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同じ事実、異なる反応ー何がストレスを生むのかー

メンタルヘルス不調はなぜおきるのか

メンタルヘルス不調は複合的な要因によって生じるが、大きな心理的なストレスはその主な要因の一つだということは異論がないと思う。原因となる事実があり、それに対してストレス反応がおき、それがメンタルヘルス不調につながるという考え方だ。日本におけるストレスチェックも、「ストレス要因」がありそれに伴う「ストレス反応」が大きくなることでメンタルヘルス不調につながるというNIOSHのストレスモデルが元になっている。

同じ事実でも異なる反応が起きる

しかし、同じ事実、同じ場面でも、誰もがネガティブな反応を示す訳ではない。例えば、靴を売りに行った先が誰も靴を履いていない地域だったら、がっかりする人もいれば、大きなビジネスチャンスだと感じる人もいる。お客様からクレームがきて、やだなぁと思う人もいれば、挽回できるチャンスと思う人もいる。職務評価が振るわない部下に評価を伝えることも、部下をがっかりさせたくないなと思う人もいれば、伸びしろを伝える絶好のチャンスだと思う人もいる。私が関わってきたメンタルヘルス不調になった方の中にも、体調を崩し休業したことを、後になってよかったとおっしゃる方がいる。何が、これを分けるのだろうか。

『私達は世界をあるがままに見ているのではない。
 私達のあるがままに世界を見ているのだ』

スティーブン・R.コヴィー 7つの習慣 人格主義の回復

その人の解釈が反応を変える

同じ事実・場面においても、人によって反応が違う。その人がそれをどう解釈するか、どんなふうに見たかによって、反応は変わる。事実が場面が反応を決めるのではなく、解釈が反応を決めているのだ。そしてその解釈は、人それぞれ異なり、その人が意識しているかに関わらず経験や習慣によって形作られている。さらにこの解釈は、他人や誰かが勝手に決めているものではない。誰でもない、その人自身が決めることができるもので、自分自身でコントロールできるものである。

メンタルヘルス不調者が活躍するために

私は、活躍支援型メンタルヘルス対策を提唱し、メンタルヘルス不調者の活躍支援を行う中で、この解釈をその人自身がコントロールできるかどうかが、復帰後の活躍に大きく関わってくると考える。
メンタルヘルス不調者の場合、多くは自分の解釈ではなく、自分ではコントロールが難しい他人や環境をコントロールしようとして苦しんでいることが多い。自分が解釈していることすら認識していないこともある。だから本人を取り巻く環境や場面をコントロールしても限界があり、コントロールできたとしても長くは続かない。逆に、本人が自分自身の解釈を自分でコントロールできれば、極論すればどんな場面でもストレスをコントロールできる。本人の力で変えていける。
実際、私が出会ってきたメンタルヘルス不調になる方の多くは、この解釈のコントロールに課題があり、解釈をコントロールすることで、本来の力を発揮し、活躍されるようになってきた。

解釈をコントロールするために

メンタルヘルス不調者への対応は改めて解説することとして、今回は、解釈をコントロールするヒントをお伝えしたい。
まずあなた自身が、大きく気持ちが動いた時のことを思い出してほしい。目の前の事実に対するあなたの解釈が、どこからきた(何に基づいていた)のだろうか。そして、もしこの事実が自分にとって、もっとよくなるために生じたものだとしたら、この事実はどう解釈できるだろうか。ほかにも解釈はあるはずだが、それらを考えたうえで、あなたはどの解釈を選ぶだろうか。
ぜひ、少し静かなところで考えてみていただきたい。


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合同会社活躍研究所では、企業向けに活躍型メンタルヘルス対策の導入支援を行っております。ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 
日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」

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