東野ワトソン

芸人です。

東野ワトソン

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最近の記事

呑んで忘れたい6

目が覚めると唇がやけに乾燥している 喉が異常に乾いている不思議なものだ お酒とは液体であり大量に摂取し水分で 満たされている気にはなるが エチルアルコールのせいで逆に 水分がなくなっているのだ。 コップ一杯の水を口へ流す 喉から食道へ食道から胃へ水が 走っているのが分かる。 どうしてだろう、このコップ一杯の水以上に 美味しい飲み物などないのに 人は日が沈みだすとお酒を飲む。 時間は14時を過ぎた頃 もうバーのバイトへ行かなく

    • 呑んで忘れたい5

      「え、どうするんですか?西蓮寺さん」 「まぁ一応、俺が店長だからぁ詫びを入れに。。」 そういって店長は腰にぶら下げた鍵の一つを 店の奥にある金庫に向けて席を立つ。 「諭吉が一枚、二枚・・百枚と」 「百万円?そういうものなんですか?」 西蓮寺が申し訳なさそうな顔をしながら俯く 「百万じゃ怖いから200諭吉持ってか」 「二百万ですか?!」 「じゃあタクトいくよ」 そういって店長と西蓮寺さんは怖い大人の 事務所へと行くことになった。

      • 呑んで忘れたい4

               呑んで忘れたい4 目が覚めたのは14:07 口と目の乾きを覚えながらも つい先ほど自分が異空間で酒を飲んでいたこと 自覚する、ずいぶんと昔のことのように感じる。 充電を忘れたスマホは青く光っている 通知が6件きている。 「今日も来てねぇ」と店長からである そうか自分は歌舞伎町で働くのかと改めて 認識してしまう。 歯を磨き少し伸びた髭を剃って家を出た。 昨日から何も食べてないと胃袋が教えてくれる 少し早いが新宿へと向

        • 呑んで忘れたい3

          「アンタモノミナサイヨ」そう言われて もうすでに空になったシャンパンが並べられた 席に焦りを感じながら座る。 西蓮寺さんがすでに仕上がった表情をうかべ 2人の確実に成功者と思われる女性二人を 相手にしている。 「エレンくん紹介するね、こちらチョウ社長と  イー社長、お金もちだぞ!」 「コラ、ワタシタチヲカネデミテルノカ!」 なんとも愉快な空間だ。 「カワイイ、カオシテルネ、シンジンクン」 おそらく40代だが一般的に美魔女の類いに 入るであろうチョウ社長

        呑んで忘れたい6

          呑んで忘れたい2

          「名前どうする?」店長から問われる 「別にこだわりないです本名でもいいです」 それを聞いて顎に手を当て何かを考える店長 なぜか指を折りながら数えている。 「好きなものとかないの?」 「え、音楽とかアニメは好きですかね」 「好きなアーティストは?」 「OasisとかQUEENとか」 「あ、知らないな俺、椎名林檎しか聞かないし」 ・・・マジで知らんし。 「アニメは何が好き?」 「進撃の巨人とかですかね」 「いいじゃん、おっけー決めた

          呑んで忘れたい2

          呑んで忘れたい

          街を歩けば人目もはばからず まだ日が昇る前は浮かれていた者の 吐瀉物をカラス達が掃除している この街は金と欲望がいくえにも 交差する歌舞伎町。 「頭痛てぇ・・」 木南秀(きなみすぐる)は 自分の店の照明とは違う太陽のまぶしさに 目を細めていた。 その町にはもう電車が動いているのにも 関わらず緑茶割りのロング缶をもって 床につけば記憶に残りもしない会話をする 人と人がいる。 秀は去年大学を卒業した23歳 就職活動が面倒にな

          呑んで忘れたい

          ねぇ、春。#1

          奪う勇気を捨てた者たちは 寄り添うこともなく にわかに夜は消えた 202X年4月 僕は、夜の桜を眺めている。 周りには必要以上の声量で会話をする若者 ワンカップの酒を片手にタバコを吸う老人 人の目を気にせずペットボトルをマイクに見立て 漫才を練習する若い二人・・・ 僕の名前は吉武孝弘、31歳になる 社会人2年目の何者でもない男だ。 この季節になる度、あらゆる所から 「何かの始まり」という名のパワーが溢れている 特別な何かがあるわけではないが溢れている 匂いのせいなのか、

          ねぇ、春。#1

          2021年を振り返る

          世間が緊急事態宣言発令時 僕は何をしていたのだろう思い返してみる 1月神保町よしもと漫才劇場がまだ 花鳥風月システムだった。 風ランクであった元コンビ712は 鳥クラス昇格に向け互いを鼓舞していた 1/7 風~戦 堂々の一位 今では想像できないあれですね😅 1/25 風~戦 ランク外 まさかのギリギリ入れ替え戦参戦 1/30 戦 鳥×風 奇跡的に鳥クラス昇格 2月鳥クラスとしてバトルライブに参戦… 全3回最下位、鳥クラス総合最下位 圧倒的飛べない鳥に。 この

