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日本プロ野球(NPB)のリーグ運営とか経営とか。前置きが長い人。 Twitter : …

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日本プロ野球(NPB)のリーグ運営とか経営とか。前置きが長い人。 Twitter : @keiji_nicholas

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NPBファームリーグ拡大:エイジェック球団の皮算用

材派遣業のエイジェックが、NPBファームリーグ拡大構想に対し、栃木県を本拠地に置くことを念頭に参入申請を行うことを、7月18日に正式に表明した。申請を正式に表明したのは同社が初めてである。同社はBCリーグ・栃木球団や社会人野球チームを経営しているが、これらの球団は維持しつつ、ファームリーグに算入する新球団を設立することを目指す。 記者会見では、新球団が参加を認められた場合の数値的な目標を発表した: 観客動員目標: 15万人 売上目標: 15億円 総人員数: 70名(選

    • NPBファームリーグ拡大に関する野球協約上の諸課題②:現在明らかになっているスキームと野球協約の関係

      ファームリーグ拡大の枠組みについて、報道で色々と明らかになって参りました。その内容をまとめた上で、それぞれの内容が野球協約の関係条文とどのようなつながりがあるか、整理してみますね。おかしなところがあれば教えてください。 新規参入団体数 新規参加球団数は「2球団以上」 現在ウエスタンリーグは5球団・イースタンリーグは7球団で構成。球団数を偶数にすることが目標(NPB井原事務局長)としており、審査で認められれば2球団以上の参加も理論上はあり得る。 タイムライン 新規参入の

      • NPBファームリーグ拡大に関する野球協約上の諸課題①:野球協約の建付けのお話

        NPBはファームの球団数を拡張することを正式に表明し、2024年または2025年からの参入を希望する事業者の募集を開始した。現在ウエスタンは5球団・イースタンは7球団と、いずれも奇数となっている状況を是正し偶数にすることを目指すという。 この動きに対し、本稿執筆段階において、BCリーグ所属のアルビレックス新潟、九州アジアリーグ所属の火の国サラマンダーズ、東京の投資会社・ハヤテインベストメント社が参入に名乗りを上げている。 NPBの組織としての運営ルールを定めた、「プロフェ

        • 日ハム「ノンテンダー」案件:これまで経過と少しの所感

          日本ハム球団から3選手が「ノンテンダー」となった件について、これからの論考と議論の参考資料にすることを目的に、これまでの経過と一次資料・関係者の証言と発言のまとめます。あとちょっとだけ所感を。 日本ハム球団「ノンテンダー」発表 2021年11月16日、日本ハム球団は当時同球団に所属していた西川・大田・秋吉の3選手について、「ノンテンダー」とし、保留手続きを行わないことを発表した。 「ファイターズとの再契約の可能性を閉ざすものではない」としたものの、結果として3選手ともに

        NPBファームリーグ拡大:エイジェック球団の皮算用

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          中田翔出場停止の後始末

          中田翔は同僚選手に暴行を加えた咎で、日本ハム球団によって2021年8月11日に出場停止の処分を受けた。その後の動向が注目されたが、8月20日に讀賣巨人に無償トレードによって移籍することが発表された。 この顛末にまつわる野球協約・統一契約書に基づく扱いについて見てみたい。 出場停止期間は不当に短いか8月11日に出場停止選手と公示され、移籍に伴い8月20日に出場停止の処分が解除されることを公示された。当初出場停止期間は「当面の間」として公示され無期限の厳罰であることが示唆され

          中田翔出場停止の後始末

          NPBにおける「出場停止処分」の境界

          2021年8月11日、日本ハム球団は同球団所属の中田翔選手が、同球団の選手1名に対し暴力行為を行ったことを公表した。日本ハム球団は「統一契約書第17条に違反し、野球協約第60条(1)の規定に該当するものと認定した」とし、出場停止の処分を下した。同日、NPBからも同選手を出場停止選手とすることを公示した。 出場停止選手として公示されるケースはどのようなケースなのかを考察する。 野球協約における出場停止処分野球協約においては第60条(1)で出場停止選手を下記のように定める。

          NPBにおける「出場停止処分」の境界

          NPBは藤田倭選手を選手として採用できるか?

          東京五輪のソフトボールで金メダルを獲得したソフトボール日本代表。 活躍した選手を、応援しているプロ野球チームに獲得してほしい、といった声がTwitterで多数見られた。特に二刀流選手であり3本塁打を放った藤田倭選手の獲得を熱望するプロ野球ファンが多かったように思われた。もちろん冗談で仰っていたのだろうが、ソフトボールの女子選手をNPB球団が選手として契約することは不可能なのだろうか? NPBの諸規定NPBにおいて選手の資格・獲得方法を定める規定は、日本プロフェッショナル野球

          NPBは藤田倭選手を選手として採用できるか?

