自分のアイデアは、目の前になければ自分でもわからない
アイデアというものは厄介だ。なぜならそれはいつ思いつくかは全然わからず、しかも思いついた瞬間から頭の中から消えていくものだからだ。そのため、古今東西あらゆる人々が、それをいかに捕まえきるかを模索し、成果をあげようとしている。
その中の1つに、メモ用紙にアイデアを書きとめ、あれこれ検討するという有名なものがある。多くのやり方があるが、基本的には「紙に書く」「それを見返したりして検討する」の2工程だ。
そしてこれは、シンプルにして最良の方法である。なぜならこの方法は、触れられぬものであるアイデアを、そうできるようにしてくれるからだ。
たとえば、すべてのアイデアが彫像のように眼前に現れてくれれば、なんともわかりやすいことだろう。しかしそれができるのは、まさに彫像に携わる者だけだ。残念なことに大抵のアイデアは、そんなふうに形にできない種類ばかりだ。
とはいえ、その「形にする」ということに、アイデアを私達に繋ぎ止めておくヒントがある。要するにそのまま、アイデアとは形にすることで、私達の眼の前から消えにくくなるのである。
もちろん、ただ形にするのではない。大切なのはアイデアの「内容」を「目に見える」ようにすることであって、アイデアをそのまま形にすることではない。
メモとして書いておくとは、まさにこれを体現したものとなる。
即ち、頭に浮かぶ映像をなんとか頑張って再現するとか、思いついた歌詞を口ずさんでみるとかは、結局、イメージがイメージのままなのである。
そうではなく、アイデアを繋ぎ止めるために必要なのは、現実の視覚情報として内容が表されていること、だ。そうでなければあなたのアイデアは、あなた自身にもわからないままとなってしまう。
現実とは、目の前に物質としてあるということ。物質として、要は視覚情報としてはっきりと見え、しかも触れられる形になっていなければならない。
その上で、頭の中にあるその内容が、できるだけ一度に見通せた方がわかりやすい。するとそれは必然的に言葉になる。私達がコミュニケーションとして常に使う、生きるために用いる言語というものだ。
だが、わざわざ言語に落とし込むのは回り道に思えてしまうのも事実である。普通はアイデアを形にすると聞いて、実際にアイデアを体現してしまおうと思うだろう。だがそれでは、頭の中のアイデアを、あなたの理想的な形に変換してしまうことになる。するとそれは、完成してしまう。1つのものとして終わってしまうのだ。そうなってしまえば、元に戻すのは難しくなる。大切なのは、今、思いついたアイデアをできるだけそのまま自分に繋ぎ止めておくことだったはずだ。
アイデアを、アイデアのままで目の前にあるようにするために、メモとしてまとめるのである。それは実際にアイデアを完成へと持っていくのとはわけが違う。段階も違えば、やり方も異なる。
あなたがもし、きちんと自分の「アイデア」と向き合いたいのなら、それに手を付けてしまいたくなる(完成へと向かわせようとする)ことから一度離れ、まずは目の前にそれを表してみることを、おすすめする。
そうすればきっと、あなたとアイデアの距離は、もっとずっと近づく。そしてもちろん、完成させようとした時の納得感も、満足感も、完成度すら、まったく違うはずだ。
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