石井一穂/ビジネス書の編集者

ダイヤモンド社の編集者。前職のクロスメディアパブリッシングでは『だから僕たちは、組織を…

石井一穂/ビジネス書の編集者

ダイヤモンド社の編集者。前職のクロスメディアパブリッシングでは『だから僕たちは、組織を変えていける』10万部&ビジネス書グランプリ受賞。『感性のある人が習慣にしていること』5万部、『書く習慣』3万部などを編集。他人の真似はしたくない天邪鬼。つくった本に込めた思いを書いてます。

最近の記事

なぜ書籍編集者である私は、自分の仕事を「営業」だと感じたのか? 新刊『記憶に残る人になる』本日発売!

本日6月5日、ダイヤモンド社に転職して2冊目となる担当書『記憶に残る人になる』が発売になりました。 本書は一言で言うと「目の前の相手に信頼されるためにスキルよりも大切なこと」です。 あなたの周りに、こんな人はいないでしょうか? そんな、「ガツガツしていないのに、なぜか信頼される人」になるための本です。 伝えているのは、トークスクリプトとかアプローチ術といったテクニック的なことではありません。 その考えのもと、相手に興味をもたれ、「記憶に残る」ために大事にしたいことを伝え

    • 「こだわりが強くてたいへん」の言葉が示す本当の意味

      「あの著者さんは、たいへんだった」 同業者からよく聞く言葉だ。 そしてこの後に続くのは、たいていこんな言葉。 「こだわりが強くてさ〜」 その感覚は、わたしもとてもよくわかる。「こうしたい」「あんなことをしたい」「もっとこうできないか」。そう著者さんから投げかけられたことは、少なくない。 でも、こだわりが強いことは、愚痴るようなことなのだろうか。実際、過去にこだわりの強い著者さんと一緒につくった本は、売れた。細部まで意図や仕掛けがあり、読者からの評価もよかった。こだわり

      • 新しい人生は「無駄」からしか生まれないと気づいた

        わたしは基本的に、忘れっぽい。 そんなわたしが今でも覚えている、ある会話がある。 それはたしか、2019年の末。Twitter(当時)での発信が盛んな編集者さんやライターさんなどが集まった飲み会でのこと。その二次会で、とある同世代の編集者さんと、わたしは同じ席に着いた。その編集者さんのことはTwitterでは知っていたけど、話すのははじめてだった。 その人は、ずっと「献血」の話をしてくれた。献血がどれほど気持ち良いか。最近の献血ステーションがいかに充実しているか。ディティ

        • 人生9回目の引越しを前にして気づいた「自立」の意味

          「引越し」について書いてみる。 書くことが思い浮かばないからだ。どんな結末に着地するかわからないけど、とりあえず書いてみる(「書いてみると、言葉が出てくる」と、かつて編集した本『書く習慣』にも書いてあった気がする。たぶん)。 この文章を書いているいま、わたしの目の前には引越しの段ボールが積み上がっている。来週の月曜に引越しを控えていて、梱包した段ボールをしまいこんだクローゼットの中で仕事しているからだ。ちなみに、引越しによってようやく常設の仕事デスクが持てる予定。在宅勤務

        なぜ書籍編集者である私は、自分の仕事を「営業」だと感じたのか? 新刊『記憶に残る人になる』本日発売!

          妻よ、これからはケンタッキーを思う存分買ってね。

          妻にとってケンタッキーは、「母の味」らしい。 実家にいたころ、父親が仕事で遅い日に母親と一緒に買いに行っていたという。千葉のど田舎なので、最寄りのケンタッキーとはいえ車で行く。帰宅する頃には少し冷めているので、レンジで温めなおして食べていたそうだ。だから妻は、いまでもケンタッキーが大好きだ。わざわざそのために電車に乗って、隣の駅まで買いにいく。 一方のわたしは、正直なところそんなに好きではない。味がということではなく、単純に「骨があって食べにくいなあ」と感じてしまう。だか

          妻よ、これからはケンタッキーを思う存分買ってね。

          週に2冊の本を読めているのは「考えていない」から

          僕はいま、週に2冊ほどの本を読んでいる(漫画、小説は除く)。編集者という仕事から考えれば、けっして多くはないほうだ。むしろ、おそらく少ない。実際、もう少し読みたい気持ちもあるけど、幼い子供がいる環境ではこれが無理なく継続できる限界だと感じている。 そんな、自分なりにギリギリの読書をどうやって継続しているか。それについて、書いてみる。 結論から伝えてしまうと、これは完全に「習慣」によるものだ。ちょうど今朝から「習慣」に関する本を読み始めた。まだ途中だけど、習慣を継続するため

          週に2冊の本を読めているのは「考えていない」から

          互いを思い合っていてもときに対話は難しい

          昨夜、妻と少しケンカをした。 きっかけは、再来週に控えている引越しだ。新居での家具の配置について、少しモメてしまった。 問題になったのは、本棚だ。職業柄、私はビジネス書を読むことが多いし、私も妻もマンガ好きだ。そのため我が家には、大小合わせて6つの本棚がある。とくに悩ましいのが、私が学生時代に買ってもらった、身の丈を超える大きな本棚。それをどこに置くかを、昨夜話した。 基本的に、妻にはこだわりがない。一方で、在宅勤務の多い私にはデスクや本棚の配置など、いろいろと構想があ

