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NPBファームリーグ拡大に関する野球協約上の諸課題②:現在明らかになっているスキームと野球協約の関係

ファームリーグ拡大の枠組みについて、報道で色々と明らかになって参りました。その内容をまとめた上で、それぞれの内容が野球協約の関係条文とどのようなつながりがあるか、整理してみますね。おかしなところがあれば教えてください。

新規参入団体数

新規参加球団数は「2球団以上
現在ウエスタンリーグは5球団・イースタンリーグは7球団で構成。球団数を偶数にすることが目標(NPB井原事務局長)としており、審査で認められれば2球団以上の参加も理論上はあり得る。

タイムライン

  • 新規参入の時期 24年シーズンあるいは25年シーズン

  • 2023年4月17日 第1回説明会

    • 参加した団体(報道で確認された団体のみ):ハヤテグループ:静岡市、エイジェック:栃木市、火の国サラマンダーズ:熊本市、アルビレックス新潟:新潟市、茨城アストロプラネッツ:水戸市、ビズリーチ

  • 2023年5月1日 参加申請開始

  • 2023年5月22日 第2回説明会

    • 参加した団体:信濃グランセローズ:長野市、富山GRNサンダーバーズ:富山県、石川ミリオンスターズ:石川県、鹿児島ドリームウェーブ:鹿児島市

  • 2023年7月31日 2024年参加希望申請締め切り

  • 2023年8月31日 2025年参加希望申請締め切り

  • 2023年9月30日 2024/25年参加一次審査完了

  • 2023年11月30日 2024年参加二次審査完了

  • 2024年9月30日 2025年参加二次審査完了

  • 審査後にオーナ会議の承認を得て参加が決まる。

ファーム規約は新規に加盟を希望する球団は、各リーグの運営委員会の全会一致の合意を得たのち、実行委員会の承認を得るものと規定している(15条)。報道によれば、運営委員会の事前の合意は必要なく、また実行委員会の承認後にオーナ会議の承認を得るものと伝えられている。
オーナ会議議長の讀賣・山口寿一オーナは、「加盟ではなく参加という新しい概念」での拡大であるとしており、手続きもファーム規約とは異なる手続きを踏む模様である。

審査の内容

  • 実行委員会が試合運営、選手育成、球団経営面などについて1、2次審査を実施。(2次審査は球場視察を含む)

  • 参入を希望する球団は、計画を書面で提出

    • 運営面:

      • 使用球場(野球協約第38条で規定した保護地域以外の府県にある球場)

      • 雨天でも練習が可能な室内練習場の確保

      • 寮など選手の生活環境の確保が必要

    • 育成面:シーズンを通じて2軍戦を遂行できる35人程度の戦力を抱えられること

    • 経営計画など

野球協約では、参入球団は資本金1億円以上の日本法人であること(27条)、発行済み資本総額のうち外国人の持ち株比率は49%を超えてはならない(28条)と規定している。現時点においてファーム球団にこのような規制を課するか否かは明らかではない。

https://jpbpa.net/wp-content/uploads/jpbpa-pdf/ag2022.pdf

野球協約では、現在の12球団本拠地が所在する都道府県を各球団の保護地域として規定している(37条・38条)。ファーム球団は現在12球団が所在している都道府県(北海道・宮城県・千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県・愛知県・大阪府・兵庫県・広島県・福岡県)以外に本拠地を設置する必要がある。

https://jpbpa.net/wp-content/uploads/jpbpa-pdf/ag2022.pdf

加入手数料

  • 参加球団は加入手数料及び参加預かり金を納入(合計で数千万円程度に抑えられる見込み)

  • 参加預かり金は5シーズン後には返還される。

野球協約は、NPBに加盟するには預かり保証金25億円(36条の5)・野球振興協力金4億円(36条の7)・加入手数料1億円(36条の8)の合計30億円を加入時に納入するよう求めている。
一方ファーム規約は、「加盟球団の加盟金の有無、加盟金額等はその都度実行委員会で決定する」(4条)としており、野球協約で定められた金額をファーム球団には適用しないことをあらかじめ想定している。
オーナ会議議長の山口寿一オーナは、「加盟ではなく参加という新しい概念」での拡大であるとした上で、30億円を求めることは現実的でないとも述べ、例外的な扱いとすることを示している。

編成対象選手

ファーム球団は、下記の選手と契約が可能

  1. ドラフト会議で指名されなかった選手

  2. 元NPB選手

  3. 外国人選手

  • プロ志望届を提出しなかったアマ選手は加入できない。

  • 上記の3類型の選手のうち、1.の選手が既存12球団に入団するには、ドラフト会議での指名を要する。

  • シーズン中の移籍:新規参入球団からは元NPB選手と外国人選手だけが、NPB球団への金銭トレードによる移籍が可能。移籍人数の上限は複数名の設定を案として検討している

選手の身分 ファーム球団と契約する選手は「支配下選手」と同等の扱いとなるのか、現時点では明らかではない。同等の扱いであれば、参稼報酬(年俸)の最低金額が420万円となる(89条)。仮に「育成選手」同等であれば最低金額は230万円となる(育成規約7条)。また「支配下選手」同等であればプロ野球選手会に加入することが可能となる。
任意引退選手 元NPB選手については、任意引退した選手がNPB球団に復帰する可能性が理論上はあり得る。そのような場合には、野球協約に規定された復帰手続きを経る必要があるのか、明らかではない(76条〜78条)

出典


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