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スピード重視の経営! 最近注目のOODAを戦術に活かした実践事例 〜マネプロ#24

こんにちは! DeNAでHRビジネスパートナーをしている坪井(@tsubot0905)です。

マネジメントの進化を探求するnote
『マネプロ』は今回が第24回目です。

このマネプロnoteのシリーズでは、5分で分かりやすく学べるシンプルな構成と、相手とのコミュニケーションで使えるようなシンクロしやすい問いを意識した内容を心がけています。

さて、前回のOKRは経営視点の戦術という話でした。
今回は現場視点の戦術であるOODAの話です。

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PDCAは知ってるけどOODAは初耳
という方を想定した内容でお届けしていきます。

「OODA」という型を学びながら、実際にどのようにチームで活用していくのか。実体験も交えてチームマネジメントでの効果的な使い方を見ていきたいと思います。

目次はこちら!


< OODAとは>

今回紹介する「OODA」(ウーダ)は、情報を得てから「認知→分析→決断→行動」をスピーディーに回す思考フレーム。

元はアメリカ空軍で使われていたメソッドなんだそうで、
OODAとはそれぞれ

Observe :観察
Orient     :情勢判断
Decide    :意思決定
Act           :実行

の頭文字を取っています。

最初の2つの「O」が大事で、観察とは情報収集のことであり、情勢判断は収集された情報の解釈を行うことを指します。

OODAループは現場の素早い情報収集と判断〜実行を支えるために組織的な仕組みとしてチームマネジメントで使える活動サイクルです。

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詳しくはPDCAとの違いを見ながら紐解きます。

その前に、なぜいまOODAが注目されているのか、私なりの解釈も含めてお伝えしましょう。

<なぜOODA?>

この10年くらいで“リーン"や“アジャイル”といった言葉がトレンドとして広がりを見せています。

それらが共通して求めたものは「スピード」。

OODAも同じく「スピード」を重視して事にあたれるようにするための考え方。ですが、「OODAループ」という概念が海外で本になったのは2004年ということで、昔からあったようです。

では、なぜ今になって
「OODA」が注目されているのか?

その背景には、ソーシャルメディアの普及とVUCAと呼ばれる時代の流れがあります(VUCAとは、簡単に言えば、社会やビジネスにとって未来の予測や対応が難しくなる状況のこと)。

SNSによってリアルタイムに情報を発信したり、情報を得たりできるようになったことで即断即決が必要なビジネス環境になっています。

そのため、企業は意味のある中長期の計画を立てることができるのだろうか、という戦略の議論も生まれています。

Appleでは、3ヶ月の見通しを事業計画と呼び、1年なら中期経営計画と呼ぶそうです。彼らに言わせると、3年や5年スパンの計画は「ドリーム」なんだとか。

顧客の反応などの情報をキャッチアップしたらすぐに活かすスピード重視の経営が求められているからこそ、注目される考え方になったのですね。


<OODAにできること/できないこと>

では、OODAが万能な戦術かというと、そういうわけでもありません。

これは、先ほど触れたPDCAとの違いをお伝えすることで分かりやすくなると思います。

それぞれの違いに触れながらOODAのエッセンスを紐解きましょう。

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それでは、それぞれ1つずつ見ていきます。
(OODAのエッセンスは太字にしています)

計画 → 事実
計画よりも事実の観察から出発する

OODAは計画ではなく仕組みで活動を回します。仕組みが起動し始めたら、あとは事実に合わせて変化適応するのみ。

火傷したら肌に水をつける、火事になったら家から逃げる。このイメージです。火事になってからどうするかを家族会議してプランが決定してから対応していたのでは手遅れですよね。

スピード重視に必要なのは事実。計画は不要。
ということです。

事前 → 事後
起きる前ではなく起きた後に解釈する

目に見える数字やデータから事前に対応を予測するのではなく、目の前で起こっている事実に対して、何が起きたのかを見定め、事後対応をします。

お医者さんが患者を直接みて診断するとき、過去の診断結果は参考情報としてしか扱わないのと似ています。

経営 → 現場
経営ではなく現場での判断を尊重する

むやみやたらに経営資源を使うわけにはいかないので、経営視点ではPDCAが必要です。

一方で、顧客のニーズに合わせて対応するのは権限委譲して現場ですぐに対応できた方が良い。そんなケースにおいて、OODAは現場の即断即決を促すことができます。

段階 → 同時
段階進行ではなく同時進行で対応する

PDCAは「P→D→C→A」と段階を踏んでサイクルを回しますが、OODAは「O-O-D-A」と表記され同時進行でサイクルを回すものです。

つまり、意思疎通から対応までが瞬時になされることを目指しており、実行速度を大切にすることが分かります。

〜〜〜〜〜

以上がPDCAとOODAの違いでした。比較することでOODAのエッセンスが捉えすくなったのではないでしょうか。

PDCAは経営視点で資源や結果をコントロールできるようにするには適していると思います。

一方で、OODAは現場視点で事実とスピードを重視した機動力のある実行には適しています。

現場主導の自律した組織を目指すのであれば、OODAのエッセンスをチームマネジメントの手法に取り入れてみてはいかがでしょうか?