          互いを思い合っていてもときに対話は難しい

          ヒットには「なのに」が必要な理由

          感想のなかに「なのに」があるコンテンツは、ヒットすると考えている。 たとえば、「片づけの本なのに、生きるのがラクになる」「過激な発言で注目される人の本なのに、どこか親しみが湧く」「子どもむけのアニメなのに、大人が泣いてしまった」「特撮映画なのに、大人の社会が描かれていて面白い」などなど。 本や映画、ドラマなどジャンルを問わず、感想に「なのに」が入ると、多くの人に広がっていく。 なぜなら、自分の価値観や属性とは異なる人に勧めやすくなるから。 人は誰しも、自分が「良い!」と思っ

          ヒットには「なのに」が必要な理由

          唐突に「日記」をはじめたいと思った。

          唐突だけど、日記をはじめてみようと思う。 理由はいろいろある。 まず、僕の仕事は人の文章を読み、直し、読み手に届けていくことだ(知らない人のために。僕はダイヤモンド社という出版社でビジネス書の編集をしています)。 自分が書いていないのに、人の文章に口を出すのはどうなのか。 ふと、そんなことを思ってしまった。 また、文章には正解がないように見えて、じつはさまざまな「型」がある。 型に沿った文章が良いのか悪いのかはさておいて、その型を知り、身につけておくことは、自分の仕事にお

          唐突に「日記」をはじめたいと思った。

          退職の意を伝えたら「やっぱこの会社って、良いな」と思った話

          この度、4月30日をもちまして、出版社のクロスメディア・パブリッシングを退職いたしました。 クロスメディアには約3年勤めました。 前職に絶望し、転職を決意したのは2019年末のこと。それまで作っていた実用書や児童書とは異なり、ビジネス書に挑戦したいという私を受け入れてくれたのが、クロスメディア・パブリッシングでした。 「未経験可」であったことにくわえて、私が惹かれた理由がもう一つ。 代表の小早川さんがとあるインタビューで話していた「誰しも自分のような人間はたくさんいるのだ

          退職の意を伝えたら「やっぱこの会社って、良いな」と思った話

          3/31発売『TIME OFF』日本版序文

          3/31(金)に、私が編集した『TIME OFF 働き方に“生産性”と“創造性”を取り戻す戦略的休息術』という本が発売します。 プロバスケットボール選手のレブロン・ジェームズ。作曲家のベートーヴェンやチャイコフスキー。アリストテレスやポアンカレ、ヘッセ、ハフィントン、そして近藤麻理恵さんなどなど… 世界の賢人35人のエピソードを混じえながら、生産性と創造性を高めるための「休息術」について紹介した本です。 原著は2020年にアメリカで発売されると、たちまちAmazon多分野でベ

          3/31発売『TIME OFF』日本版序文

          「なんとなく」の判断にモヤモヤして、本が生まれた話

          3/2に『なぜ君は、科学的に考えられないんだ?』という本が発売になる。この本は、初めて挑戦した「全編小説スタイル」のビジネス書。久々に、この本の企画背景を、いつもながら一筆書きで書いてみようと思う。 ある日の、著者さんとの会話 「本、売れてますか?」 「そこそこ良い感じです!」 「それは目標に対して、何%くらいですか?」 「えっと、それは……」 「御社は電車広告とはやらないんですか?」 「電車広告は金額も大きくてリスクがあるので…」 「どれくらい効果が出れば、赤字になら

          「なんとなく」の判断にモヤモヤして、本が生まれた話

          仕事のために家庭を犠牲したくない。家庭のために仕事をあきらめたくない

          7/25に『仕事も家庭もうまくいく! 共働きのすごい対話術』という本ができた。 企画から1年、とても思い入れの深い本になった。 記憶が鮮明なうちに、その企画の経緯や、こめた想いについて書いてみようと思う。 2021年2月1日、転職して最初の本が発売された3日後。 妻から、プレゼントを渡された。 その小箱を開けると、そこには1枚のエコー写真が。 自分は父になるのだと知らされた。 「そろそろ」とは話していたので、とくに戸惑いはなかった。 感情を出すのが苦手なので、「ちゃんと喜

          仕事のために家庭を犠牲したくない。家庭のために仕事をあきらめたくない

          組織の「おままごと」が嫌になって、本をつくった話

          クロスメディア・パブリッシングという出版社でビジネス書の編集をしている、石井といいます。 昨年11月29日に発売した『だから僕たちは、組織を変えていける』という本が、3ヶ月で6刷、3万部突破と、予想を大きく超えて多くの人に届いています。今回は、この本に込めた個人的な想いと怒りについて、気の向くままに書いてみたいと思います。 この本が生まれた背景には、思い返せば、前職での不満がありました。 私は前職も出版社に勤めていました。創業70年を越える会社で、良くも悪くも経営者の意向が

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          誰もが生きるために、書いていい

          はじめまして。 クロスメディア・パブリッシングという出版社でビジネス書の編集をしている石井といいます。 日々、様々な原稿を拝見し、感想を述べたり、アドバイスをしたりしていますが、自分で文章を書くのは苦手です。 だから、こんなありきたりな書き出しになっていたります。 そんな私が今回、はじめてnoteを書いてみたのは、『書く習慣』という本をつくったからです。 この本は、美文や名文の書き方を教えるのではなく、「書く」こと自体の素晴らしさと、「さあ、あなたも書いてみよう」と伝える本

          誰もが生きるために、書いていい