懺詩: 10

た - 他動詞


四海の柔肌 垂直 重し力環状

正中神経裁断 嗅いだ名月と書庫のせせらぎ


限りあるもの 限りないものに 思い馳せる

うつけ またの名 にんげん

咎めずとも 虫に成る


人の間は


謂れ右手に 弟子添わせ

顎がなくとも 後世 有れば歪み称へ給ふ


もう べにはも稲穂

他者の上に 在らふとするか

祖父の言葉も 往ねば戯言

駒が亡くては 三つの音も

天鵞絨の糜爛


尼人


壁画と精子 歴史と云ふ託け

火 其れ自身を 不畏 皮膚よりも人肌

盲目の長が 喉を鳴らす前に


木槍

粗削りの殺意

象牙砂漠渡り 行方は神に聞いてくれ


人の間は


羽織り羽織られ季節の反証

知った気になる女人正中神経

繰り返してきたのだ 成り虫

織っては還す 人と成るため

誰が為 我が為

厭わず 相せず 外宮と呼吸


人の間は みな蛹


初潮音取 七十と一の構え

面が割れては 眉を代え

唾棄した髄液 成り虫

其の前につらら降ろし

桜の音に宵の虫

鏡み割り酔い虫


忘れてしまつた


擦硝子色の天蓋 飛ばぬ人体

死海に倣わぬ鵺 敷いた布団に朝蜘

木造の膀胱 反る板に帝国

万の鋏 啄木鳥の園 奪われ命の偏西風

弁解の浪漫 吐瀉物にて選別 薬師舐め擦り


お前は 誰の為に


縄梯子 凍る獅子舞

異国埋葬 御朱印嗤い麻痺

覚ました南北 馬の喇叭を介さず


王、名は恣意


好む数列

幾らの命を持たぬまま 解釈歪曲写実主義

横隔膜の登攀

そうだ我ら 裂いてきたのだ 死のわけを

舌が歯より出のは 疚しい口角殺げぬから


聞き及ぶ月面の帆 白を好む


駅のホームの作話症 親しみある指でなぞって

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