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就労支援日記㉖~風の丘が就労移行支援にこだわるわけーOB・OG会のことなど~

毎週金曜日の夕方は、OB・OG会。

就労定着支援が始まる遥か前から、風の丘は就労移行支援から就労したOB・OGさんが、差し入れをもってよく顔を出してくれた。

風の丘では、OB・OGさん向けのイベントとして、1月は新年会、5月はバーベキュー会、8月は花火会。年末の忘年会は、利用者さんとOB・OGさんが会えるように夕方から始めるようにしていた。
こういったイベントのときには、就労した方だけではなく、就労継続A・B型などに入所した方にも声をかけ、各事業所様のご協力もいただき、風の丘を利用した多くのみなさんとお会いできるようにしてきた。

毎週金曜日がOB・OG会となったのには、あるきっかけがあった。
ひょんなことから、元中学校の校長先生が、ボランティアで麻雀を教えてくださることになった。ほとんどの利用者さんは、麻雀は未経験。
大丈夫かなと端からみていて心配だったが、そこは元学校の先生。
とにかく教えることが、ものすごくうまい。
何をどの順番で、どのタイミングで教えればいいのか、その勘所は本当に見事なもので、未経験の利用者さんがスルスルと覚えていった。

でもせっかく覚えた麻雀も、やっていなければ忘れてしまう。
それじゃあかなしいよね、ということで毎週金曜夕方が麻雀会となった。
そのときの利用者さんたちが、就労した後も麻雀会に引き続き参加するようになると、その時間に風の丘にいけば誰かに会えるということで、自然と金曜夕方にOB・OGさんが集まるようになっていった。

思えばOB・OG会は、コロナ禍のとき、とりわけ緊急事態宣言時もずっと継続されてきた。
時間を短縮したりしたが、金曜日の夕方は、当たり前のようにOB・OGさんが顔を出してくれた。
そこでいつもと変りなく麻雀をしたり、ボードゲームをしたり、楽器を演奏したり、雑談をして時間を過ごした。

けっして大げさではなく、あのコロナ禍では生死の際を覚悟したOB・OGさんも決して少なくなかった。
それでもOB・OG会には、みなさん参加された。
ぼくらは感染の危険性にハラハラしていたが、むしろOB・OGさんたちは自分の生きる支えを確認するためにOB・OG会に参加されていたのだと、いまになって気づかされる。

OB・OG会は、いまも普通通りに毎週金曜日の夕方開かれている。変わったところといえば、少し前から将棋が加わったことくらいだろう。

とあるOBさんが、ポツリと漏らした言葉がいまでも浮かんでくる。
“風の丘で出会った人って、自分の人生で最悪のときに出会っているから、カッコつけても仕方ないし。だから会うと、なんだかわからないけどほっとする”。

そう、風の丘は、おそらくその人が人生最悪のときに訪れる場所。そこで出会った人々も、同じように人生最悪のときを生きている。
だからこそ、わかり合えるところがある。
だからこそ、あえて踏み込まないつきあいの大切さがわかる。

久しくOB・OG会に姿を表さない方がいる。みなさん、それとなく気付いているが、あえて口に出すことはない。
そして、その方がひょいと、それこそ思い出したようにまたOB・OG会に顔を出す。
誰かが、尋ねる。
“ずいぶんと久しぶりだけど、どうしてたの?”
“入院してたんですよ。調子くずしちゃって…”
“まぁ、いろいろありますよね。麻雀、やっていきます?”
“あ、はい”

就労支援センター風の丘の存在意義は、この瞬間にあるのかもしれない。
そんな気がする。

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