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管理は実務の邪魔をする。「仕事」にまつわる、とある不都合

 管理とは実務の邪魔をするものである。もしくは管理と実務の目指すべき方向が違うために、これらは衝突せざるを得ないものと言える。
 根本的に、管理と実務の相性の悪さを解消できなければ、より良い働き方とか、効率化とか、ワークライフバランスとか、そういう仕事にまつわるお題目はすべて、意味をなさないものになりかねない。
 それくらい、管理と実務は異なる立場に立っている。

 そもそも管理とは、何かを枠からはみ出さないように見ておくことを意味する。そうやって何かを監視し、記録し、分析し、時には変化した枠組みへの適応を促すことになる。そうして仕事においては、組織から何かがはみ出して崩壊しないように、しっかりと律しようとする。
 他方で実務とは、ここではその管理されるすべての仕事を指すわけだが、枠の中で最大の成果をあげるために働くことを意味する。そうやってルールを守り、制限されながらも手を抜かず、創意工夫の中で益になることを行うことになる。

 しかし、ここで重要なのは、「枠」の存在だ。これは仕事における様々な決まりや規則、あるいはコストや時間などの限界を指すわけだが、管理にとってはなくてはならない道標なのに対して、実務にとっては目の上のたんこぶであることが、往々にしてある。
 大体、いくら実務が成果をあげようとしても、周りには枠という名の障壁がそびえ立っているのだ。管理する側はその中にいてくれた方がそれは楽だろう。ルール通り、大人しく、想定内で、リスクも少ない。枠のおかげで、管理はルーティンワークになるのだから。
 そんなの、実務側からすればたまったものではない。枠の中にいつまでもいられるのならばもちろん楽だ。でもそれは枷であり、自由を奪うことであり、その中でぬくぬくといられることはけして仕事において幸せではない。なにより管理のために実務を調整したり、変更したりしなければならないことが往々にしてある。それは言ってしまえば、実務の中身とはなんら関係がないのに。
 そしてもちろん、実務の中身である成果のための工夫だって、いつか限界を迎える。そしてそれは大抵、管理のための枠のせいなのだ。それに気づこうが気づくまいが、根本的に管理とはそうなのだから、実務と目指すべきところが違うことによる衝突は避けられないのである。

 これを完全に解消するのは不可能だろう。それでも、できるだけそうできるようにしておかなければ、その組織はやがて自らの仕事を自らの手で殺すことになる。
 管理と「枠」は仲良しだ。しかし実務とはそうではない。だから管理と実務はぶつかり合う。しかも、どちらもやらないわけにはいかない。その上で、よい具合に妥協点を探るしかないのである。
 これはどんな職種にでも当てはまる、「仕事」というものにつきまとう不都合だ。私たちは少なくともこのことを理解した上で、できるだけ管理を実務の障害にしないように、また、実務を管理が行き届かなくならないように、日々の仕事に向き合う必要があるだろう。

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