

ここ聴くために待ってるもんな、ずっと。ずっとっていうか、2分25秒。

このシャウトがかっこいいー。最高。その前の「うぇなーほーじゅう!いんまいおーん!」から始まるシャウトパートもかっこいいんだよな…。

僕はこのジョンのシャウトに憧れ、音楽コラボアプリの「nana」でラストのあたりだけ歌ったことがあります。このアプリ、ほかのユーザーの生演奏に合わせて歌えるんですよ。ありがたい。

上手い下手はさておき、好きという「気持ち」が伝わる歌唱には間違いないはずだ。そこだけは自信がある。

とにかく「ジョンのシャウトは最高」というのは決まっている。この曲のほかにジョンのシャウトを堪能できる曲を紹介しておこう。真っ先に浮かぶのは「Mr.Moonlight」。

こんな最高に「ミスター」って叫べる人、ほかにいるの?

あとはデビューアルバム「Please Please Me」のラストを飾る「Twist And Shout」。

1曲まるまる、叫びっぱなし。

「Please Please Me」というアルバムはほとんどの曲が1963年2月11日に一発録りされたアルバムだ。ちなみに、この日のジョンは風邪気味。

「Twist And Shoutを歌うとジョンの喉が終わる」とわかっていたビートルズはこの曲のレコーディングを最後にした。のど飴をなめながらなんとか乗り切っていたジョンが、最後に渾身の力で歌った……いや、叫んだのが、このTwist And Shoutなのだ。

ジョンもかなりハイになっているようで、ライブも含めて、ビートルズのTwist And Shoutはこのレコードに収録されている演奏がベストアクトだと思う。

⑧Somethingの2分49秒「ジョージの曲で目立つポールのベース」

Somethingは言わずと知れた、ジョージ・ハリスンの名曲。ベスト盤にも入っているので、知っているという人も多いだろう。

ビートルズには固定のリードボーカルは存在せず、基本的に作った人が歌う(例外もある)ので、この曲はジョージがリードボーカルだ。

この曲の「アッー!」は、最後の2分49秒のポールのベース。

どぅーんどぅどぅどぅどぅどぅどぅどぅーんどぅーんどぅーん

ここに限らず、この曲では全編に渡り、ポールはベースを弾きに弾きまくっている。冒頭からずっと弾きまくっている。ほとんどずっと裏で歌うようなベースソロを弾いているような感じだ。

最後のこの部分を選んだのは「アッー!ポールのベースよかったなあ~」と余韻に浸るから。聴きながら最後、ポールのベースと一緒に「どぅーんどぅどぅどぅどぅどぅどぅどぅーんどぅーんどぅーん!」と歌うことも多い。

ちなみに僕は新しいヘッドホンやイヤホンを購入するとき、Somethingのポールのベースの鳴りの良さというのが、ひとつの購入指標になっている。程よく重く、伸びやかにポールのベースが鳴っているものを購入するのだ。

ポールのベースはどの曲も歌っているような、印象的なベースラインが多い。中でも、ジョージの曲の時にベースでやたら頑張ることが多い気がする。有名なのは「Taxman」。

どぅっどぅーどぅどぅるる!というリフが強烈に印象に残る。コピーバンドが演奏する場合、たいていベース役がボーカルを務めるジョージ役よりも楽しそう。

同じくジョージの「While My Guitar Gently Weeps」のベースも最高。

この曲はリードギターがエリック・クラプトンであり、ジョージが表現しようとした「泣きのギターソロ」がうまくできず、エリックに頼んだというエピソードがビートルズファンには有名だ。

それにしても、ホワイル「マイギター」ジェントリーウィープスなのに、上手くできないからとギターの神様・エリック・クラプトンに託すなんて。「全然マイギターじゃねえじゃねえか」と思う。プライドねえのか。

ジョージはギタリストである前に表現者、アーティストだったのだろう。

肝心のベースの話だが、ジョージはこの曲ができて「いい曲だ」と思ったそうで、意気揚々とメンバーに紹介したが誰もあまり興味を持ってくれなかったそうだ。しかし、エリック・クラプトンが客演することが決まるやいなや、3人は素晴らしい演奏をしたらしい。

僕が思うに、ポールは「この音源はギターゴッドのエリック・クラプトンが聴くんだから、いいとこ見せてやらねえと」みたいな意識が働いているんじゃないかと思う。それがこの美しいベースプレイにつながっているのではないだろうか。ポールはきっと、そういうところがある。知らんけど。

