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19歳で日本酒barを手掛けてから、長野県木曽郡の関係人口になるまで

はじめまして。
OL、ときどき蔵人/まちだと申します。2000年生まれ23歳です。
普段は、東京タワーのふもとで企画とか経営コンサルの見習いをしております。冬は、長野県木曽町の中善酒造店という酒蔵で蔵人のお手伝いをしています。

この度は、木曽の魅力を発信し続けるPRプロジェクト「風よ吹け」を立ち上げました。

©2023 In-yo/Calligraphy by Keita Takayanagi/Photo by Yuki Furue/Design by frcon/Costume by  FREAK'S STORE/Model 平岡 花梨

やることは二つです。
①    SNSでの地域の魅力発信
Instagramを中心に、直感的に「木曽って素敵だな」と思ってもらえるようなビジュアルと【木曽のものがたり】を投稿しております。
是非ご覧ください。→風よ吹け(@kiso_nihonshu_ki) | Instagram

②    リアルイベント 
イベントは、第1回目を8月1日(火)銀座NAGANOで行います。
1日限定48名のイベントなのですが、一般情報公開からたった一週間で席が埋まりました。また、満席後の問い合わせも多く嬉しい限りです。心より御礼申し上げます。

今日はなぜ私がこのプロジェクトを立ち上げようと思ったのか、お話させてください。


自己紹介

私の人生のミッションは「世界中で日本酒を飲まれる文化をつくる」です。

高校卒業後、海外の大学に一瞬通いましたが、英語が分からず中退しました。笑
その後、19歳のとき日本酒居酒屋の立ち上げに携わりました。6坪ほどの小さなお店でしたが、店舗設計から保健所の手続き、日々の営業、原価計算、税務、プロモーションなど、飲食店のあれこれを学べたのは貴重な経験でした。その後、すてきなお客様たちに支えられ、2店舗まで拡大することができました。何より、日本酒の知識を沢山得られたのが幸せでした。

二店舗目オープン時の様子

一方で、日本酒業界の上流も見てみたいとも思うようになり、蔵人に転身することを決意。地元、埼玉のいくつかの蔵に問い合わせ、履歴書を送りましたが、断られる日々。
「農大でもない、未経験で体力のない女の子は採用できない」とハッキリ言われました。差別ではなく、蔵の仕事は力仕事が多く労働環境的に男性の方が重宝されるのです。

諦めかけたとき、友人である翠さん(未来日本酒店渋谷パルコ店・店長)から連絡があり、「Twitterで#蔵人募集と検索すると良いよ」と教えてくれました。
すると、こんな呟きを見つけました…↓

実際のTweet

飲食店時代に全国の酒を飲み尽くしたつもりでしたが、「中乗さん(なかのりさん)」という銘柄は東京で見たことがなく、知らなかったです。小さな蔵というのも興味がわきました。

ツイートを見た次の日、蔵に電話⇒速攻採用というスピード感で、木曽で働くことになりました。蔵の周辺地図を見て、山しかなくて絶望したのは秘密です。業界の上流を見に行ったら、文字通り川の上流に辿り着いてしまいました。

木曽での生活

木曽での生活はこんな感じです。
① とにかく寒い
言葉を失うほど寒いです。冷え込むときは氷点下5度まで下がり、御嶽山や木曽駒ケ岳からの吹き降ろす冷たい風が容赦なく体温を奪います。
②    山しかない
「木曽谷」は山に囲まれており、それゆえに日照時間も短いです。夜になると、暗闇のなかに、山の影が黒々と重なります。この影が恐ろしいほど大きくてビビります。
③    人が少ない
良く言うと静か、悪く言うと活気がない。全国でも人口減少率が高い地域です。
④   独特な発酵文化
家から蔵への通勤途中、小さなお味噌屋さん/小池糀店があります。小池糀店のお味噌でお味噌汁を作ると、奥深いコクと旨味が止まらなくて、お出汁がいらないほどです。

画像はHPから引用: (koji-miso.com)

木曽の日本酒

ちなみに、日本酒もお米と水からできる「発酵のお酒」です。
木曽郡には、5つの酒蔵があります。湯川酒造店、西尾酒造、七笑酒造、中善酒造店、そしてsuginomori breweryです。

仕込みの様子。この作業の次の日は筋肉痛。

蔵の仕事はやはり体力的にキツいです。朝も早いし、形容しがたいほど寒い。新人の仕事は、洗い物や洗米などです。洗米に使う水は本当に冷たくて、指の感覚がなくなります。指が動かないまま休憩時間を迎え、ヒノキ箸をうまくつかめなかったときもありました。
死ぬかと思いました。

衝撃

蔵入りして数日後。
仕事の合間に、杜氏(=製造責任者)が中善酒造店を含めた木曽のお酒を、数種類テイスティングさせてくれました。

差し出されたお酒を飲んだとき、わたしはその味に衝撃を受けました。
言葉に出来ないほど美味しいと感じました。いろんな想いが溢れ、木曽の酒蔵で働けることを、心の底から誇りに思いました。

©2023In-yo/Keita Takayanagi, Hiroshi Ishikawa.

