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#9 GEMモデル - 組織の拡大に対して、ぶれない軸をつくる方法

この記事は、Netflixで最高製品責任者(CPO)を務めていたGibson Biddle 氏によるプロダクト戦略に関するエッセイ、9. The GEM Model の翻訳記事です。(翻訳許可取得済み)

今回のエッセイのポイント

・組織の拡大によって起こる「目標のズレ」はGEMモデルで解消できる
・GEMモデルとは、Growth, Engagement, Monetizationの頭文字を取ったモデルであり、事業の優先度を見極めるためのモデル
・このモデルに沿って、Netflixは事業のフォーカスを絞り、収益性の高いビジネスへと成長させた

これまでのエッセイ

戦略を考えるためのフレームワークから、決めた戦略を組織で実行するための方法まで、幅広く紹介してきました。

それぞれ詳しくは以下のnoteをご覧ください。(文末にも全てのページへのリンクがあります。)

戦略の仮説を出すためのフレームワーク:DHMモデル

戦略を検証するための指標:プロキシメトリクスについて

戦略からロードマップへ落とし込む例と方法

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組織の拡大に合わせて起こる「視点のズレ」

事業やプロダクトが大きくなってくるにつれ、組織も拡大していきます。
プロダクト戦略は組織が成長していく中で、変わらず「どこにフォーカスするべきか」を教えてくれます。

一方で、プロダクト戦略だけでは防げないこともあります。それは「部署間/職種間での目標のずれ (misalignment)」です。

プロダクトサイドとマーケティングサイド、セールスとエンジニアサイドなど、往々にしてそれぞれが重要にしていることが違っていることがあります。

この「目標のずれ」の最も大きな原因の一つは、「グロース、顧客満足、マネタイズの3つの優先順位が、職種や部署によって違うこと」から起こっています。

今日のテーマであるGEMモデルは、これまで述べたような目標や目線のズレを埋め、多様な職種をもつチームが重要指標にのみフォーカスできるようにするものです。

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優先順位をつけるための「GEMモデル」

GEMモデルとは、(ユーザー数などの)成長、(顧客の)エンゲージメント、マネタイズ、の3つの頭文字を取ったモデルです。

GEMモデル
1. Growth = ユーザー数や各種指標の成長
2. Engagement = ユーザー満足度や、アクティブさなどのエンゲージメント
3. Monetization = サービスのマネタイズやビジネスモデル

例として、2005年のNetflixでは、以下のように考えていました。

GEMモデルに基づく優先度
1. Monetization : 粗利やLTVを計測し、事業の収益性を最優先
2. Engagement : Netflixの最重要指標であり、プロダクトの品質を評価する指標でもあった「月次の有料会員継続率」を次に優先
3. Growth : (2005年は)ユーザーの成長率は最も優先度低く捉える

収益化 (Monetization) が2005年においては、最も優先度が高かったため、いくつかのプロジェクトを (他のプロジェクトよりも) 優先して実行していきました。

広告モデルの検証や以前ユーザーが閲覧したDVDの販売、そしてさまざまな価格プランの検証を行い、徹底していかにNetflixを収益性の高いサービスにするかについての答えを探しました。

結果的に、サービスのユーザーは200万人に上り、前年と比べて30%上昇、月次の有料会員継続率は95.5%、そして一番重要な、収益化についても、十分に利益が生まれるモデルを発見することができたのでした。

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ユーザー数推移:十分な収益性が検証できたあとはユーザー数拡大に専念
(出典:グローバル展開を加速するNetflixの戦略)

低価格なプランから、高価格なプランへユーザーを連れていくための仕掛けや、オプションをさらに買いたくなるような方法を発見し、自分たちのサービスの収益性について確信が持てるようになったのです。

プロダクト戦略をつくるためのエクササイズ

あなたの企業やプロダクトの現状を鑑みて、グロース、エンゲージメント、マネタイズ、のどれを優先するのかを決めてみましょう

そして、その優先順位の高いものをどうやって計測していくかというメトリクスを決めましょう (メトリクスについての参考はこちら)

もしCEOとプロダクトマネージャーや各部署のリーダーなどで意見が違うなら、揃えるためにディスカッションをしてみましょう。定期的に行うことで、部署間、職種間のずれが劇的に改善されるでしょう。(優先度の見直しは半年がちょうど良い)

次のエッセイは、いかに戦略思考をチームにインストールするかについて、です。

次のエッセイ:10. 戦略を議論する場の設計について

このシリーズの索引

0. いかにプロダクト戦略を定義するか
1. DHMモデル
2. DHMモデルから製品戦略へ
3. 戦略からメトリクス、戦術へ
4. 事業仮説を正しく測るプロキシメトリクス
5. 戦略を実現する施策の出し方
6. Netflixにおけるパーソナライズ戦略
7. 戦略からロードマップへ
8. 製品ビジョンを探索する強力なチームづくり
9. 組織のフォーカスを決めるGEMモデル
10. 戦略を議論する場の設計について
11. プロダクト戦略のケーススタディ:Chegg
12. プロダクト戦略作成の手引き

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