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佐久間マリ
2021年12月1日 22:17
1話~5話 6話〜10話 11話~15話 (全31話)16.堂道課長はもう恋なんてしない「オラ、榮倉ァ! てめえ、ふざけんなよ!」 二課の島に死んだ目でいる夏実から社内チャットが届く。『どうにかして』 糸に堂道をどうにかできる力があるのなら、今すぐこの場を和やかな職場にしている。 堂道は清々しいまでに通常運転だ。 結局、糸は告白したことになるのだろうか。 あれ以降、堂道の
2021年12月2日 20:11
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話(全31話)21.堂道課長は部下に手を出す上司になりたくない 堂道との男女の接点はなくなったが、まだその体調を気遣うくらいは糸に許されていて、たとえば残業が続いていそうな時に栄養ドリンクの差し入れは受け取ってもらえる。 あと、二日酔いらしい時の胃腸薬と。買いに行くのも辛そうで、この時はひどくありがたがられた。 毎日二日酔いになればいいのに
2021年12月4日 21:58
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話22.堂道課長は信用できない「腹減ったー。せっかくだし、ひつまぶしでも食ってくか」 駐車場に停めた社用車に向かいながらそう言って、堂道は首を鳴らした。 予想以上の展開に、糸は思考が追い付かない。 堂道とのドライブは行き道だけで、帰りは、車であれ電車であれ一人だろうと思っていた。 それでも十分すぎる。こんな棚ボタ出張デートを
2021年12月4日 22:15
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 部屋に着いて、鍵を開け、鞄を置いて、腕時計を外し、ネクタイを緩める。 堂道がそれらをする間、糸は何も言えず所在なさげに立っていた。 ヒールの細いかかとが、ふかふかの絨毯に埋まっている。 上着を脱いで、ワイシャツ姿になった堂道は、ミニバーに置かれていたミネラルウォーターのボトルをひねると、喉を鳴らして飲んだ。「そう言え
2021年12月4日 22:26
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話「なにやってたんだよ! なんでまだできてねぇんだよ! こんな資料でクライアント納得させられると思ってんのかよ!」「……堂道は今日も朝から絶好調だなぁ」 羽切は肩をすくめながら、ちらりと糸を見た。 パーティションを超えて聞こえてくる怒鳴り声に、一課のミーティングはさっきから何度も中断を余儀なくされている。 今日
2021年12月4日 22:39
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 糸は、定時を過ぎるのを待って、羽切をたずねた。 二課の課長席は不在だ。堂道は会議中らしい。「あの、一応、付き合うことに……」「……え、まじ! うそ、ほんとに!? 玉響さん、すごいじゃん!」 けしかけたものの、糸たちの進展はどうやら予想外だったようで、羽切のリアクションは、しばらく驚いたのちの祝福だ
2021年12月5日 21:00
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話「……布団、オッサン臭いか」 堂道の寝室にはやたらと大きなベッドがあった。 クロゼットの扉が開きっぱなしのままになっていて、糸がシャワーを浴びている間に、それを取り繕おうとも片づけようとも思わなかったらしい。 ベッドサイドライトの調光だけがぼんやりと部屋を照らす。 互いに一度果て、糸は後ろか
2021年12月5日 22:05
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話 26話(全31話) 週明け、身体は重く、気分はだるい。 頭がぼうっとしているのは間違いなく寝不足が原因だ。二課の課長席をさりげなく振り返って見てみると、堂道が電話をしている。 髪形はいつもの形状を保っていて、難しい顔で熱心に話をしている。朝からも離席続きで何本ミーティングをこなしたのか。席に戻
2021年12月6日 22:14
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話 26話 27話「お待たせしました」糸がシャワーを浴びて出てくると、堂道は所在なさげにベッドを背に床に座っていた。「……ああ、俺こそお先」ピンク色のハート型のクッションを抱いている。と言っても、かわいく胸に抱いているわけでは当然なく、手持無沙汰のあまり手慰みに押しつぶしていると言った方が正しい
2021年12月7日 21:56
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話26話 27話 28話 (全31話)「オイ、榮倉。やり直しー」「ハイッ」「尾藤ー、数字間違ってんぞー」「すんません!」「椎野ー、まだかー」「あと十分くらいで……!」近頃の堂道は少し変わったと糸は見ている。昼休憩、最近の堂道の変化について明るく考えていたのに、夏実が殺意たっぷり
2021年12月8日 21:39
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話26話 27話 28話 29話 30話 31話 エピローグ「スポーツに貴賤はなかった!」昼休み、小夜はいまだ興奮冷めやらぬ様子で、昨夜のことを夏実に語って聞かせた。「小夜、いつから裏切者になった」「いや、ホントに堂道課長ってばすごいんだって。バスケ超うまいし。後輩にプロ選手もいるんだって、草
2021年12月9日 21:51
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話26話 27話 28話 29話 30話 31話 エピローグ(完) 風向きと言うのは妙なもので、風が前から吹いてくるか、背中から吹かれるか、たったそれだけの違いでそのときの勢いを良い方にも悪い方にも加速させる。 そして、堂道には今、間違いなく追い風が吹いていた。「おい、尾藤! これなんだよ!? お
2021年12月9日 22:05
1~5話 6〜10話 11~15話 16~20話 21話 22話 23話 24話 25話26話 27話 28話 29話 30話 31話 エピローグ(完)花金。駅前の本屋。写真週刊誌。グラビアアイドル。「カチョー!」「うわっ、なんだよいきなりビビらせんなよ!」高校生。少年バスケの元教え子。「グラビア立ち読みとか、おっさんみてー」「うるせーな。十分オッサンだ
2021年12月12日 20:34
「玉響さん、玉響さん!」 羽切が小走りにやって来たのは、始業してすぐのことだった。 すっかり面々の変わってしまった営業部は、羽切にとって感慨深き古巣ではないらしい。特に辺りを懐かしむ様子もなく、糸のデスクへ一目散にやってくる。 一年半前、羽切は経営企画室に異動になり、そして昨秋昇進した。異例のスピード出世で、いまや花の経営企画室長様だ。 営業部員も多くがその部署に憧れる。自信の表れか