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広島東洋カープ2020年決算を読む。

あけましておめでとうございます。2021年のプロ野球が開幕し、3カードが終了しました。皆様お元気でしょうか?私は贔屓球団が連敗を重ねており、スポーツニュースが始まると、瞬発的にチャンネルを変える日々です。

2020年はプロ野球の経営にとってまさに厄年でした。
無観客での開幕に始まり、ようやく観客を入れることができるようになっても満席での興行はできない。入場料収入が大幅に減る一方で、感染対策のためのさまざまな経費が増大したと推測され、収支は真っ赤かになるであろうことは、シーズンスタート前から容易に想定できました。

想定通りの結果の一つが、過日報道された広島東洋カープの決算です。

カープの2020年度決算

この記事に示された数字と、手元にある過去の数字からカープ球団の決算を簡単に紐解いてみます。

すごく乱暴な分析です。ご指摘・反論をいただけると幸いです。

2020年は大幅減収

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(単位:百万円)
手元にデータのある2010年以降で売上高は最低となり、前年比で実に-49%、ほぼ半減であります。
この原因は、観客数が制限されたことにほかなりません。

観客数はー76%

広島は2016年からのリーグ3連覇するなどの強さにより、2年間200万人を超える観客を集めてきました。しかし2020年は53万7千人あまりに過ぎませんでした。

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<理由>
・試合数が120試合に削減(ホームゲームは60試合)
・開幕当初は無観客試合(広島の場合、60試合中4試合)
・有観客でも当初は上限5000人(広島の場合、有観客56試合のうち最初の32試合)
・上限緩和後も定員の50%(広島の場合、16,500人)
全部コロナのせい。これらの制限により、当然入場料収入が剥落します。

入場料収入が大幅減

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過去4年間3割強を占めていた入場料収入が、大きく落ち込みました。総売上高の前年比下落率がー49%だったのに対し、入場料収入はー71%。観客数がー76%だったのですから、当然であります。
グッズ収入は前年比ー63%。球場を訪れるファンが少なくなれば販売機会が減るのは当然であり、またファンの財布の紐も固かったと推測されます。

一方で「その他」はー26%と減少幅が緩やかです。入場料・グッズ以外の収入は主として下記のようなものがあると思われます:
・ファンクラブ会費
・広告料/スポンサー料
・放映権料
・ライセンス料(肖像権・商標使用等)
これらの収入が少なかった理由は、先に示した記事にも記述はありません。ゆえに推測ですが、これらの収入をもたらす主体が、ロイヤリティが高い人/法人であり、コロナ禍によっても、そのロイヤリティに影響が少なかったことが要因ではないでしょうか。ロイヤリティの高さを感じる数字がもう1つ。

カープファンのロイヤリティの高さは2020年も

カープのチケット争奪戦は毎年話題になるほどで、人気の高さを示しています。観客数のデータを集計してみると、2020年もそのロイヤリティの高さが落ち込んでいないさまが垣間見えました。

この表は2020年の球団ごとの主催試合の観客数を、総観客数順に並べたものです。

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広島は阪神に次ぐ観客を集めています。ただ2020年の総観客数は、球団ごとに有観客で実施できた試合が大きく異なっているほか、ホーム球場のキャパシティにも影響される数字のため、単純比較はできません

そこで、2020年の各試合の観客数の上限に対し、座席が何%埋まったか=定員充足率を計算してみました。

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※観客数はNPBの発表値を参照。観客数の上限は、各種報道から拾ったうえで集計したもののため、実際の数値とは異なる場合があります。

5球団で90%を超えていますが、カープは97%。ほぼ満員です。

カープのホームゲームの定員充足率は2015年以降90%を超えていました。

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2020年はMAZDAスタジアムの満員である33,000人に対しては3割を下回ったものの(実線部)、上述の通り制限がある観客数の上限に対しては、97%の座席が埋まっており(点線部)、ファンのロイヤリティの高さが維持されていることが窺えます。

プロ野球人気を継続できるか

カープの決算と観客数をみると、コロナ禍に見舞われた2020年もカープファンの皆さんのロイヤリティが維持されている様子が見えました。これまでの歴史と、カープ球団の取り組みが功を奏した結果であると推測します。

まとめに入ろうとしているにも関わらず話が飛びます。
先日、あるミュージシャンのマネジメント的な仕事をしている方と話す機会がありました。いまの最大の心配事は「コロナ禍が過ぎた後に、ファンが戻ってきてくれるか?」とおっしゃっていました。
ライブもできない、できても限られた観客数。オンライン・ライブではお客さんの満足度も低い。
そんなファンとの距離が離れている状態となってはや1年。コロナ禍が過ぎるのは少なくともあと1年はかかるでしょう。2年も経てば、ファンの興味がシフトしてしまい、今度ライブをやっても、もうお客さんが来てくれないのではないか?

これ、プロ野球も同じですよね。
去年は週末を中心にチケットが入手しにくいし、そもそも外出を控えていた人も多い。今年は、キャンプは無観客、143試合が有観客で挙行されるもまだまだ上限があったり。そもそも野球なんか見てる場合じゃなくなっている人も少なからずいる。
ファンが野球に触れられる機会が減っている2020~2021年の果てに、2019年までのようなプロ野球の人気が継続しているでしょうか?また更なる人気の向上は望めるでしょうか?

各球団が今後どのような取り組みを行ってファンの関心をつなぎとめるのか注目しています。そして、長期的なロイヤリティの維持・向上には、カープの長年の取り組みが参考にされるべきものではないか、というのが今回の決算を紐解いた感想です。


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