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経セミ、2021年の特集を振り返る!

早いもので、2021年もあとわずかとなりました。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか?

21年も20年に続き、経セミ編集部はオンライン中心での対談やインタビュー収録、在宅勤務も多めで、オンライン志向でいろいろなツールやサービスを多用した1年でした。便利な面もあり、そうでない面もあり、いろいろと思うところもありますが、新しいツール、デジタル化やデータ利用拡大などに秘められたさまざまな可能性などは、特集の内容からも感じられたかなぁ…と思っています。

というわけで、このnoteでは、2021年の経セミ特集の内容をざっくりと振り返りたいと思います! なお、ラインナップは以下の通りです:

■ マクロ経済をミクロの視点で考える

2021年の最初(2・3月号)は、マクロ経済学の特集でした!。

かなり野心的な企画のつもりで、標準的なマクロ経済学のモデルで用いられる仮定としておなじみの「代表的個人(家計、企業など)」――平均的な単一の経済主体――を想定するのではなく、複数のタイプの家計や企業を想定することで、どんな新しい経済の姿が見えてくるのかを解説いただいた特集です。

このような、経済主体の異質性をモデルに組み入れて、家計や企業単位のミクロの視点でマクロ経済を分析するアプローチにぐっとフォーカスし、以下のラインナップの通り多岐にわたるトピックの研究動向を、各分野の専門家にご紹介いただきました。

対談:多様性に目を向けたマクロ経済学の可能性……北尾早霧×向山敏彦
・家計間の異質性を考慮した金融政策分析……須藤直
・資産・所得の格差はどこから来るのか……楡井誠
・少子高齢化と社会保障の課題にどう取り組むか……西山慎一
・経済ショックは労働市場にどのような影響を与えるか……宮本弘曉
・企業のダイナミクスとマクロ経済……及川浩希

以下のnoteでは、巻頭の北尾早霧さんと向山敏彦さんによる対談で紹介された研究や、その他の関連情報をギュッとまとめてリンク付きで記載しています。どんな話題が扱われているかもざっくりつかめるように書いていまするので、ぜひご覧ください!

また、この号の内容は全国紙をはじめいろいろな媒体でご紹介いただきました。以下ではその一部として、日本経済新聞様の「経済論壇から」、読売新聞様の「論壇誌 2月」、そして朝日新聞様の「論壇時評」で言及いただいた記事を挙げています。こちらもぜひチェックいただけたら嬉しいです。

なお、2021年2・3月号の特集のみを収録した廉価版(550円)のe-bookも発売中です。この特集をご覧いただくと、「マクロ経済学って、思っていたものとイメージが違った」「こんな問題も対象にするのか!」「生活と遠くて実感が持てなかったマクロ経済学が、実は深く影響を与え合う存在だった」ということを感じていただけるではないかと思います。
よろしければ、ぜひ覗いてみてください!

■ 経済学でデータを活かす

新年度に入って4・5月号は、「データ」に着目した特集です!

「いや、そんなこと今さらドヤ顔で言われても…」「経済学でデータを使うのなんて当たり前じゃん…」と思われるかもしれませんが、この特集はちょっと違います

近年の技術進歩やデジタル化の進展の影響もあって、日常にデータが溢れかえるようになりました。使えるかもしれない情報、データが爆発的に増えています。そんな状況下で、経済学という「思考の型」が、「データをどう集め、どう使えばよいか」をガイドしてくれるという意味で、より重要になってきているのではないか。そんな問題意識の特集になりました。

ラインナップは以下の通りです。巻頭の鼎談は、企業との共同研究を積極的に行い、特許も複数取得し、東京大学エコノミックコンサルティングのチーフエコノミストも務める、一橋大学の宮川大介さん、日本経済新聞社デジタル事業情報サービスユニット担当部長の久慈未穂さん、東京商工リサーチ経営企画室リーダーの柳岡優希さんにお集まりいただき、実務の視点からのデータの重要性、経済学が果たせる役割などについてディスカッションいただきました。

鼎談:「データ×経済学」の可能性……宮川大介×久慈未穂×柳岡優希
・データと経済学の近未来像……北村行伸
・HOW TO USE 人流データ……水野貴之
・ニュースで読み解くマクロ経済:テキストデータを用いた分析方法……新谷元嗣・五島圭一
・行政データで明らかにする教育の効果……田中隆一
・データでみる賃金格差とその要因……勇上和史

以下のnoteでは、鼎談と各特集記事の内容をざざっと紹介しつつ、関連情報もいろいろ紹介していますので、ぜひご覧ください!

また、この号も廉価版e-bookが発売中です!

