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組織の「おままごと」が嫌になって、本をつくった話

クロスメディア・パブリッシングという出版社でビジネス書の編集をしている、石井といいます。
昨年11月29日に発売した『だから僕たちは、組織を変えていける』という本が、3ヶ月で6刷、3万部突破と、予想を大きく超えて多くの人に届いています。今回は、この本に込めた個人的な想いと怒りについて、気の向くままに書いてみたいと思います。

この本が生まれた背景には、思い返せば、前職での不満がありました。
私は前職も出版社に勤めていました。創業70年を越える会社で、良くも悪くも経営者の意向が強い会社です。
2019年の年末、私はある書籍企画を企画会議に提出しました。
部長や担当役員の反応はよく、部内の会議を通過し、社長含む会議にかけられることになりましたが、結局その企画は、社長の同意を得られずに不採用となりました。

ここまでなら、よくあることで、そんなに気にもしなかったと思います。
でもその企画は、部長や役員は「これはいけると思う」と言っていました。
その人たちに、「ごめん、社長を説得できず、石井くんの企画を通せなかった」と言われてしまいました。


「やめてくれ。謝るな」

そう思いました。
「この企画は、もっとこうすればよかった」など、無理矢理にでも理由をつけてくれたほうがまだよかった。
でも謝られてしまうと、自分ではもうどうしようもない。

自分は読者のためになると思って、本を企画した。
それに部長も役員も共感してくれた。
でも、「社長がダメと言うから、しょうがない」と却下された。
それってつまり、読者ではなくて社長の方を向いた仕事なんじゃないか?
マネジャーって、社長の命令に従うことが仕事なのか?
それって、おままごとじゃん。自分もそれに付き合わなくちゃいけないの?

そう感じてしまったんです。

いまなら、上の人の気持ちもわかります。
数字というノルマを課されながら、会社が決めた手段しか実行できない。
正直、そっちの方が無理ゲーかもしれない。リーダーは大変だ。
それに、部長も役員も人としては好きでした。
そんな好きだった人まで嫌いにさせてしまう組織が憎かったし、嫌いになりかけている自分も嫌でした。

そして2020年6月、いまの会社に転職しました。
転職して1ヶ月で企画の相談に行ったのが、『だから僕たちは、組織を変えていける』の著者、斉藤徹さんです。
斉藤さんの話は、いちど組織を諦めた私にとって希望のように感じました。

「チームの関係性を高めることで、思考、行動へと良い影響を及ぼし、最終的に結果にもつながる」
「その小さな成功を大事にして、影響を広めていくことで、やがて組織全体が変わっていく」
「関係性の質を高めるためには、心理的安全性の向上が必要」
「思考の質を高めるためには、組織のビジョンやパーパスの共有が必要」
「行動の質を高めるためには、内発的な動機づけが必要」

ダニエル・キムの「成功循環モデル」をベースに、近年のビジネス界で注目されているワードが、実践をともなって鮮やかに接続していました。
前職の部長や役員がこれを実践していてくれたら、もしくは、私がこれを実践できていたら、自分は組織を諦めなくても済んだかもしれない。
そんな希望を感じたのを覚えています。

そもそも、リーダーシップ本って「部下をどう動かすか。どう変えるか」というものばかりです。

でもそれって、「会社やリーダーの意向が正しい」ことが前提になっている話です。
よりユーザーに近い現場の人や、時代の空気感を自然にとらえている若い人が考えていることのほうが、正しいってこともあるんじゃないか。
そういった声を吸い上げて、上層部や経営者を変えていくことも、リーダーの役割なんじゃないか。
そのための本が必要なんじゃないか。
そう感じて、本にしたいと考えました。

いざ制作に入ると、めちゃくちゃ大変でした。
ビジネス書は早ければ半年くらいでできるものがある一方で、本書は17ヶ月かかっています。原稿も第12稿まで磨かれていきました。
制作過程については、また別の機会にでも書いてみたいと思います。

そんなこんなで、本書は2021年11月29日に発売したわけですが、発刊後の反響は予想以上でした。
アマゾンなどに投稿された読者の声をいくつか紹介させていただくと、こんな感じです。

「現場の一人からでも行動を起こせる。経営者の考え方を変えられる。その勇気を促してくれるバイブルです。」
「働き方や生き方に悩みを抱えている人にとって大切な本になると思います。」
「心理的安全性の大切さ、自分にとっての仕事の意味、自らの内面を変えること等、これからの生き方を変えるための金言が詰まっています。」
「超ハイレベルな組織理論と実践がまとまりながら、分かりやすい語り口と柔らかく優しいイラストで敷居を下げてくれています。」
「組織について、もう絶望しかないと思っていた私に少し光を見せてくれました。」
「変わらなくちゃいけない、変えなくちゃいけない。そう思ってるけど周りが動かない。自分だけ悩んでる。そんな私に希望を与えてくれる本でした。」
「ただのノウハウ本じゃない。まさにバイブル。組織改革の「すべて」が詰まっている。久しぶりに良いビジネス書に出会った。各章、読み応えがある。」

とくに意外だったのが、経営者の方々からも賛同を声をいただけたことです。社員数数万人の大企業もふくめて、本書を読んだ多くの経営者から、著者に講演の依頼が来ています。

なんだ、みんな組織を変えたいんだ。
違和感を持ってたんじゃん。
その方法がわからなかっただけなんだ。

この本では、大量生産時代に定石となった「管理型組織」を否定しています。市場や価値観の変化が大きくなった現代では、従来の方式を上意下達で指示するより、ユーザーに近い人の持つ違和感や感覚を大事にし、対話を促し、イノベーションを起こす必要があるからです。

でも個人的には、管理型組織のツライところは、成果が出ないだけじゃないと思っています。
成果が出ないことで、チームの、部内の、社内の雰囲気が悪くなり、これまで仲が良かった人たちとの関係までもが崩れていく。
好きだった人を嫌いになる自分を嫌いになってしまう。

これが一番、ツライことだと思います。

組織に絶望した人が歩む道は、諦めと転職だけではない。
好きな仲間と、一緒に働き続ける。
そんな道も示したくて、本書をつくったのかもしれません。


著書『ファンベース』が有名な佐藤尚之さん(さとなおさん)は、本書を以下のように表現してくれました。

「組織はひとりでは変えられない。そう思っているあなたにこそ読んでもらいたい希望の書だ。」

まだまだ道半ばですが、少しずつ、「組織を変える輪」が広がってきているように感じます。

このnoteを読んでいただいた方のなかで、組織を諦めそうになっている方がいたら、ぜひ、最後の希望として、本書を手に取っていただけたら嬉しいです。

https://www.amazon.co.jp/dp/4295406252/

おわり



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