帳 一人

帳 一人と申します。『悪魔解体』シリーズ第二作、『離宮繋ぎ』・他をゆるりと執筆中。よろ…

帳 一人

帳 一人と申します。『悪魔解体』シリーズ第二作、『離宮繋ぎ』・他をゆるりと執筆中。よろしくおねがいします。 Ofuse ⇒ https://ofuse.me/ofuse/44c3ae69

マガジン

  • 懺詩

    [適宜更新]外上門人による詩篇。第一部:「門」は全て掲載済。

  • 悪魔解体: 連載分

    [連載時期: 令和2年1月23日~4月30日] ・完全版と異なり、以降修正を加える予定のない、オリジナル版となっております。

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悪魔解体: 完全版

 はじめに  はじめまして。帳一人と申します。三部作で構成される『悪魔解体』シリーズ、お楽しみ頂ければ、幸いです。宜しくお願い致します。 壱 - インザレイン  だから、東京はいやだって言ったのに。  四宮 春という、その高校生は、夏先の雨に打たれながら独り言ちていた。今朝の天気予報も、リビングでちらと見てこそいたが、しかしどうして、自分の運を試そうと、あえて玄関横の傘に触れることもなく、学校へと歩を進めた先の自分を呪う。ただ、こうして苛立ちを覚えているのは、そんな些

    • 離宮繋ぎ: 弐

      弐 - ウェアリングザスペリア ⇒悪魔解体. より  つくばを出るころはまだ、晴れていたのだが。  電車に揺られる度、確かな存在感を放つ右手の鞄。其の中にある、この幼子ほどの重みを孕んだ資料だけに目を通せば。今まで姥棄てられたほどの事例検討群とも、全く類似していない。稀代の殺人犯の思考や心理を読み解くことすら、戯れと称して久しい。と言うのに、この秋ばかりは、年々「異常」と呼ばれ続ける辟易とした気象変化を超えた案件が郷田へと飛び込んできたのだった。  四宮冬人、四

      • 懺詩: 11

        な - 生成 衆生 お前の所為だと言う準備だけ出来てる 解像度下がる渡殿 漏電 消灯を解す栞 幽か くの字 二天在るとし 擦過の具合を吟うお前 見上げるだけの 双諦の庇 臍に番傘 異尾亜目 見えぬ神を経て 人 其れを宿すとし 呼吸不全に挿し花 青い薔薇横顔 礼の轟 郷の秋 家津美伏したる無粋の木 宣誓の握力と咽頭炎 叫べども言の葉は変わらぬ 有情 お前の所為だと崇める準備だけ出来てる 選択を与えられた軌条 この世に降る雨はまだ 残っているか

        • 懺詩: 10

          た - 他動詞 四海の柔肌 垂直 重し力環状 正中神経裁断 嗅いだ名月と書庫のせせらぎ 限りあるもの 限りないものに 思い馳せる うつけ またの名 にんげん 咎めずとも 虫に成る 人の間は 謂れ右手に 弟子添わせ 顎がなくとも 後世 有れば歪み称へ給ふ もう べにはも稲穂 他者の上に 在らふとするか 祖父の言葉も 往ねば戯言 駒が亡くては 三つの音も 天鵞絨の糜爛 尼人 壁画と精子 歴史と云ふ託け 火 其れ自身を 不畏 皮膚よりも人肌 盲目の

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        悪魔解体: 完全版

        マガジン

        • 懺詩
          11本
        • 悪魔解体: 連載分
          15本

        記事

          懺詩: 9

          さ - 参像奉祀 赤錆びの土を踏むのだ、けふも。 日知り歌、右の耳に挟み乍ら。 来れ水門 神仏も然う畏怖

          懺詩: 8

          か – 上つ巻 i sink. beyond you, who called God. 大嘗祭と楽所 蛇口号令 狭間木の洞 見てくれより滑り台 有事なくとも 親に死ぬと 言へば頭 掻いてくれるか 引き絞り 心舐めた 臨終は番い 美徳、進化を生みはせずとも 和爾ノ肌 和紙の柄 where are you 海の筆 あなたのその 自転車のベル 血圧をチューニング 他人が来た後では 気取ったコップと 弾ける飛沫 油取り紙アサインド 漆を塗るにも 折る骨が足りないまま

          懺詩: 7

          あ – 赤い木 首こくり 社祓い 重さ百両 その心中を送る薪 十露盤弾く音も、いづれ蝉に斬られる。 間に合わせの神楽 打毀す御殿 腐り兵糧 枕経、いつに其の色。 親の踏み絵も 焼き払っては笑い申す 重さ五銭 あと幾百の雪踏めば 草鞋編み こぞっていなくなり 半纏一貫 あそこ越えれば 気まま黄金の一夜城 さういへば 天手力や 思へば どふして あの御方の首を その石をもつて 断たぬがよしと

          悪魔解体: 続

          続 - 御もとに詣づ ⇒ 悪魔解体: 五(下) より  悪魔が一匹消えた程度では、迂闊に眠ることも許されぬ、東の都は中央区に座する、銀座。日比谷との境として機能する高架の下で賑わうコリドー街には、今日も、浮ついた心持ちを、口を並べては品と代える若い男女で溢れていた。交錯する、口紅と香水、横目と小声と、意図せず喉を通る唾液。店の並びには、銀座という名を冠しながらも、膨らんだ財布を持たずして愉しめる居酒屋も構えており、それらの換気扇を掻い潜っては、無秩序なままに混交された匂いが

