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文学の祟り 文学以外ダサい いい職あれば教えてください

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記事一覧

『風の歌を聴け』の何がそんなに好きなのか。春樹とおれとパンデミック。

 『風の歌を聴け』をはじめて読んだのは2020年の春から夏の間のどこか、実家のダイニングテーブルの長椅子の上、だったと思う。 その二年くらい前に、『海辺のカフカ…

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1か月前
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箱の中で忘れている46のこと

生きていることに感動するために詩がある。 目を覚ますとき社会の中にいる。詩を書くとき宇宙の中にいる。 言語は、シンプルに、そこに居ないやつと意思疎通コミュニケー…

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10か月前
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エンターテイメントは「口説く男」、アートは「雰囲気のある女」

エンターテイメントとアートの違いエンターテイメントの価値は客の評価に委ねられている。作品をつくり終えた時点では、まだその成功失敗は判断できない。男が必死に口説い…

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2年前
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村上龍の文章は強い酒だ。

本当は、ドラッグだ、とでも言いたいが経験がないから知らない。美味くも感じないウィスキーのショットみたいな文だ。頭がクラクラして、現実の生活が馬鹿らしくなって、気…

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2年前
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「小説家志望は黙って小説を書いとけ」は本当か。

「作家を目指すな」というアドバイスもちろん他にも多くの小説家がいて、その数だけの考えがあります。実際にスティーブン・キングさんは「懸命に努力し、研鑽を積み、しか…

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2年前
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何を書くか。そして、何を書かないか。

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」 『風の歌を聴け』という小説はこの一節から始まり、こう続きます。 真剣に何かを書こう…

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2年前
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『風の歌を聴け』の何がそんなに好きなのか。春樹とおれとパンデミック。

『風の歌を聴け』の何がそんなに好きなのか。春樹とおれとパンデミック。

 『風の歌を聴け』をはじめて読んだのは2020年の春から夏の間のどこか、実家のダイニングテーブルの長椅子の上、だったと思う。
その二年くらい前に、『海辺のカフカ』に出会っておれはたくさん本を読むようになったんだけど、『海辺のカフカ』は久しぶりに読む〈小説〉で、ツイッターでフォローしていたビジネス系のインフルエンサーみたいな人(おれは当時この人を信奉していて、弟子を募集していたときに応募までしている

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箱の中で忘れている46のこと

箱の中で忘れている46のこと

生きていることに感動するために詩がある。

目を覚ますとき社会の中にいる。詩を書くとき宇宙の中にいる。

言語は、シンプルに、そこに居ないやつと意思疎通コミュニケーションできる。

仕事でも趣味でもない生命活動。

分類を免れるものがおもしろい。

あと1回しかツイートできないとしたら小説みたいになりそう。

小説家も飯屋も腹が減った客を相手にする。それ以外は客じゃない。

小説でも芸術でもないお

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エンターテイメントは「口説く男」、アートは「雰囲気のある女」

エンターテイメントとアートの違いエンターテイメントの価値は客の評価に委ねられている。作品をつくり終えた時点では、まだその成功失敗は判断できない。男が必死に口説いても、相手が振り向かなければそれは失敗を意味する。だから、エンターテイメントには誘導が含まれる。客の感情を誘導する。それがバレバレなら冷めるが、もちろん成功するときもある。その度合いも客観的にはかれて、わかりやすく、ビジネスと相性がいい。

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村上龍の文章は強い酒だ。

本当は、ドラッグだ、とでも言いたいが経験がないから知らない。美味くも感じないウィスキーのショットみたいな文だ。頭がクラクラして、現実の生活が馬鹿らしくなって、気が大きくなる。現に今、村上龍がオレに乗り移っている。何でも言えそうだ。何でも言ってしまいそうだ。でも泥酔してるときと同じように、やはりどこかに理性というか礼儀というかそんなものが微かに残っているから、変なことは言わない。それがオレのポリシー

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「小説家志望は黙って小説を書いとけ」は本当か。

「作家を目指すな」というアドバイスもちろん他にも多くの小説家がいて、その数だけの考えがあります。実際にスティーブン・キングさんは「懸命に努力し、研鑽を積み、しかるべきときにしかるべき助力を得られたら、二流が一流になることは可能だ」と自伝で述べています。その後で「誰のどんな力を借りても、三流が一流になることはできない」とも仰っていますが。

「小説家志望は何も書くな。普通に生きろ」「黙って書いとけ」

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何を書くか。そして、何を書かないか。

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」

『風の歌を聴け』という小説はこの一節から始まり、こう続きます。

真剣に何かを書こうとするとき、その一節が頭をよぎって、またこの小説に戻ってくるという体験が僕にはあります。小説というものを強く意識していなかった頃は、(愚かにも)ただ聞こえのいい台詞の一つとして処理していて、巧みに名台詞を並べて物語の形をなすものが「小説

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