可愛くないキャラはいない②　主文：女体化 ≠ 「女体になること」　後編

※このnoteは前後編に分かれており、前編はこちらです。
https://note.com/kawausowright/n/n5d09b9941c8d

可愛いからこそキャラクターである。そして可愛いとは女性性であり、それは人間がもつ捨てきれないバイアスから生まれるものである。
これは裏を返せば、あらゆるキャラクターは可愛いものであり、即ち女性的だということだ。

しかし実際には、キャラクターは女性の形を取るものばかりでなく、それこそ様々な形態のものがいる。
だけれども、それでもなお、キャラクターは可愛くなければ、女性性を持たねば成立しない。

それはなぜか？

１．女体化 ≠ 「女体になること」

世の中のキャラクターが女体化しかないのならば、その性別設定は全て女性ということになっていなければならない。
しかし、実際はそうではない。
つまりあるキャラクターの性別が女性でないとき、それは女体化されていないのか？

それは違う。

女体化と、そのキャラクターの性別設定、もっと踏み込めばそのキャラクターの諸設定全ては、全く関連がないのである。
なぜなら、女体化というのは単なる操作を表す言葉でしかないからだ。

即ち、女体化とは、この世のあらゆるヒト・モノ・コト……事象をモチーフとし、それに人格を与え、可愛くまとめ上げること、を意味する。

本来女体化とは、このように定義づけるべきなのだ。しかし、一般的に女体化されたキャラクターは女性の設定や姿をとるものだし、そうでない場合は男体化などと別の言葉が当てられたりする。

これは、私たちの長年培われたバイアスからきている。

可愛いという言葉が適応されるために、私たちはそこに女性性を見出すのだ。その本能的な直感から脱却しない限りは、女体化という言葉によって出来上がるのは女性キャラクターしかありえず、そうでないときは別の「～化」を使い続けなければならない。

だが本来、女性的であるというのと、そのキャラクターを魅力的に思う――可愛い、というのは別個のものだ。
つまり女体化は、本来はもっと広い意味を持つべき言葉であり、即ちあらゆるキャラクターに適用されるべきものとなる。

２．擬人化+可愛さ＝女体化

女体化と女性的であるというのは違うというのは、単なる言葉遊びではない。
また、現代では様々な価値観が認められつつある中で、「女性＝可愛い」という短絡的な感覚は、もはや共感を得にくいのも事実である。
とはいえ、私たちには、私達自身が気が付かない認識の傾向があり、特に神話時代から続くこの「女性＝可愛い」は、そう簡単に拭い去れるものではない。

ともあれ、女体化があらゆるキャラクターに適応されるべきものとすれば、それは擬人化となにが違うのだろうか？

なにかモチーフを決め、それに人格を与えて喋らせるというのは、つまるところ擬人化である。だから女体化に性別が関係ないというのであれば、それは擬人化ではないか？　そういった疑問を差し挟む余地が出てくる。

しかし、擬人化とは必ずしもキャラクター化を指すものではなく、言語の表現方法としての意味も持つ。
だから現代のように、様々な魅力的なキャラクターが生まれては消えゆく時代において、それらをとらえる言葉としてはむしろ広すぎてしまうのだ。

あくまでキャラクターというものをとらえる言葉として、そしてキャラクターが「なんらかの事物に可愛さを見出して魅力を感じてもらうもの」である以上、それは女体化というのが相応しいという結論になる。

いわば、擬人化に女性性への魅力をプラスしたものが、女体化なのだと言える。事物に人格を与え、それを可愛くまとめ上げる。その性別諸設定は関係なく、それが可愛からこそ女性的なのだと、そのようなことである。

３．女性的という言葉の――

ここで更に不思議に思うことがあるかもしれない。
それはなぜ、女性は可愛いとみなされてきたのか。言ってみればそのような男性的目線がなぜ生じ、明らかに現代まで引き継がれているのか、ということ。
これらに関してきちんと理解することによって、なお、キャラクターというものについて、その消費のされかたについて、明白になるはずである。
女性という概念に向けられる目線、常識、その呪縛こそ、昨今のキャラクタービジネスを支える主要なひとつとなっているのだ。

※関連note：
①序文：「女体化→女性的→カワイイ」
　https://note.com/kawausowright/n/n7285428988e6

③主文：女性的という言葉の呪縛
　前編：　https://note.com/kawausowright/n/n5028e84dd2a6
　後編：　https://note.com/kawausowright/n/n8ce34c000a50

④主文：可愛いを分解する
https://note.com/kawausowright/n/nad1cf7f7da6d

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