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なぜ書籍編集者である私は、自分の仕事を「営業」だと感じたのか? 新刊『記憶に残る人になる』本日発売!

本日6月5日、ダイヤモンド社に転職して2冊目となる担当書『記憶に残る人になる』が発売になりました。

本書は一言で言うと「目の前の相手に信頼されるためにスキルよりも大切なこと」です。
あなたの周りに、こんな人はいないでしょうか?

・飄々としているのに、多くのお客様に選ばれて結果を出し続けている人。
・ガツガツと攻めなくても、なぜかお客様の方から心を開き信頼されている人。
・商談で雑談や笑い話ばかりしているのに、最後には契約を決めてしまう人。

そんな、「ガツガツしていないのに、なぜか信頼される人」になるための本です。
伝えているのは、トークスクリプトとかアプローチ術といったテクニック的なことではありません。

「そもそもお客様に興味を持ってもらえないと、どれだけ話術を磨いても意味がない」

その考えのもと、相手に興味をもたれ、「記憶に残る」ために大事にしたいことを伝えています。
それは著者が大事にしている「12のルール」に集約されるのですが、その話はまた後半で……。

「リッツ・カールトン→アメックス」
異色の経歴を持つ元トップ営業が著者です

著者は、アメリカン・エキスプレスの元トップ営業の福島靖さん(https://twitter.com/YasushiBoeing)です。
営業になったのは31歳のときで、それまでは6年間、世界的ホテルチェーンの「リッツ・カールトン」で働いていた、異色の経歴の持ち主です。
営業になった当初は成績最下位だったのが、リッツ・カールトンで大事にしていた「お客様の記憶に残る」という在り方を営業でも実践したところ、わずか1年で紹介数・顧客満足度で全国1位になり、成績優秀で表彰されたそうです。
それ以来、「記憶に残る営業術」を武器にして、表彰台の常連になりました。

もともと私は今の会社に入る前からX(旧Twitter)で福島さんが気になっていて、いつか本を書いてほしいなと思っていました。
というのも発信している内容が、よくある「営業術」とはまったく異なっていたからです。
どうすれば相手に「この人は他の営業とは違う」と思ってもらえるのか。
話術とか戦略とかではなく、人としての印象を残す方法を伝えていました。
もともとご自身が、友達ゼロのコミュ障だったのと、リッツ・カールトン時代に学んだ「ホスピタリティの精神」によって、その結論に至ったそうです。

この「人間力で信頼を得る営業手法」に、私は大いに共感しました。
そして、「自分が営業をやっていた頃に知りたかった!」と思いました。
ここで、少し私の過去の話をします。

スーパー営業マンにしごかれまくった、
「ポンコツ新人営業」時代

私はこれまでに2社の出版社を経て、今のダイヤモンド社に入社しました。
新卒で入社した出版社では2年間、書店営業をやっていました。
担当地域は埼玉、群馬、栃木、茨城とかの県境、関東平野全体という感じでした。
月曜に現地に行き、金曜に東京に帰ってくる出張生活で、毎日ひたすら書店さんを回り続けます。

そんな入社1年目、私より一つ年上の先輩がOJTについてくれました。
この人は、社内イチ優秀な先輩でした。
どれくらい優秀かと言うと、入社1年目で全営業トップの成績を出してしまったほど。
コミュ力も最強で、誰とでもすぐに打ち解けられて、営業の天才みたいな人でした。

一方の私は、引っ込み思案で、他責思考で、コミュ力も低くて…。
おまけに学生気分も抜けておらず、先輩には怒られてばかりでした。
(ただこの時の指導があったから、私は仕事との向き合い方が変わりました。今では人生の恩人と思うくらい感謝しています)

先輩はそんな私を見離しはせず、とても親身にアドバイスをくれました。
たとえば、「雑談の本を読んでみるといい」と教えてくれました。
でも雑談の大切さはわかったのですが、もともと口ベタな私はうまく実践できませんでした……。

しかも担当したお店のなかには、その先輩から担当を引き継いだお店もあり、どうしても比べられてしまします。
「なんかヘッポコな新人が担当になっちゃったなぁ」
そう思われていたお店もあったかもしれません。