■ 社会の仕組みを経済学で創る

続く6・7月号では、「マーケットデザイン」と呼ばれる分野を特集しました。ゲーム理論などが応用される分野で、オークション理論やマッチング理論などが有名ですね! その中でも、この特集では、「経済理論が現実の社会問題やビジネスにどう応用されうるのか?」を問題意識として掲げ、実際にビジネスや社会問題の解決に活用されている皆さまにご登場いただきました。

特集のラインナップは以下です。巻頭の鼎談では、UTMD(東京大学マーケットデザインセンター)を立ち上げた東京大学の小島武仁さんと、サイバーエージェントAI Labの経済学チームの森脇大輔さん、安井翔太さんにご登場いただき、実際に進めている待機児童問題やワクチン配布、人材配置などに関するプロジェクトなどもご紹介いただきつつ、実務で経済学を活かすことの可能性についてディスカッションいただきました。

・鼎談:経済学を役立つ道具にするために……小島武仁×森脇大輔×安井翔太
・より良い就活ルールをマッチング理論で創る……栗野盛光
・オークション理論と不動産オークション……坂井豊貴
・マッチング理論で考える望ましいワクチン配布……野田俊也
・経済学で人材活用――マーケットデザインで社員の配置を考える……小田原悠朗

より詳しい特集の内容紹介は、以下のnoteでまとめているので、ぜひチェックしてみてください!
新しい就活ルールの提案、実際に取り組まれている不動産オークションビジネスでのオークション理論活用など、面白くて実践との接点も感じられる記事が満載です。

なお、この号では以下の記事を本誌発売に先駆けて公開するなどの新しい試みもしてみました。タイミング的に、コロナワクチン接種の推進と各自治体へのワクチン配布が課題となっていた時期だったので、発売を待たずに適時には公表できてよかったと思っています(先行公開に際してお世話になった皆さまに、この場を借りて深く御礼申し上げます)。

もちろん、この号も廉価版e-bookが発売中です!

■ 経済論文の書き方[はじめの一歩編]

前の2つはビジネスや政策との接点にフォーカスしていましたが、一転して夏の8・9月号では学生目線で行きました。そう、2020年の8・9月号でも大好評をいただいた企画、「論文の書き方特集」です!

20年は「実証編」でしたが、今回は「はじめの一歩編」。

「これから論文(卒論、グループ論文や課題レポート、あるいは修論でも)を書き始めよう!」という皆さまに向けて、「論文ってそもそも何なのか?」「先行研究を読めと言われてもどうやって選べばいいの?」といった疑問にお答えしつつ、ややテクニカルな部分やTIPS的な部分も伝授いただけるようなラインナップを心掛けました。

座談会:論文の書き方はどう教えている?
  リサーチクエスチョンのみつけ方/先行研究の探し方、読み方/
  アカデミック・ライティングの心構え/論文の内容を伝えるコツ
  
……中室牧子平賀一希室岡健志森知晴
・統計分析で論文を書くための手順とコツ……小原美紀
・独自性のある経済論文を書くコツ……萩原里紗
・経済論文執筆の「はじめの二歩目」と具体例……本田圭市郎

「論文の書き方」企画は、ウェブ付録としての情報提供も充実させられるように心がけています。今号も、以下のnoteにて、記事内で紹介された情報源や参考文献、お役立ちサイトなどを整理してリンク付きで紹介しているので、ぜひご活用ください!

実証編なども含む、関連情報提供noteは、以下の「マガジン」でまとめています。こちらのマガジンには随時コンテンツを投入していきますので、もしよろしければフォローしてみてください!(「実証編」のウェブ付録は、すでに3つ公開中です!!)

そして、毎回すみません、この号も廉価版e-bookが発売中です!

■ 国際貿易のゆくえ

東京オリンピックも終わりだんだん涼しくなってきたころ、9・10月号で特集したのは、「国際貿易」です。

2020年以降、新型コロナウイルス・パンデミックは、世界中の社会・経済を大きく変えています。その影響は当然、国境を越えた財・サービスの取引や人の移動、国際貿易にも及んでいます。とはいえ、貿易の変化は急に生じているわけではなく、2008年の世界金融危機以降、保護主義の台頭や、グローバリゼーションがもたらす格差への懸念など、世界の貿易体制は10年以上も前から、さまざまな揺らぎに直面してきました。

この特集では、そうした背景を抑えたうえで、「コロナ禍での移動の制約や、オンライン化・デジタル化の急速な進展で貿易はさらにどう変わるのか?」 あるいは、「人権や環境などにも目を向けつつ、今後世界の貿易体制はどのように変わっていくのか?」などなど、過去・現状把握+展望という形で、以下のラインナップでさまざまな議論を紹介する特集です。

対談:新型コロナ危機を超えて、貿易のあるべき姿を考える……伊藤萬里×椋寛
・貿易を取り巻く情勢と政策的課題……木村福成
・グローバル・サプライチェーンは変わるのか……伊藤恵子
・国際貿易は雇用と格差をどう変えるか……笹原彰
・サービス貿易の重要性:その現状と今後……伊藤由希子

以下のnoteでは、青山学院大学の伊藤萬里さんと学習院大学の椋寛さんという、二人の国際貿易の専門家による対談の内容をざざっと紹介しつつ、そこで挙げられた近年の研究などをリンク付きでまとめています。単に「コロナと貿易」を考えるだけでなく、近年の国際貿易の理論・実証研究の動向を追いかけることができるのではないかと思います。

そしてなんと、この特集も、廉価版e-bookを提供中です!