<実はレアなOODAの事例>

OODAについての情報に触れていると、あの時のあの企業のやり方はOODAに近い…みたいな後付け話はあるのですが、始めからOODAを意識した事例は意外とありません。

OODAの活かし方を理解しやすいように
私たちのチームでのOODAの実践事例を紹介します。

〜OODAを活用する目的〜

OODAには相性の良いタイミングがあります。
それは、例えば以下のような時です。

・新チーム体制となって状況把握や課題発見が必要となる時
・繁忙期で忙しく攻めの活動の時間が足りない時
・退職/休職/異動の方がいてベストなチームコンディションではない時

私たちのチームでは「課題の解像度を上げてチームで共通認識を持つこと」を主目的としながら、状況の変化に臨機応変に対応できるようにしたいタイミングでOODAを活用していました。

前回のOKRのように目的から考えて重要な指標を決めてムーンシットを目指すような攻めの戦術ではなく、守りの戦術として機能するのがOODAの良さでもあります。

〜OODAを活用する仕組み〜

概念や目的は分かった。
で、実際はどうやってたのよ…
と思っているあなたのために。

ここからはOODAを活用する仕組みの話です。

私たちのチームでは、四半期毎に事業や組織における重要な人事イシューを議論しています。

そこで、今はどんなタイミングか認識を揃え、攻めの戦術を選ぶならOKRを、守りの戦術ならOODAを選んで、チームの四半期の動きを決めるというやり方をしています。

OODAの場合、攻める状態にないので目標はあえて決めず、観察する対象と領域を限定して、その観察担当だけを決めます。観察の様子は、FACTを記入できるフォーマットで管理します。

日々のMTGで観察している内容をチームで共有し合い(Observe)、必要に応じて2週間毎にある2時間MTGの中で時間をとって対応方針を検討(Orient)するように仕組み化していました。

<救命救急の対応をOODAへ活用>

観察対象が決まれば、次は運用の対応方針です。
方針となる基本的考え方は、大きく分けると4つ。

それぞれの状況に合わせて「観察継続」「対応措置」「治療完了」「治療不要」のどれが適切かを判断し、行動に反映(Decide-Act)しています。

これは、救命救急の際の治療判断として使われる『トリアージ』からヒントを得たもの。

トリアージは、戦地などで傷が浅い傷病者と対応しても助からない傷病者を素早く見極め、後回しにする/諦めることを決定することで「最大多数の傷病者に、最良の医療を提供」するための考え方です。

これを事業に当てはめるなら

・この課題はまだ対応する段階ではない。様子を見てから動こう、というのが「観察継続」

・「いや、もう対応しなきゃまずいぞ」となったら「対応措置」を取ります。例としては、退職による人材不足の課題発生に対し、採用や異動による人材獲得の検討を始める、などの行動ですね。

・対応した結果、解決したり問題でなくなったりしたら「治療完了」に分類します。先ほどの例でいえば、異動による再配置の動きに目処がつき優先順位が下がる、などの状況です。

・もう対応できない/対応しない、と判断すれば「治療不要」に分類し、リソースを割くのをやめます。ちなみに、これは必ずしも悪い状況ではありません。チーム体制の課題が顕在化した時に組織を再編した結果、チームの課題自体への対応が不要になった、という状況もこれに当てはまります。

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〜OODAを活用する効果〜

このようにOODAが事実の観察に基づいた仕組みとして機能すれば、「課題の解像度を上げてチームで共通認識を持つこと」「課題に対してスピード感のある対応をすること」が可能になります。

メンバーそれぞれが観察領域の変化のシグナルを読み取り、チームで共有することで、未来の困難な状況が目に見える形で現れてきたとしても、チームで許容できる状態が生まれ、未来に適応するためのアクションをチーム全体で推進できます。

チームが現場視点で方向性を迅速に決め、適切に変化できる機動力を持つことができれば、戦略の実現にまた一歩近づくことができるのではないでしょうか。

<今回のQuestions>

以上が24回目のマネプロでお届けしたかったコンテンツでした!
いかがでしたでしょうか?

ということでマネプロ恒例、最後の問いです。

今回のテーマを通じて、リーダーやマネージャーの方々に問いかけたい4つの質問を選びました。忙しい皆さんの思考の整理と、新たな行動の後押しになれますように!

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※「自分はこう考える」「自分ならこれを問いかける」という考えはぜひTwitterにて「#マネプロ」を付けてつぶやいていただけたら嬉しいです!

<次回にむけて>

今回はOODAループを現場視点の戦術という視点から探究しました。
これにて戦術編は完結です!

次回は年内最後…ということで、マネプロ1年目のまとめ記事を出します。そちらを見ていただければ、これまでの記事を追えていない人もマネプロの全体像を理解できるはずです。

次回は2週間後の水曜日。
良かったらぜひnoteのスキやフォローをお願いします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

読者のみなさんと共にマネジメントの進化を探求できれば何よりです。Twitterのフォロリツ大歓迎です!DMでの感想も是非!(@tsubot0905)

noteで取り上げた内容について、みなさんの持論や新たな問いかけの視点をもらうことでマネジメントの探求がもっと楽しくなるはず。ですので、みなさんからのリアクションを心待ちにしております。よろしくお願いします!

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