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#6 Netflixにおけるパーソナライズ戦略

この記事は、NETFLIXで最高製品責任者(CPO)を務めていたGibson Biddle 氏によるプロダクト戦略に関するエッセイ、6. A Strategy for Each Swimlane の翻訳記事です。(翻訳許可取得済み)

これまでのあらすじ

「1. DHM モデル ー コピーされにくく、顧客が喜ぶ、利益を高めるプロダクト戦略」から「3. 戦略からメトリクス、戦術へ」まで、DHMモデルという戦略の仮説を出すためのフレームワーク・具体例を紹介しました。

□ 戦略の仮説を出すための3つの観点 (DHMモデル)
D
elight : 顧客に喜びを届ける仮説は何か?
Hard-to-copy : 他社に模倣されにくくするにはどうすべきか?
Margin-enhancing : 利益を生むにはどうすべきか?

「4 戦略を良し悪しを見分ける"プロキシメトリクス"という考え方について」では実際にNetflixで検証した戦略を交えながら、戦略の良し悪しを判断するプロキシメトリクスの考え方に触れました。

プロキシメトリクスは、戦略を検証するためのわかりやすい指標であり、KPIなどと似たような考え方なのでした。 (KPIよりも戦略の検証や実験にフォーカスした指標)

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NetflixのDHMモデルに基づく戦略、レコメンデーションは当初2%しか使われていなかったが、現在は80%以上使われている

「5. 戦略を実現するための施策の出し方について」では、チームでの施策発散をどのように行うかについて、ボトムアップ的なやり方とトップダウン的なアプローチがあることを紹介。

どちらのアプローチにせよ、「戦略/プロキシメトリクス/戦術がきちんとつながっているかどうか」が本質であったのでした。

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チームでの戦略を明確にする

これまでは、全体的なプロダクト戦略を定義することに焦点を当ててきました。組織内の各プロダクトリーダーも、自分たちのチームの戦略を明確にすることが不可欠です。

今回は、2006年頃のNetflixのパーソナライゼーションチームの例を紹介します。当時、トッド・イエリン (Todd Yellin) は、エンジニア、デザイナー、データアナリストからなるグループのプロダクトリーダーでした。現在トッドはVP of Product (最高製品責任者) を務めています。

トッドは、製品チームの目標がサービスの継続率向上であることを理解していました。そして、パーソナライズされた体験がこれを達成するのに役立つと仮説を立てました。

トッドが立てたプロキシメトリクスは以下の通り:

サービスの利用開始から最初の6週間で
50本以上の映画を評価した新規会員の割合

彼の見立てはこうでした。

「会員がたくさんの映画を評価したいと思っているということは、つまりパーソナライズされた映画の選択を大切にしているだろう。」

そのようなプロキシメトリクスに基づいて、いくつかの実験的なプロジェクトを試みたのでした。

これから紹介するのは、パーソナライズ戦略チームの具体的な戦略やプロジェクトについてです。

パーソナライズ戦略チームのアプローチ

当時は考えは以下のようなものでした。

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パーソナライズチームの戦略・指標・プロジェクト

Netflixでは、メンバーから多くのデータを収集し、映画に対する評価やサイト上の行動を通じて、映画に関する好みを把握していきました。

ジャンルや出演している俳優、監督、コンテンツの満足度やその他映画の詳細な属性など、各映画に関する多くのデータを収集していました。

ユーザーの映画の好みに関する深い知識と、各映画に関するデータがあれば、マッチング・アルゴリズムを使って、ユーザーにパーソナライズされた映画の選択肢を提供することできます。

戦略・施策の検証を繰り返す中で徐々にパーソナライズ戦略がユーザーの継続課金率に良い影響を与えることが証明されていきました。

私は Netflix のパーソナライズへの取り組みを「大いなる決断 (Leap of faith)」と表現しています。パーソナライゼーション戦略が継続率を向上させることを証明するのに10年以上もかかったからです。

しかし、プロキシメトリクスが着実に改善されたことで、最終的には成功するという強い確信を得ることができました。

ちなみに、2005年には、以下の各分野に焦点を当てたプロダクトリーダーを配置しました。

・パーソナライゼーション
・新規会員獲得
・フレンズ機能
・DVDの商品化計画
・ヘルプとアカウント
・中古DVD販売
・広告

各プロダクト・リーダーは、チーム内のエンジニア、デザイナー、データ・アナリストのと連携し、それぞれのエリアの主要戦略、プロキシメトリクス、プロジェクトを設定していきました。

プロダクト戦略をつくるためのエクササイズ

組織内の各戦略について、各戦略のリーダーが向上させるべきプロキシメトリクス、つまりチームの最重要指標を、戦略、プロジェクトとともに決めましょう。

この作業は各戦略のプロダクトリーダー (プロダクトマネージャー)が行うことが理想です。

次のエッセイでは、あなたのハイレベルな仮説とプロジェクトを4四半期のロードマップに落とし込んでいきます。

次のエッセイ : 7. 戦略からロードマップへ

このシリーズの索引

0. いかにプロダクト戦略を定義するか
1. DHMモデル
2. DHMモデルから製品戦略へ
3. 戦略からメトリクス、戦術へ
4. 事業仮説を正しく測るプロキシメトリクス
5. 戦略を実現する施策の出し方
6. Netflixにおけるパーソナライズ戦略
7. 戦略からロードマップへ
8. 製品ビジョンを探索する強力なチームづくり
9. 組織のフォーカスを決めるGEMモデル
10. 戦略を議論する場の設計について
11. プロダクト戦略のケーススタディ:Chegg
12. プロダクト戦略作成の手引き

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