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「介護時間」の光景⑨「横断歩道」5.14

 すでに18年前ですから、遠い過去になっていますが、その頃、私は母が入院する病院に通う毎日でした。母親に介護が必要になり、私自身が心臓発作を起こしたこともあり、病院に入ってもらい、そこに毎日のように通っていました。

 それでも、2年くらいは、ずっとうつむき加減のままで、周りもあまり見えていなかったと思います。

(その頃の詳細は、ここをクリックすると読んでいただけます)。

 病院に通い、疲れて帰ってきて、義母の介護をする、という単調な毎日でしたが、その中で、周囲の微妙な違いには、敏感になっていたと思います。


         (2002年のメモに多少の修正をしました)


横断歩道


 いつものバスを降りて、いつもの県道。ここからは、病院は、あと数分。
 周りは畑や林で、けっこうクルマの交通量は多い。
 それが、今日は歩行者の信号が赤でも、楽に渡れるほどクルマが来ない。
 左右を見ても、クルマが見えない。
 ここ2年間でも初めてかもしれない。
 何も通らないと、横断歩道や道路は、必要以上に静かな空間に思える。

                 (2002年5月14日)


 それから18年がたちました。
 今日は、母親の命日なので、不要不急という言葉に怯えながらも、墓参りに行くことにしました。

 電車を乗り換え、バスに乗り、お寺のそばにあるホームセンターで、いつものように花を買っていこうと思っていました。つい先日、検索したら、営業時間が短縮し、2階の家具売り場は閉まっていますが、他は営業しているということを知りました。

 そのつもりで、バス停を降りて、向かったら、前を行く人が、立ち止まっていました。臨時休業でした。このホームセンターが急に休んだことは、記憶にありませんが、このあたりでは、他に買える場所がありません。命日なのに、花がなくて申し訳ないのですが、でも、とりあえず行くしかありません。わたしのうしろから歩いてきた人たちも、立ち止まって、休みに少し驚いているようでした。

 お寺に着き、チャイムを押し、玄関をあけて、お寺の方にご挨拶もして、線香に火をつけてもらいました。ゆるい坂をあがるように、途中で、おけに水を組み、ひしゃくも持って、お墓に向かいました。

 お墓に着いて、線香を所定の場所に置きました。
 水をかけて、道具も忘れたので、手で汚れをぬぐいます。墓石が温まっているのが分かりました。
 花が買えなかったので、仕方がないと思っていたのですが、実際に、お墓に来て、花を入れるところが、水をかえても空のままだと、ちょっと悲しくて、悔しくなりました。

 お墓のすみに咲いている雑草の花をつませてもらって、そこに入れました。
 それでも、なんだか悲しさは残ったままでしたが、それを写真に撮ろうと思い、実際に撮った上に、こうして広く伝えているのですから、自分が浅ましくて、めったに使わない言葉ですが、自分でも親不孝だとは思います。
 それでも、5月14日に母親が亡くなるまでのことを思い出し、それからのことを思いました。
 母親が亡くなってからは、13年がたちました。
 今日は、すごくいい天気でした。

                  (2020年5月14日)



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介護の大変さを、少しでも、やわらげる方法②書くこと

「介護時間」の光景③ バス停


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