          2021年を振り返る

          DMと君と。♯14

          公園で相方とネタ合わせをする。 昨日、急に電話したせいかすこし 互いに漫才のテンポが合わない 確実に僕のせいだろう。 僕の中で何か変わったことがあったとはいえ コンビとしての日々は何一つ変わらない 未来人という存在、おまけに娘という 衝撃的なシチュエーションを体感したとしても 僕の中で起きた小さな話だ。 相方はいつも同じところを間違える 何も変わらない、何も産まれない、何もない それも大切な何かではある。 ただ僕には芸人として明確な目標ができた 僕にも携わってくれた人た

          DMと君と。♯14

          DMと君と。♯13

          駅内が一瞬凍りつく。 叫び終わった時、自分の突発的な行動が 迷惑行為だと気付かされる。 「私のこと呼びましたか?」 腰の曲がったお婆さんが話しかけてくる いえ、違います。 そう、お婆さんの先にいる君。 目を開いてこっちを覗いている友美。 完全に社会不適合者と思われてしまった自分は 友美には近づかない。 少し時間が経ってから友美のほうから 近寄ってきた。 「どうしたの急に大きな声出して…」 向井彩奈にそっくりである。 僕と友美の間からあんな子が生まれるのか 今にも崩れそ

          DMと君と。♯13

          DMと君と。♯12

          僕は頭の中が飽和状態になる。 目の前にいる人物が自分の 娘であるという驚愕の事実を知らされたからだ。 某番組の悪いドッキリじゃないか いや、売れてない芸人にそんなことないか コーヒーの味がしない。 思い当たるふしも無いわけではない 挨拶の語尾に飲食物をつける癖が 友美にはある、おはヨーグルト等 この向井彩奈のDMの語尾もそうだ。 そして何より声が似ている。 少しかすれた声…白い肌… どことなく目の形が僕に似ている。 「あ、僕はその事実を知ってどうすればいい」 「パ

          DMと君と。♯12

          DMと君と。♯11

          店を出ようとする父の手を掴んだ 「私の話をちゃんと聞いて」 私の名前は向井彩奈 令和4年生まれの24歳 職業は警視庁科学調査班に所属する警察官だ。 令和20年より試験が開始されていた 時差移動式調査に携わっている。 簡単にいうとタイムマシーンである。 令和になり時空移動は研究が積極的に進められ 令和17年は事実上、時空の移動は可能になった。 自主的訓練のもと令和3年に来たのだが それには理由がある。 私の家族は父と母の3人 母は先日50歳という若さで他界した。 癌で

          DMと君と。♯11

          DMと君と。♯10

          体が重い。そう表現したくなる朝 時刻は11:21 結構寝てしまった。 相方からラインが来ている。 10:00に今起きたと、了解と返す。 ライブまでの流れは食事→トイレ→一服 →歯磨き→髭剃り→髪のセット このルーティーンを自然とやっている 準備を終え家を出た 今日は人が少なく感じる 駅までの道が自分のためにあるかの様に 駅に着いて飲み物を買う。 電車が予定通りの時間にくる 運良く席に座りスマホでネタの台詞を確認する 今日のライブで今月は最後。 来月にいいイメージで持って

          DMと君と。♯10

          DMと君と。♯9

          右脳の痛みが走り目が覚める。 テーブルを見ると飲みかけのチューハイが 並べられている。 吐き気もしてくる、水の味が苦い。 現在18:02朝の出来事から半日が経っていた 今思えば過去に戻ったかの様な 時間を過ごし不思議な気持ちになる この頭痛が現実に戻ったと改めて知らしめる。 スマホに同期の古賀から連絡が来ている 「20時からライブあるから終わったら飲も」 誘われたら断れない僕… 「おけ」 家を出る準備を始めた。 20時からのライブなら間に合うか 古賀のネタも見てみたい

          DMと君と。♯9

          DMと君と。♯8

          ジュ~という音で目が覚める 自分よりも早く起きて朝食を作っている元彼女 僕は見失ったパンツを探す。 「あ、起きたんだ。」 優しく笑いかける友美の顔を見ながら 付き合っていた時期を思い出す。 4年前に合コンで出会い たまたま帰り道が途中まで一緒だったことから 仲良くなり付き合うことになった。 とくに友美自体はお笑いが好きでなく お笑い芸人と付き合いたいという感覚はなく シンプルに僕の顔が好きだったらしい。 僕の劇場の出番はかかさず見てくれて 笑いが起きた日には少しいいビ

          DMと君と。♯8

          DMと君と。♯7

          「おーい、こんばんわたがしーー」 背中に聞き覚えのある声だ。 緩んだ表情筋を引き締めて後ろを向いた 「おつかれ、いつまで経っても終電帰りなんだな」 「私、バリバリのキャリアウーマンですから」 そこにいたのは4年間付き合っていた 元彼女の堀友美であった。 お笑いと私どっちが大切なのという質問に お笑いと即答してしまったことが原因で 別れた彼女である。 「電車出発しまーす。」 駅員の声で自分の置かれてる状況を思い出す 階段を降りて、走ってホームへ…間に合わない 「終電逃

          DMと君と。♯7