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ケンヨウ
2023年4月18日 16:41
ここは静かなところだった。 いつも思うのは、喧騒は心地よいということだった。人ごみに紛れていると、人が自分の壁となって守ってくれているような錯覚を覚えた。私は、ずっと、この片田舎で生まれたことに嫌悪を抱いていた。それが如実に心に存在したのは、中学生の頃からだったと思う。親元から離れる機会が増えるほど、故郷を遠ざける傾向は強くなっていった。 同じ学校の男と付き合ったときに、私はこの地を離れる
2020年7月3日 18:47
僕らは雨が降ると、いつも家で過ごすようにしていた。ポツポツザーザー どんな雨でも同じだった。 ほんの薄暗い日中は、よく最近見たドラマや読んだ本、聴いた音楽の話をした。 でもふと、ふたりの会話に、窓から漏れる雨音が差し込むと、僕らは会話を止めて降り続く雨の音を聴いた。 それはまるで、ショーウィンドウに飾られたマネキンのように、降る雨をひたすら同じ顔つきで、同じ姿勢で、やりすごすよう