それと同じくジョージの「Savoy Truffle」のベースも、例に漏れず弾きまくりで大好き。この曲は大好きだが、あまり人気がないような気がする。正直、うんちくは何も知らないので、ただただベースを楽しんでみてほしい。かっこいい曲だ。

⑨Golden Slumbersの0分42秒「自分の喉さえも楽器にするポール」

僕が大好きなアルバム「Abbey Road」。

文句なく素晴らしいアルバムで、間違いなく僕がビートルズの中で最も好きな作品だ。

Abbey RoadはB面がまるまるメドレーになっている壮大な作品だ。そのメドレーこそが、このアルバムの見どころである。

Golden Slumbersはそのメドレーが、いよいよフィナーレに向かうというタイミングの曲だ。美しく壮大な1分31秒なのだが、「アッー!」は42秒から繰り出すポールの声。

めっちゃくちゃ太い声を出している。

この太い「すまーーあああああいるっざっうぇええい」の前に「ごおおおおおおおおおるでんすらあああんばー」もあるのだが、そこはここまで太くない。

同じメロディでも歌い方を変えて、曲を盛り上げているのだ。一度太くなった声は、また元に戻る。1分31秒の曲でもこのような工夫をすることで、ドラマティックになるんだなあ、と表現の幅広さを感じさせる。

ポールの歌唱の幅の広さはこの曲に始まったことではない。ポールは曲に合わせてボーカルのアプローチを変えている。「歌う」というより、「鳴らす」という感覚な気がする。自分の喉さえも楽器と思っているんじゃないかと思う。知らんけど。(何度も言うが、僕は音楽をやらないのでよくわからない。)

本来ポールらしい声というのは「澄んだハイトーン」だと思う。パッと浮かぶ有名曲は「Here, There And Everywhere」。

この曲こそ、まさにポールっぽい声であり、曲だと思う。一方で「Lady Madonna」のような歌唱のアプローチをすることもある。

このようにポールの歌唱の幅は非常に広く、とにかく歌がめちゃくちゃ上手い!語彙力。

ポールの歌の上手さが引き立つ曲と言えば「Oh! Darling」も外せない。

ポールだってこんなに叫べるのだ。

この曲に関してポールは「ざらついたシャウト」が出したかったらしく、1週間毎日早くスタジオ入りして、この曲を歌って方向性を模索していたらしい。最初の頃は「声がクリア過ぎる」と思っていたとのことだ。

そのクリアだった頃の歌は、最近リリースされたアウトテイクに残っている。模索している感じがうかがえる。

ジョンはこの曲に対し「傑作だが、ポールはあまり上手く歌えてない。俺の方が上手く歌えると思っていた」と語っている。さすがシャウトの権化。でも、たしかに上手そうだ。

きっとジョンは、ポールがつくった「Oh! Darling」に嫉妬していたんだと思う。たぶんね。

おわりに

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1万文字も書いてしまった。読んでいる人はいないだろう。

僕は音楽の事なんか1ミリもわからない。この記事なんて、取るに足らないことばかり書かれているし、聞き手としての僕の感覚論ばかり。

ここに書かれているビートルズに関する知識も、正直「ビートルズファン」ならだれでも知っている「超基本的な内容」である。この記事に情報価値はないだろう。

でも、僕は満足だ。ビートルズの「アッー!」をたっぷり吐き出すことができたから。

そして、ビートルズを聴きながら「アッー!!!そこそこ!!!!!」ってなる、あの恍惚を共有することができたから。

それだけでも、この記事は僕にとって存在価値があるのだ。

あなたの好きなビートルズはどの瞬間だろうか。もしよかったら、僕に秒単位で教えてほしい。

ありがとう、ビートルズ。これからも僕はビートルズとイキ続ける。


【お知らせ】FM佐賀の番組に出ます

初めてラジオに出演します。テーマは「福岡グルメ」でも「アビスパ福岡」でもなく、「ビートルズ」。聴いてみてね!番組はもちろん、ビートルズを。

放送日は 5/14(木)、28(木) 20:30~

FM佐賀 「レッツ!ビートルズ on Radio」

radikoでも聴けるよ。

【追記】この記事を応募していた「#キナリ杯」という文章コンテストでこの記事が「好きのおすそわけ賞」という、これしかない!というようなピッタリな賞を受賞しました!ありがとうございます!

何より、岸田奈美さんにこの記事を通じて、ビートルズの面白さを知ってもらえたことがうれしいです。

この記事に共感してくださった方は、もうひとつ「吉田拓郎」に関して、似たような記事があるので、こちらも読んでみてください。

こちらはこの記事より少しだけマニア向きかもです。読んでみてね。

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