■ 気候変動にどう向き合うか?

あっという間に冬に突入し、2021年発売号の最後、12・1月号では、「環境」を特集しました。11月にはCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)も控えているということで、環境経済学の近年の研究を踏まえて、特に気候変動に着目した特集を組んでみよう!ということで、以下のようなラインナップでお送りしました。

対談:望ましい環境政策デザインに向けて……小西祥文×横尾英史
・実証ミクロ × 脱炭素政策――「環境実証」で政策を考える……小西祥文
・ガソリン消費をどう減らす?――モバイルアプリデータによる実証……田中伸介
・気候変動の影響をどう考えるべきか?……内田真輔
・空間モデルで経済活動と環境の相互作用に迫る……津田俊祐

巻頭対談は、慶應義塾大学の小西祥文さんと横尾英史さんによるディスカッション。お二人とも実証的な環境経済学がご専門で、近年特に注目している環境関連の問題、それを分析するための環境経済学の進展と最近までの動向、政策現場との対話や連携についてなどなど、非常に骨太な議論をいただきました。

以下のnoteでは、その対談で言及された研究や議論の背景にある情報リソースなどを、記事の内容も少しずつ紹介しながらまとめて提供しています。他の特集記事についても少しずつ紹介していて、いずれも最先端の興味深い内容ばかりです。ぜひとも覗いてみてください!

なお、この号の制作中に2021年のノーベル賞が発表になりました。偶然にも物理学賞は気候変動関連で真鍋淑郎先生が受賞されたのと、上記の実証ミクロ経済学を応用した環境経済学の発展で特に重要な役割を果たし、対談記事の中でも分厚く紹介されている「信頼性革命」に関連する、カード、アングリスト、インベンスが経済学賞を受賞しました。同号では、東京大学の川口大司さんによるノーベル経済学賞解説記事を掲載し、現在は経セミnoteで公開中です。ぜひご覧ください!

この号の廉価版e-bookは……、現在発売準備中です><

■ そして、2022年のトップバッターは……

ツイッターでも簡単にご紹介していましたが、2022年最初の特集は「経済史」です! 年末現在、絶賛制作作業中なのですが(!?)、以下のようなラインナップで、いずれも非常に充実した面白い内容が揃っています。

特集タイトルは「『歴史データ×経済学』の可能性」。デジタル技術の進展もあり、さまざまな歴史的史料が活用可能性が広がっています。本特集ではその点も踏まえて、経済史研究に秘められた可能性、その面白さをお伝えします。

歴史学的なアプローチで過去の事実を紡ぎ、記述していくことの重要性や、史料を数量化して実証分析を行うことで因果関係を説明する研究アプローチの可能性、そして双方のアプローチが組み合わさる、協働することで生まれる新たな可能性などなど、具体的な研究事例を紹介しつつ解説頂いています。ぜひご期待ください!!

鼎談:経済史のすすめ……岡崎哲二×小島庸平×山﨑潤一
・「経済史」と “Economic history”……有本寛
・健康・公衆衛生と経済発展――近代工業化期における日本の経験……井上達樹
・平等性から生まれた貧困社会――前工業化期日本の歴史データから見えてきたもの……公文譲
・プロダクトイノベーションと企業の成長――明治・大正期日本の綿糸紡績産業データから……大山睦
・特許データで明らかにする戦前期日本のイノベーション……中島賢太郎

なお、経セミで経済史の特集を組ませていただくのは、2012年8・9月号(「経済史研究の新潮流」)以来だったようです。この号も非常に充実していて、現在は廉価版e-bookでご覧いただけるように復刻してみました!

■ おわりに

というわけで、2021年発売の各号の特集を簡単に振り返り、22年第1弾の特集についても少しだけご紹介させていただきました。

本年も、たくさんの方々にご覧いただき、フィードバックなどを頂戴することができて、大変うれしく思います。厚いご支援に改めて深く御礼申し上げます。2022年も、少しでも皆さまの学習等々にお役に立てるように、また経済学(とその関連分野、トピック)にご関心をお寄せいただけるきっかけを作れるように、頑張っていきたいと思います。

本年は誠にありがとうございました。来年も、何卒よろしくお願い申し上げます!

なお、ツイッターでも随時情報を発信していますので、フォローいただけたら嬉しいです。ぜひよろしくお願いします!


サポートに限らず、どんなリアクションでも大変ありがたく思います。リクエスト等々もぜひお送りいただけたら幸いです。本誌とあわあせて、今後もコンテンツ充実に努めて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。