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#7 戦略からロードマップへ

この記事は、NETFLIXで最高製品責任者(CPO)を務めていたGibson Biddle 氏によるプロダクト戦略に関するエッセイ、7. The Product Roadmap の翻訳記事です。(翻訳許可取得済み)

これまでのあらすじ

「1. DHM モデル ー コピーされにくく、顧客が喜ぶ、利益を高めるプロダクト戦略」から「3. 戦略からメトリクス、戦術へ」まで、DHMモデルという戦略の仮説を出すためのフレームワーク・具体例を紹介しました。

□ 戦略の仮説を出すための3つの観点 (DHMモデル)
D
elight : 顧客に喜びを届ける仮説は何か?
Hard-to-copy : 他社に模倣されにくくするにはどうすべきか?
Margin-enhancing : 利益を生むにはどうすべきか?

「4 戦略を良し悪しを見分ける"プロキシメトリクス"という考え方について」では実際にNetflixで検証した戦略を交えながら、戦略の良し悪しを判断するプロキシメトリクスの考え方に触れました。

プロキシメトリクスは、戦略を検証するためのわかりやすい指標であり、KPIなどと似たような考え方なのでした。 (KPIよりも戦略の検証や実験にフォーカスした指標)

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DHMモデルからプロキシメトリクスまでをまとめると上記のように。

「5. 戦略を実現するための施策の出し方について」「6. Netflixにおけるパーソナライズ戦略」では、戦略を実現するための具体的なアプローチについて触れていました。

これまで「いかに良い戦略を定義するか」についての話題を扱ってきたため、今回からは「良い戦略をいかに実現していくか」にフォーカスしていきます。

7回目となる本エッセイは、「戦略をロードマップに落とし込む方法」についてです。

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元Netflix CPOのGibson氏は現在はさまざまな企業のプロダクトマネージャーやチームリーダーの育成に務めている

ロードマップの役割は何か

ロードマップは議論の尽きないテーマの一つです。

ロードマップがあることで、全てのプロジェクトがどのようにまとまっているかを確認するのに役立つ側面があったり、難易度の高い技術の使用など、長く時間のかかるプロジェクトを事前に知ることができたりします。

一方で、(4四半期などのスパンの)ロードマップがあることで、間違った自信を与えてしまう面も持ち合わせています。何がうまくいくのか、いかないのかということがロードマップでは見えにくいため、ロードマップがあるだけで「これでいけるぞ」と思ってしまうことはとても危険なことです。

このように、ロードマップには不確実性があるため、プロジェクトをスタートさせるタイミングを予測するのは非常に難しいのです。

私がロードマップをチームや会社全体に共有する際には、次の四半期のプロジェクトについて自信を持っていることを伝えますが、それ以降の四半期のロードマップの内容やタイミングは非常に推測しづらいものであることを強調しています。短期的な学習が多く、計画が変更される可能性が十分にありうるからです。

Netflixの四半期ごとのロードマップ

以下に示すのは、2005年半ばのNetflixのロードマップを編集したものです。

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2005年半ばに作成した四半期のロードマップ。戦略とプロジェクト、戦略と戦略の結びつきが明確になっています。

ロードマップは、プロダクトチームのフォーカスを明確にし、必要な役割やメンバーを明らかにします。チームで戦略、プロキシメトリクス、プロジェクトを定義したら、あとは完了させるために走ることです。

ここで重要なのは、ロードマップはプロダクト戦略のアウトプットであり、各戦略の結びつきを伝える物語であるということです。

ロードマップがすべてのタスクや作業を示す必要はありません。
ロードマップは、各戦略の主要なプロジェクトの概要と、時期についての最善の予測を示したものであれば良いのです。

現に、上のNetflixの例では、例えばインフラのタスクや、ヘルプページの充実のためのタスクなどは含めていません。

明確なロードマップと明確な指標の重要性

ロードマップは、プロダクトの全体的な戦略が時間の経過とともにどのように展開されていくのかを教えてくれます。私がロードマップを作成する際、会社の経営陣や役員が最も重要な理解者であることを意識してつくっています。

また、プロダクトに関わるチームを組織する際の注意点を一つ。
各プロダクトリーダーが、自分の領域でどのような成功を収めているかを示す明確な指標を持っていることです。。

パーソナライゼーション戦略のチームリーダーであったトッドは、「最初の 6 週間で少なくとも 50 本の映画を評価したメンバーの割合」という指標を持っていました。(Netflixのパーソナライズ戦略の詳細はこちら)

「よりシンプルな体験をつくること」に焦点を当てていたチームのリーダーメーガン氏は、「見たい映画リストに3本以上のタイトルを追加したユーザーの割合」という指標を設定しました。

プロキシメトリクスを設定することは、根本的な役割を明確にすることでもあるのです。

プロダクト戦略をつくるためのエクササイズ

Netflixの例を参考にしながら、各戦略について、直近の4四半期で実施するプロジェクトの概要を明らかにしましょう。すべてのプロジェクトを上記のようなロードマップにまとめられると良いです。

次のエッセイでは、プロダクト戦略を定義する際に、大局的で長期的な思考をするための方法について紹介します。

次のエッセイ : 8. 製品ビジョンを探索する強力なチームづくり

このシリーズの索引

0. いかにプロダクト戦略を定義するか
1. DHMモデル
2. DHMモデルから製品戦略へ
3. 戦略からメトリクス、戦術へ
4. 事業仮説を正しく測るプロキシメトリクス
5. 戦略を実現する施策の出し方
6. Netflixにおけるパーソナライズ戦略
7. 戦略からロードマップへ
8. 製品ビジョンを探索する強力なチームづくり
9. 組織のフォーカスを決めるGEMモデル
10. 戦略を議論する場の設計について
11. プロダクト戦略のケーススタディ:Chegg
12. プロダクト戦略作成の手引き


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