          プロ野球オールスター:出場辞退と欠場

          2021年のオールスター試合では、田中将大・浅村栄人・近藤健介の3名が欠場することが、NPBによって試合当日に発表された。(NPB発表文) オールスターへの出場を辞退すると、オールスター明けの試合から10試合に出場できなくなることはよく知られているが、この3選手の場合はどうなるだろうか。 野球協約のオールスター辞退に関する規定オールスター試合への出場を辞退した場合、オールスター明けの試合から10試合自動抹消する、という内容は野球協約の86条に規定されている。 野球協約 

          プロ野球オールスター:出場辞退と欠場

          育成選手を制限選手にすることは可能か

          コラスに次いで、アンディ・ロドリゲス亡命かソフトバンクの育成選手でキューバ出身のアンディ・ロドリゲスが亡命した可能性がESPNの記者Daniel de Malas氏によって報じられた。 本当に亡命したか否かは2021年6月6日時点では明らかではないものの、五輪予選のために訪れた米フロリダ州において失踪したことは事実の模様である。ソフトバンク球団は状況を確認している。 ソフトバンク所属のキューバ出身選手では、2020年1月に当時支配下選手であったオスカー・コラスがMLBとの

          育成選手を制限選手にすることは可能か

          NPB球団 2019年・2020年売上高比較

          NPB球団の2020年の決算が少しずつ明らかになっています。以前のエントリーでは決算公告から読み取れる純利益の額を比較しましたが、報道や親会社の決算から、一部の球団の売上高も見えてきました。 コロナ禍の2020年、プロ野球球団が収入面でがどれだけの打撃であったのか、日本ハム・広島・西武・DeNA・阪神の例です。 単位: 億円 (* : 推定値/ ** : スポーツ事業セグメント全体) 日本ハム: 前年比ー55.0%売上高が北海道新聞の報道で明らかになっています。前年比で半

          NPB球団 2019年・2020年売上高比較

          NPB「リクエスト制度(リプレイ検証)」のルール

          ※2023年5月4日「リクエストから検証までの手順」を加筆し、検証時に多数決で判断することになったこと、「確証のない映像」についての基準を追記。 日本のプロ野球では、審判の判定に対してチームが疑義を抱いた場合、審判に映像による判定の見直しを求めることができる「リクエスト」という制度が2018年から導入されています。 映像による判定の検証=「リプレイ検証」は以前から導入されており、審判団が必要と判断した場合に実施されていましたが、2018年からは監督が審判団にリプレイ検証を要

          NPB「リクエスト制度(リプレイ検証)」のルール

          西武ホールディングス決算からライオンズ関係を読んでみる

          西武ライオンズの親会社である西武ホールディングスは、今日(2021年5月13日)に2021年3月期決算(通期)を発表しました。 ライオンズ関係の数字やトピックを拾ってみました。 ※下記のページ番号は、同社プレゼン資料(2021年3月期 決算実績)のページ番号です。 P.5:年俸の一部を特損に計上セグメント別営業利益のページに、事業別の特別損失の内容が記載されています。ライオンズは「その他」事業に属しますが、この事業では12億円の特別損失を計上しています。この摘要欄にこんな

          西武ホールディングス決算からライオンズ関係を読んでみる

          プロ野球球団2020年決算第1弾

          プロ野球球団のうち12月期決算となっている6球団の2020年度決算が出そろいました。(日本ハム・楽天・ロッテ・ヤクルト・広島・DeNA) コロナ禍で大打撃を受けたプロ野球各球団、どの程度のインパクトがあったのか、6球団の決算公告から数字を拾いました。 まずは利益(単位:千円) 4球団が赤字を計上しています。特に広島は前期4.87億円の利益から、29億円超の損失に転落しています。 一方でDeNAは利益を大幅に落としていますが、黒字確保。楽天は前期純損失から、黒字転換を果たし

          プロ野球球団2020年決算第1弾

          広島東洋カープ2020年決算を読む。

          あけましておめでとうございます。2021年のプロ野球が開幕し、3カードが終了しました。皆様お元気でしょうか?私は贔屓球団が連敗を重ねており、スポーツニュースが始まると、瞬発的にチャンネルを変える日々です。 2020年はプロ野球の経営にとってまさに厄年でした。 無観客での開幕に始まり、ようやく観客を入れることができるようになっても満席での興行はできない。入場料収入が大幅に減る一方で、感染対策のためのさまざまな経費が増大したと推測され、収支は真っ赤かになるであろうことは、シーズ

          広島東洋カープ2020年決算を読む。

          プロ野球:親会社の台所事情はいかに?

          プロ野球のペナントレースもあと1か月と少し。波乱の2020年シーズンも終わりに近づいてまいりました。10月26日にはドラフトが行われるなど、来シーズンに向けたチーム作りの動きが始まる時期ですね。 このオフは選手にとって厳しい動きが多発する可能性があると想像できます。感染拡大防止を目的とした観客数の制限により、各球団とも台所事情は大変厳しいのは明白。各球団の売上の約40%を占めるといわれる入場料収入が確実に剥落しており、チーム作りための実弾=年俸予算に影響があると想像できます

          プロ野球:親会社の台所事情はいかに?

          NPB:観客数制限の球団経営への影響を推計する

          7月10日から観客が入るようになった2020年のNPB。観客数が制限され、応援も声を出せないなどの制約はありますが、やはり観客がいた方が盛り上がりますね。本来であれば、8月以降は20,000人まで観客を迎える計画でしたが、感染拡大が収まらないために、8月いっぱいは観客数を5,000人までに制限して試合が行われます。この状態はいつまで続くのでしょう。。。 状況が改善しなければ、球団経営への影響はより大きくなっていきます。どれくらいの影響が想定されるでしょうか? 1か月でどれ

          NPB:観客数制限の球団経営への影響を推計する