そんなわけで、営業1年目の私は目標を達成することができませんでした。

ギリギリ目標を達成した2年目と、
転機になった「怖い店長」との話

でも営業2年目で、目標をギリギリ達成することになります。
転機となったのは、あるお店にいた怖い店長でした。

そのお店は、いかにも頑固なおじさんという人が店長で、私は行くたびに怒られていました。
「いま忙しいんだから、話があるならいっぺんに話してよ!」
「いきなり商談するやつがいるかよ。ふつう雑談とかないの?」
狭い事務所で店長と二人きりで話す時間は、まさに地獄……。
信頼を得ることができず、私は悩んでいました。

そんなある日、自社の児童書シリーズを展開するフェアをしてくれることになりました。
たまたま自社が搬入していた什器が空いたから、運良くという感じでした。
そこで私は、色鉛筆を買い、その児童書に載っているイラストを画用紙に描き、切り抜いてラミネート加工して、手描きの自作のPOPをつくってみました。
少しでも売り場が賑やかになるといいなと思ったんです。

そしてお店に訪れた際に持参したのですが、店長は「あんまりうまくねーなー」など言ってぶっきらぼうに受け取りました。
「失敗だったかな……」
私はそう思いました。

ですが次回伺った際、店長は私のPOPをたくさん売り場につけてくれていました。
「店長、ありがとうございます!」
そう伝えると、店長も「まあ、せっかくもらったしね」と。
おかげで書籍もよく売れて、その後、たしか私がその店の担当を離れるまでの約半年ほど、そのフェアを続けてくれました。

書店営業の世界では、営業がPOPを自作することは珍しくありません。
でも私にとってこの経験は、大きな自信になりました。
それは「無理をして優秀な人の真似をしなくてもいいんだ」と思えたから。
私が手描きのPOPをつくったのは、幼い頃に絵を描くのが好きで、それをよく褒めてもらえていたからでした。
「自分にできるのはこれしかない」
そう思ってのことでした。

自分にしかできないことで、認めてもらえた。
そうか、他の人と同じようにうまくできなくても、自分にしかできないことで認めてもらう方法もあるのか。
この学び以来、私はそれまでに感じていたプレッシャーがなくなり、自然体でお店の人と向き合えるようになりました。
その結果、担当するすべての書店さんと良い関係になれて、2年目でようやく結果が出ました。

ちなみにあのときの手描きPOPは、スキャンデータを社内の共有フォルダに入れたところ、その後ほかの営業の人たちにも使ってもらえていっときのブームになりました。
それも嬉しかった。

あらゆる仕事は「営業」である。
編集者をやっていて、そう感じた。

そんな経験をしていたため、本書『記憶に残る人になる』の福島さんが伝えている「話術よりも、人として信頼されることが大事」というメッセージに共感したんです。
というより、当時の自分みたいな営業の人にとって希望になると感じました。

ただ、単なる「営業本」ではマーケットはそれほど広くありません。
ベストセラーもなかなか少ない。
ではなぜ、本書を企画したのか。
それはあらゆる仕事が「営業」だと感じたからです。

編集者という仕事も、ほとんどは「営業」です。
たとえば、著者さんを口説く。
著名な著者さんや、いま注目の著者さんのもとには、いくつもの執筆オファーが舞い込みます。そんな数ある出版社、編集者の中から、「自分」という人間を選んでいただく。
これはまさに「営業活動」です。
大手出版社なら、「これだけベストセラーが出ています」「広告もバンバン出します」といったアピールができるかもしれません。
ですが私が前にいた出版社はまだ小さい会社でしたので、会社の看板で勝負はできませんでした。こうなると、自分という存在に魅力を感じてもらうしかありません。

・打ち合わせ場所には絶対に相手よりも先についておく
・はじめからつくりこんだ企画書を用意しておく
・表紙のイメージもつくって見せる
・相手のSNS発信をすべて見て、リスト化して持参する

どうやったら相手に驚いてもらえるか、いろいろ考えて実践してきました。
その結果、「ここまで考えてくれたんですね! ぜひ、やりましょう」と、たいした実績のない私や会社を信頼してもらい、誕生した本が何冊もあります。