それと同時に、もったいない!と思いました。「都市部のみんなが、こんな旨い酒を知らないなんてもったいない」と感じたのです。木曽にはすごく良いモノ・価値がたくさんあるのに、それが外に伝わりきっていないことに疑問を覚えました。「ねぇ聞いて、木曽の酒って美味しすぎてヤバイ!」と、みんなに言いたくなりました。

木曽五蔵

凄いのは、木曽五蔵それぞれに個性があり、違った美味しさがあることです。
木曽五蔵の杜氏たちも、皆タイプは違えど、酒への情熱にあふれた、おやっさんたちです。(杜氏のことを、親父さん・おやっさんと呼びます。)ただの飲み会でも、酒の話が止まらないのです。そんな、真面目だけどお茶目な職人たちの会話が本当に面白くて貴重な機会だと思いました。 

木曽に来て一年がたったとき、私はあることに気づきました。
それは、酒の美味しさの源が水であることです。
木曽は、私にとってダイレクトに水の流れが感じられる場所です。中善酒造店が木曽川のほとりにあるからかもしれません。宿場町の気配が残る街並みには、井戸や水路が巡らされています。澄みきっていて、本当に綺麗な水です。さらに、水は豊かな自然・山のおかげだと感じました。 

©2023/In-yo/Keita Takayanagi, Hiroshi Ishikawa./Photo by Yuki Furue

他の気づきもあります。
それは、木曽の山には歴史があるということです。 
戦国時代のあと、木曽の木々は城や社寺の建設のために乱伐され、森林資源が枯渇しかけました。そこで、徹底した森林保護政策が実施され、人々は木を伐採することを禁じられました。これは、人々の収入源が無くなることを意味しました。 

そこで、人々は漆器や工芸品に活路を見出しました。例えば、「めんぱ」は、薄い板一枚を加工して作られます。少ない木材から、丈夫で美しい工芸品を作り出すのは、素晴らしい技術です。豊富な木材から削り出してつくる木工品とは一線を画しており、それが違った価値や魅力を醸しだしています。

江戸と京都を結ぶ中山道のまんなかに位置する木曽。これらの木工品は軽くて丈夫だったため、宿場町に立ち寄った旅人たちに買われ、中山道を巡って全国に広がっていきました。

めんぱ/丸嘉小坂漆器店さまサイトから引用: (maruyoshi-kosaka.shop)

すべてのストーリーを理解したとき、私は新たな感覚を覚えました。
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柔らかく綺麗な水が、先人が守った山から湧き出て酒蔵へ流れ込む。 木曽の杜氏たちが、情熱とプライドをかけて造る。 厳しい寒さが美味しさをじっくり育む。 木曽の酒器で呑めば、さらに美味しい。 軽く、美しく、長く使い続けるほど愛おしくなる。 器になってもなお、木は生きている。
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たった一口の酒から、川、山、ヒト、歴史、文化まで繋がった瞬間です。
おいしい酒も食材も漆器も、木曽谷に息づく山の恵みなのです。
テロワールのその先を見たような気がしました。

伝える

人が減り続けるこの町で、この価値を百年後に伝承するためには、ちゃんと魅力を伝えて、外からの消費を促し、持続可能な地域経済をつくるしかないと思っています。
今回のプロジェクトは、「思わず誰かに共有したくなる体験」を通して木曽の漆器・日本酒・発酵食材の魅力を存分に知ってもらうことが目的です。
例えば、今度のイベントではこんな体験を提供します。

  • 恵比寿「MAEN」(ペアリング専門店)監修/木曽漆器×日本酒×食材のペアリングで、木曽のものがたりを味わう。

  • 「陰陽」(アーティスト)監修/木曽の美しい山々や酒蔵の景色を凝縮した限定ムービーを観る。

  • 木曽の杜氏四人に東京に来てもらい、造り手からおいしさの秘密と造りへの情熱を聞く。

イベントが終わったあと、参加者の皆さんにこう言わせてみたいのです。「ねぇ聞いて、木曽ってめっちゃ良い所だよ!今度行ってみよう」と。

木曽の風を世界に吹かせるために、まずは一歩踏み出してみようと思います。
そうすれば、小さな風がいつか大きくなると信じています。


本事業は「長野県地域発元気づくり支援金」を活用して事業を実施します。
また、ご協力頂いた皆様に心より感謝申し上げます。
株式会社加藤組さま
有限会社丸嘉小坂漆器店さま、木曽漆器青年部さま、一般財団法人塩尻・木曽地域地場産業振興センターさま、ジビエ工房木曽百田商事さま、木曽町・木祖村の地域おこし協力隊の皆さま、有限会社松岡新聞社さま、有限会社小池糀店さま、木曽漆器海老屋さま、開田高原アイスクリーム工房さま


Instagramもフォロー宜しくお願いします!
風よ吹け(@kiso_nihonshu_ki) | Instagram

陰陽

「陰陽(In-yo)」は高柳景多(作家・俳人・監督)と石川寛(フォトグラファー・監督)による、全ての物事に存在する光と影を表現するアーティスト。

MAEN

料理と酒を。共に饗する。
日本酒ペアリングレストラン MAEN
渋谷区広尾1丁目16-1

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