          悪魔解体: 続

          懺詩: 6

          止 - 『殿』 歩哨は 自らが踏み鳴らす地の深さも解さぬまま その生を全うする 闇にて閹 トジルアナタ 口を開こうにも ほんとうに寒くて 言葉がいらないものだと 思ってしまうのです

          悪魔解体: 五(下)

           ⇒ 悪魔解体: 五(上) より  「ふふ、可哀想に。私なりに気を遣いこそしましたが、それでも今頃、泣いていますよ? ご自宅からの道のりからして、予め手配しておいた同胞よりも早く着くだろうと踏んでいたのですが、そうするには足取りが重いかもしれませんね」  見縊ってもらっては困る。そう、○○へと、冬人は言葉を返す。  「案ずることはない。私の娘のことだ、タクシーに乗り込む迄には、その涙を。気に入っているパーカーの袖にて拭きながら、私の名前をぽつりと、怒りを込めて独り言ちて

          悪魔解体: 五(下)

          悪魔解体: 五(上)

          五 - デヴィルハント ⇒ 悪魔解体: 四(下) より  此れも亦、同日、魔と逢う頃合い。台東区は上野、御徒町方面から少しばかり西に進んだ先に連なる、漫ろ艶やかな色目通り。ネコ科の皮膜を被り、辛うじてこの青き月曜を生き残った兵たち、その熱気がリフレインを帯びて闊歩する。そんな通りを、数本挟んだしじま、路地の帳。  視界が朧気で、薄めで捉えるものが足元のコンクリートだけなのは、何も鬱蒼とした曇天から目を背けているというわけではなかった。物心がついた頃から、こうだったのだ。貌

          悪魔解体: 五(上)

          悪魔解体: 四(下)

           ⇒ 悪魔解体: 四(中) より  「で、その話しぶりだと。あいつは、なんだかんだ言ってもまだ、江東区の、…カマキリを気に掛けてるわけか」  青い月曜日、その名に一助と言わんばかりの曇天。陳列棚から抜け出せたは良いものの、未だ東京の風しか知らない、ベージュのコーヒー缶が、桜田門にて倉野の口へと傾けられる。出勤して間もない時分ではあるが、週の単位で日光浴を許されたばかりに、すっかり日に焼けてしまった資料たちと、ぶっきら棒にレジ袋の中に詰められ、縛られたコンビニ弁当の空いた容

          悪魔解体: 四(下)

          懺詩: 5

          姿 - 『装束』 来れ汝 白袴捥ぎ取りて 半妖 あるてみすの五月雨 有脚の廃寺 よう泣く捨て子を 静まる姥山へ 繁用 図らずも自我噛る塔 八十八の局部麻酔 意識厭うて なにを 母音踊らせ どうして 伝える 閲にて閔 サメルアナタ 躙り降り神 添えた手の血の 舐めた先へと 伸びた触覚 上下四角 よしなさい だれかが だれかを 真を見つけず 屠るのは 嫌でも見慣れた 御縄の標 畏怖に手を掛ける茶羽根 下の下 帯刀 漫ろ茶屋町 未見曼陀羅 空が、耳に近付く。 「いい腕

          悪魔解体: 四(中)

           ⇒ 悪魔解体: 四(上) より  「あの人、いえ、東さんはね、何度言ってもライフジャケットを着ずに、際の際まで行って、釣りを楽しんでいたもので。カナヅチだって、てっきり冗談めかして言っていたものだとばかり… 残念です」   そう、優しい夕立のように。男性は、くすんだベージュのキャンプハットを深く被り込んでは、ぽつりとそう、漏らした。  「こんにちは。私は○○と申しまして、こちらが神保さん。仰る通り、彼は刑事さんです。ふふ、第一発見者の方ですね?」  ○○の推察に対し

          悪魔解体: 四(中)

          悪魔解体: 四(上)

          四 - 薙ぎ風 ⇒ 悪魔解体: 三(下) より  持て余すことのない無数の排熱孔、文の月。職に就いてもう、三ヶ月が過ぎたが、しかしこの方。これといって、余暇を静養へと充分に割いた記憶はない。”いずれ休みたくても休めない日が来るから、今の内だ”と、倉野をはじめとする周囲に気を遣われては、その温もりを踏み躙れない神保は、今日まで、余所余所しい休日を送ることを余儀なくされていた。休みであるからと目覚まし時計のアラーム設定をいじることもなく、同じ時間に起きては、一日の大半を昇任試験

          悪魔解体: 四(上)

          悪魔解体: 三(下)

           ⇒ 悪魔解体: 三(中) より  夜も更けたとはいえ、まだ燈りの絶えない亥の刻、有楽町。というよりも、むしろ日比谷に近い距離に在る賃貸マンション群生地の並びに、一台のタクシーが、止まった。便利なもので、今日日ではおおよそが自動ドアの仕様となっており、酩酊した倉野が渋るところを、容赦なく身体を乗り出させる。涼しい外気を感じ取る。火照る身体。直ぐに酔う体質ながら、翌日に持ち込むこともなく、寝れば覚めるために、どうにも飲みの席では初速から勢いに身を任せることになってしまう。うつ

          悪魔解体: 三(下)