また、社内の営業の人たちに担当書を紹介することもまた、ひとつの「営業活動」です。
要点を端的に整理して話すのはもちろん、そもそもどんな熱意や思いがあって作ったのかを伝えるなど、さまざまな工夫をします(実際、営業部の人からは「スペックよりも、想いを知りたい」と言われることは多いんです。これも、営業活動において人間性が重要な証左だと感じています)。
とくに、1社目の出版社は営業が強い会社で、営業部の人たちが本気になった本はよく売れました。
営業への営業、これも編集者の大事な仕事なんです。

他にも、デザイナーさんやイラストレーターさんといったクリエイターさんたちとのコミュニケーションも、一種の「営業」です。
有能なクリエイターの方々は、常にいくつもの作品を抱え、同時並行して進めています。
そのなかで「この人との仕事は、とくに頑張りたい」、そう思ってもらえたら最終的なクオリティも変わってくると、私は思っています。
(あくまで私が思っているだけ。「どんな仕事も全力です!」というクリエイターさんの方が大半とは思います)

ですから「目の前の相手から信頼を得る」という意味においては、営業もふくめ、どんな仕事も同じだと思ったのです。

「営業本というより、一人の人間として信頼される術を伝えたい」

そう思って企画したのが、本書でした。

そしてようやく、著者と対面。
そこで見た謎の「12のルール」

ここまでが、福島さんにご連絡するまでの話です。
というわけで(ようやく!)福島さんと会うことになったわけですが、そこでの体験もまた驚きのものでした。

昨年の5月16日(なんと福島さんがリッツ・カールトンに入社したのと同じ日!)にDMを送り、「ぜひお会いしましょう!」となり、弊社までお越しいただきました。
当然、福島さんの第一印象は素敵なものでした。
元トップ営業ですから、きっちりスーツを着込んでくるのかと思いきや、胸元にたしか「0925」とプリントされた黒のTシャツを着て、自転車で来たと言います。
着ていた服まで覚えているなんて、このときすでに私は「記憶に残る術」にかかっていたわけです(ちなみにこの数字、福島さんの誕生日でした。しかも私の長女の誕生日と同じで、まさに運命!)。

商談ブースに座り、これまでの過去のことなど聞いていきました。
すると福島さんは、おもむろに1枚の紙を取り出しました。
「これが、僕が大事にしている12のクレド(書籍ではルールと表記)です
そこには、こう書かれていました。

書籍『記憶に残る人になる』の「はじめに」より

いや、意味わかんなくないですか?
そして当然、聞いちゃいますよね。

「これ、どういうことですか?」

この時点で、私の興味はMAXです。
これもまさに、福島さんの「記憶に残る技術」でした。
そこからなんと5時間(!)、それぞれのルールについてお話しを聞きました。初対面の相手が5時間も質問したくなるような「引き込み力」、ハンパない……。

しかも、面白いエピソードが出るわ出るわ。
このときすでに、私は「これは絶対に本にしたい!」と感じていました。
そして、「これだけの面白い話、売れなかったら編集の責任だな」とも。
ちなみに福島さんは、これが何の打ち合わせだかわかってなくて、後から「本を出す」と知ってびっくりしたそうです。
いや、私ちゃんと言いましたよ……(笑)。

仕事で人と向き合う、すべての人へ。

こうして生まれたのが、本日発売『記憶に残る人になる』です。

・営業活動がうまくいかない
・口ベタで、上手にトークできない
・でも、お客様を思う誠実な気持ちは持っている自信がある

そんな人に、ぜひ読んでいただきたいです。
そして営業にかぎらず、仕事で人と接するすべての人にとって学びや共感のある本になっていると思います。
先ほどの「12のルール」、編集者の私でも「あ、これ自分も心がけてることかも」「これは自分も気をつけたい」など思うものがいくつもありました。
少しでも興味をお持ちいただけましたら、ぜひご覧いただけましたら嬉しいです。

Amazon:『記憶に残る人になる』
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長々とお読みいただき、ありがとうございました!

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